日本の中小・中堅企業のアジア進出に関して気になる点として、「若手が行きたがらないので」「主な市場にはもう既に進出してしまったので」という、経営幹部の意欲のなさや自社人材への低評価がある。

この年頭の社説や論説記事で、「内向きに閉じこもらず、せっかくのアジアの成長を取り込むべきだ」といった話題を何回か目にした。それに関連し、今の日本の中小・中堅企業の海外、特にアジア進出に関して、気になる点を幾つか考えたい。まずは意欲と人材の観点から。

そもそもいつから日本の中小・中堅企業は海外への挑戦に及び腰になってしまったのだろう。小生の学生時代には、オリンピックでしか聞いたことのないような国の市場開拓に中小メーカーの経営者自ら出掛けることがごく普通だったし、商社あたりだといきなり縁もゆかりもない辺境の地に一人駐在として送り込まれるのがサラリーマンの宿命だったものである。

ところがその後、日本経済自体が十分に大きくなったせいか、海外市場開拓は最終製品を作る大メーカーや商社または小売企業に任せて、国内での開発と製造・品質管理に注力するような部品・部材メーカーが増えたのと、サービス企業の多くは相変わらず国内市場に留まるケースが多くなってしまっていた。

最近小生は、ある中堅サービス企業の部長さんにボヤかれたことがある。インド市場に目を付けてはいるが、若手が行きたがらないので市場開拓ができないというのだ。その「若手が行きたがらない」理由を尋ねると、食事が口に合わないことと娯楽がないからだという(これは日本在住のインド人の知人も同意する)。無理やり派遣すれば辞めてしまうかも知れないという。一昔前を思えば、確かに「従業員に優しい」ことの証左でもあるのだろう。しかし小生には真剣味が足らないだけに思え、そう指摘したら苦い顔をされてしまった。他の幾つかの準大手のメーカーでも同様の話を聞いている。

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