Ｗ杯最終予選の初戦が迫ってきた。対戦相手のオマーンは月曜日夜に来日し、翌火曜日からトレーニングを行なっている。到着から６日後の試合なので、コンディションは問題ないと考えるべきだろう。

　オマーンと言えば、誰もが思い浮かべるのはアリ・アルハブシのはずだ。プレミアリーグのウィガンでプレーする30歳の守護神は、ドイツ・ワールドカップ１次予選で中村俊輔のＰＫをストップし、ジーコ率いる日本を追い詰めた。今回の来日メンバーでは、チーム最年長となる。

　お馴染みの顔はアルハブシだけでない。背番号10を着けるドゥルビーンやストライカーのアルホスニなど、ドイツＷ杯予選や04年のアジアカップで対戦したメンバーが、いまなおレギュラーの半数近くを占めている。

　04年夏のアジアカップを振り返ると、日本の出場メンバーで現在も代表に名を連ねるのは、遠藤ただひとりである。一方のオマーンは、今回の来日メンバーのうち５人が先発している。中東の選手は大会や試合によって登録名が変わるため、多少の違いはご容赦願いたいが、いずれにしてもチームの骨組みは極端に変わっていない。

　それでも、30歳以上の選手はアルハブシだけなのである。若い選手が経験を積み、20歳そこそこのプレーヤーも加わっている現在のオマーンは、かつてよりバランスの取れたチーム構成になっていると言っていい。

　直近の顔合わせは08年６月である。南アフリカＷ杯アジア３次予選のアウェイゲームだ。現代表では遠藤、長谷部、内田、駒野が先発出場しており、今野が途中出場、中村憲がベンチ入りしたが出場はなかった。また、チームに帯同していた香川と長友がベンチ外となっている。

　互いを知るという意味では、どちらも同じようなレベルだ。今回は日本のホームゲームだが、オマーンには埼玉スタジアムで戦ったことのある選手がいる。フランス人監督のポール・ルグエンは、南アフリカＷ杯でカメルーンを指揮した。94年のキリンカップで日本代表と対戦したのは余談だが、彼にとっても日本は未知の相手ではない。皮膚感覚でもスカウティングにおいても、相手の長所と弱みを互いにイメージしながらの戦いとなるだろう。

　予選がホーム＆アウェイとなったドイツ大会以降を振り返ると、最終予選にははっきりとした傾向がある。日本は一度も負けていないが、勝った４試合はすべて１点差ゲームで、２点以上あげた試合はふたつしかない。ドイツ大会の北朝鮮戦とイラン戦だ。イラン戦は予選突破後の消化試合であり、実質的には北朝鮮戦のみである。最終予選の難しさを裏付けるデータだ。

　では、３点、４点と奪うことはできないのか。そんなことはない、と思う。
　ジーコが率いたチームも、岡田監督が束ねたチームも、最終予選だから、ホームゲームだから、といったことを理由に戦い方を変えたりはしなかった。彼らが言っていたところの「自分たちのサッカー」で、相手を凌駕しようとした。

　対戦相手の立場で考えれば、日本の考える「自分たちのサッカー」は想定の範囲内だ。ボールを持たれることも、自陣に押し止められることも、彼らのゲームプランにあらかじめ含まれている。過去２大会の最終予選がほぼすべて接戦となったのは、相手の想像を超えることができなかったことが主因ではないかと思うのである。

　６月３日のゲームでは、何かしらの驚きがあることに期待したい。先発メンバーのキャスティングなのか、システムなのか、試合の運び方なのかはともかく、相手を揺さぶるための仕掛けがあっていい。快勝発進はその先にある、と考える。