思わぬMMAを始めたきっかけを語ってくれたエディ・アング。青木真也も認める、打撃の使い手だ(C)MMAPLANET

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ここ2年で、急激に成長を遂げるアジア太平洋のMMA。日本との距離も急激に近づいてきた。それでも、まだまだ我々はアジア太平洋地域のMMAについて分かっていないことが多い。

そこでMMAPLANETでは、「New Era APmma」としてアジア太平洋地区のファイター、関係者のファイターを紹介していきたい。今回ははシンガポールのイヴォルブMMA所属の香港人ファイター=エディ・アングのインタビューをお届けする。

――ここ2年で東南アジアのMMA界は急激な発展を遂げています。そして、今後に期待が集まるファイターが続々と現れてきました。そんな一人がエディ・アング選手です。

「オオ。サンキュー・ベリーマッチ」

――香港籍として活躍するエディはなぜMMAを始め、またイヴォルブMMAに所属するようになったのですか。

「僕は香港生まれだけど、漢字も書けない(笑)。ン・ガワイっていうのが中国語の発音で、エディ・アングは英語名なんだ。2歳になる前に英国のニューカッスルに家族ともども移り住んだ。MMAを始めたきっかけは――、英国で育つと明らかに僕は外見も英国人とは違うし、結構な虐めにあったんだ。嫌なことを言われるのは日常茶飯事で、顔に唾を吐かれることもあった」

――エェっ、完全な人種差別じゃないですか。

「そうだね。学校に通っているころは、そんなことが頻繁にあった。だから、英国に住むんだったら中国人でいるよりも、英国人になったほうが生きやすいんだろうって思いがちだった。でも、そんな風に考えちゃだめだ。自分のルーツに誇りを持たないと。中国人であることに疑問を持つようだと、差別に負けたことになる。

中学に通っている時、ブルース・リーの『ドラゴンへの道』を見たんだ。それから他のブルース・リーの映画をどんどん見た。そんな時、自分の周囲の人間たちのかなりの人間がブルース・リーの映画を見ていることに気が付いた。

そして、『凄く強くて、パンチがメチャクチャ速い』だとか、『格好良い』って言っているんだ。僕は中国人、ブルース・リーも中国人だ。なぜ、彼らは『僕もブルース・リーみたいになりたい』とか言っているのに、僕に人種差別してくるんだって疑問を持った。で、ブルース・リーはマーシャルアーツをやっているからだって結論に至った。僕もマーシャルアーツを始めると、もう虐められなくなるだろうって思ったんだよ」

――それが格闘技を始めたきっかけだったのですか。かなり重い話ですね……。

「そう。そして、ウィンチャン(詠春拳)を始めた。完全にブルース・リーの影響だよ。でも、2カ月で辞めた。マーシャルアーツというよりも、ダンスみたいだったから。これは本物じゃないって感じてね。そんな時、UFCの第1回大会でホイス・グレイシーが戦っているビデオを見たんだ。ケン・シャムロックやパトリック・スミス、ジェラルド・ゴルドーが出ているのに、一番小さなホイス・グレイシーが勝った。

僕は普通にボクサーのアート・ジマーソンが勝つと思って試合を見ていたんだ。あの時は優勝したホイスの戦い方を見ても、『これはファイトじゃない』って感じた。だって、映画で見たファイトとは余りにもかけ離れていたから」

――ホイスを見て、感銘を受けたというわけじゃないんですね(笑)。

「そう、『こんなのダメだ。これは嫌だ』ってね。でも、一緒に見ていた友人は『もう1回、ちゃんと見よう』ってじっくりとホイスの戦いを見直したんだ。そうしたら、一番小さな男が全く怪我することなくテクニックを使って、簡単に勝ち続けている。『このテクニックを習いたい』という風に僕の気持ちは変わっていた」

――でも、エディが中学生の頃に英国でブラジリアン柔術のトレーニングができる環境は本当に限られていたのではないですか。