■ジレンマを解消しタイトル争いを継続できるか?

しかし今後も負傷が発生しないとは限らない。ベテランを多く抱えるチームは個々の意識が高く、前述したようにしっかりとメンテナンスを行なっている。とはいえアクシデントはいつも不意に襲ってくる。ただでさえシーズン後半になれば累積警告のリスクは高くなるため、先発11人だけで乗り切るのは非常に困難だ。

ここ最近、樋口監督は「若い力がどれだけ出てくるか」と繰り返し話しているが現状では難しい。熊谷などの成長株がいるとはいえ、能力と実績だけでなく補完関係を築き上げたレギュラー陣はそう簡単にポジションを譲ってくれない。つまり先発と控えの格差は開くばかりだ。

樋口監督の動きの遅さもそれを助長しているが、かといって実績あるベテランを早々と見切るわけにもいかないだろう。例えばマルキーニョスや中村といったJリーグにおけるレジェンドクラスは、どれだけコンディションが悪くてもワンプレーで試合を決める能力を秘めている。そう簡単にはベンチへ下げられない。

ここまでの安定感には目を見張るものがある。しかし一発勝負ではなく長いシーズンでは果たしてどうか。ベストメンバーの横浜FMはタイトルを争って不思議ではないチームだが、抱えているジレンマを解消しない限り、今後は苦しい戦いを強いられる可能性も否定できない。

■著者プロフィール
1983年生まれ。日本ジャーナリスト専門学校卒業後、記者活動をスタートさせる。サッカー専門紙『エル・ゴラッソ』では創刊時から執筆し、06 年途中からマリノス担当に。
現在はサッカー専門誌などにも多数寄稿。「現場に勝るものなし」を信条に、担当クラブのいまを追っている。
ウエブマガジン『ヨコハマ・エクスプレス』主筆