65歳定年時代の人材育成策

経験のある人には分かると思うが、出向(在籍のまま、他社で仕事をする)という経験は、新しい知識やスキルの習得だけでなく、それまでの仕事や職場にはなかった価値観や視点を獲得できるというメリットがある。BtoBの仕事を続けてきた人が、BtoCの仕事に就く。発注側に立ってきた人が、受注側になる。大企業でルールや手続きを重視してきた人が、中小企業でスピードや創造を求められる環境に身を置く。単価数百万円の仕事をしていた人が、数百円の商品を扱う仕事になる。出向でそのような変化を体験すると、それまで当然だと思っていたことが、そうでもないと分かったり、それまでの仕事の仕方や習慣の見直しが図れたり、自信があったことが実は大したレベルではないと判明したりするわけだ。

だから、資本関係もなく、業種や規模も異なる会社の間で、出向による人事交流が盛んになればよいと思う。第一に、教育効果が大きい。同じ職場で固まってしまった思考や行動に変化を促すには、研修やセミナーよりも環境を変えてしまうほうが早いし、インパクトも比ではない。第二に、多様性につながる。異なる文化で異なる仕事をしてきた経験や、そこで得た新しい知見は刺激的なものであるはずで、女性や外国人を採用して人材(とその能力)を多様化しようというダイバーシティと同じ意味を持つ。

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