かもめみたいな形をした紙部分から音が放たれる。スピーカーだ。

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ある日、知人の家に遊びに行った時。音楽をかけて漫画を読んでまったりしていたのだが、どうもそのBGMの音質が異様に良い。
「どうして?」と聞くと、友人が指差した方向には小型スピーカーが。なるほど、別方向からも曲が流れて来ていたというわけか。

この経験で、私の物欲はグッと高まった。新たなサブ・スピーカーが欲しい! そしてせっかくなら、こんなヤツがお洒落でいいかもしれない……。株式会社PHONONが開発し、今夏の発売を予定しているのは、『KAMOME』なる少し特別なスピーカーである。

画像をご覧いただきたい。天使の背中から生えた羽というか、左右にダラ〜っと開いた葉っぱみたいというか。しかし、これこそがスピーカー。根っこのようなベース部分に棒を刺し、その棒の先端に紙を挟むと、その紙から音が放たれるらしいのだ。要するに、これは“紙のスピーカー”である。

原理は簡単。ステレオなどの音楽機器を『KAMOME』に繋ぐと、音の振動が棒から紙に伝わり、紙から音が放出される。声の振動を糸で伝える「糸電話」と同じような仕組みだ。
「台座部分にある振動板により、音としてほぼ認識出来ない微弱振動を発生させます。それが振動伝達棒を伝わって、上部に取り付けられた一対の紙の羽へ振動を伝達。エッジの無い先端の解放された羽が振動エネルギーを解放することで、音として聴覚へ届けます」(同社・担当者)

そして、紙は取り替えが可能。羽の形状をした紙も付属するのだが、他の紙でもOKである。
「『KAMOME』は紙のスピーカーですので、羽に色やデザインを施したり、紙素材を変更することが可能です」(担当者)
例えばユーザーが好みのデザインを施し、内装の一部としてスピーカーを設置したり。もっと大胆に、ユーザー自身が好きな形の羽へと加工するのも良いだろう。
また羽の材質やサイズによって、音量や音色等も変化していくという。色々工夫することで、ユーザーが自由に楽しめるスピーカーだ。

他にも、まだまだ通常のスピーカーと異なる点はある。例えば、その“音”に関して……。
「『KAMOME』から出力された音は、設置位置から近くてもうるさく感じず、離れた位置でも難なく識別できる再生音が特徴です」(担当者)
エッジが無く、両端が解放された軽い紙の微小振動で動作するスピーカーが『KAMOME』。自然界の音の発生起因に近い発音原理を用いているからこそ、上記のような聴こえ方をするそうだ。何とも、不思議な……。

そして、この“紙のスピーカー”は、有意義な形での活用が期待されているという。
「東京海洋大学で行われているイルカとの会話実験において、従来型水中スピーカーよりも優れた再生能力が認められ、実際に研究用途で運用されております。その他、防水加工を施すことにより、ダイバーの緊急通信用スピーカーや、プールなどへの応用も考えられます」(担当者)
このスピーカーを使うと、高い周波数を水中でイルカに伝える事ができるのだ。他にも、スキューバダイビング中にダイバーに危険を知らせたり……。
もっと、身近な活用法だってある。POP広告(チラシ情報)を伝達棒に挟み込み、その広告から直接説明や音楽を流すと、これは新しい形の広告になる。斬新なのは、そのルックスだけではなかった!

そんな『KAMOME』は、2012年初夏発売に向けて現在も開発が行われているとのこと。価格は、ステレオLR(2本)のKAMOMEユニットと20W出力のアンプのセットで2万円前後を予定している。

紙部分がかもめのようなユニークな形をしているから、このスピーカーは『KAMOME』と言います。
(寺西ジャジューカ)