奈良の「せんとくん」引っ張りだこ 再就職して「勝ち組ライフ」
2010年の「平城遷都1300年祭」を盛り上げた「せんとくん」の勢いが止まらない。1300年祭だけ祭のマスコットから、県の観光マスコットに「出世」し、2012年は「古事記」に関する新プロジェクトにも参加するという。
全国で、さまざまなゆるキャラが出ては消えるなか、「せんとくん」が生き残り続ける理由はどこにあるのだろうか。
いまやプロジェクト成功を左右する存在に
2008年、平城遷都1300年祭の公式マスコットキャラクターとしてお披露目された「せんとくん」だったが、当初は仏に鹿の角を生やしたような姿のため「かわいくない」と多くの非難を浴びた。しかし、徐々にアクのある存在が受け、最終的には公式キャラとして不動の地位を確立。今では、同じく1300年祭を盛り上げた仲間のキャラクター、「まんとくん」「なーむくん」との横並びレースから抜け出し、ぶっちぎりの独走態勢に入っている。
まず大きかったのは2011年1月4日から、奈良県の観光マスコットになったこと。さらに12月20日には、2012年にスタートする「記紀・万葉プロジェクト」の応援にも借り出されることが決まった。古事記編纂から1300年になることを記念したもので、奈良時代の官服姿に衣替えした「NEWせんとくん」も発表された。
奈良県地域振興部観光局ならの魅力創造課の職員は、「せんとくん」に対する期待をこう語る。
「今回の官服姿は、公式的なイベントにも参加できるように作りました。1月12日には県民ホールで、他2つのコスチュームやオリジナルの曲やダンスもお披露目します。一般の方も参加できるので、たくさんの方に見学に来ていただきたいです」
プロジェクトの成功は彼次第なのか? と思える力の入れようで、「せんとくん」の肩にかかる期待は半端ではない。一方、かつての同僚「まんとくん」と「なーむくん」の活動は「せんとくん」に比べ少々地味なようだ。
まんとくんはフリー活動 なーむくんは仏教会に就職
奈良県が「せんとくん」を公募せずに決めたことに反発して、地元のデザイナー団体が制作した「まんとくん」は、奈良を元気にする存在として現在も活動中だ。ただ、ホームページの活動状況を見ると2011年11月26日の天理市で行われたイベントを最後に更新はされておらず、今後の予定も「空欄」になっている。
「なーむくん」は生みの親である奈良の仏教会「南都二六会」のイメージキャラクターとして就職。こちらも各種イベントに出張しているようであるが、全国的に目に触れることは少なくなった。
この露出の差について、前出の奈良県職員は「それぞれに独自の活躍をされていると思いますが」と断りながらも、「せんとくん」が他と比べて印象が強かったのではないかと指摘する。制作者は、仏像などの古美術の専門家で、彫刻家としても著名な籔内佐斗司・東京藝術大学大学院教授。お披露目当初に反発はあったが、同時に全国の人に強烈なインパクトを与え独特の存在感を印象付けた。
ネットでも「強烈なオリジナリティのせんとくんが結局生き残った」「せんとくんダントツの存在力だな」「結局せんとくんを超える新キャラは今まで出ていない」など、その存在感を評価する声は高い。
全国的に見ると、最近ではゆるくないどころか、「怖い」と子どもに泣かれるゆるキャラまで誕生しており、キャラクター界は混とんとした時代を迎えている。これからは批判を恐れず「やみつきになるアク」をどう付けるかが、息の長いキャラクターを生むコツなのかもしれない。