■ 準々決勝の2ndレグ

UEFAチャンピオンズリーグの準々決勝の2ndレグ。ベスト4入りをかけてドイツのシャルケとイタリアのインテルが対戦。初戦はインテルのホームのスタディオ・ジュゼッペ・メアッツァで行われたが、アウェーのシャルケが5対2で勝利。フォワードで起用されたFWエドゥが2ゴールを挙げる活躍を見せた。

シャルケはアウェーで5ゴールを奪っているが、2ndレグで、「0対3」、「1対4」というスコアで敗れても勝ち抜けとなる有利な立場で、インテルが勝ち抜くためには「少なくとも4ゴール以上が必要」となっている。

ちなみに、CLが始まってから、初戦のホームゲームを落としたチームが、第2戦のアウェーで逆転して次のラウンドに進んだのは、わずかに2回だけ。1度目は95−96シーズンのアヤックスで、2度目は決勝トーナメント1回戦でバイエルンを下したインテルである。

■ 共に先発出場

ホームのシャルケはブンデスリーガでは11勝12敗6分けで9位。システムは<4-2-2-2>。GKノイアー。DF内田篤人、ヘヴェデス、メツェルダー、サルパイ。MFパパドプロス、マティプ、バウムヨハン、フラド。FWラウール、エドゥ。ペルー代表のMFファルファンは出場停止。シャルケはMFファルファンが8試合で4ゴール、FWラウールが9試合で4ゴールを挙げている。

対するインテルは<4-4-2>。GKジュリオ・セザル。DFマイコン、ラノッキア、ルッシオ、長友佑都。MFティアゴ・モッタ、サネッティ、スタンコヴィッチ、スナイデル。FWエトー、ミリート。MFカンビアッソはベンチスタート。DF長友はCL初スタメンとなった。第1戦でレッドカードを受けたDFキブは出場停止。

■ ヘヴェデスが決勝ゴール

早い時間でゴールの欲しいインテルが立ち上がりから攻め込んでいくが、シャルケも落ち着いて対応し、決定機は作らせない。すると、0対0で迎えた前半終了間際にシャルケはMFフラドがフリーでボールを受けてゴール正面でフリーになったFWラウールにラストパスを送ると、FWラウールが落ち着いてボールをコントロールして、飛び出してきたGKジュリオ・セザルをかわしてから無人のゴールに流し込む。FWラウールはCLの決勝トーナメントで18ゴール目。シャルケが1対0でリードして折り返す。

これで、5点以上が必要になったインテルは、後半開始からMFスタンコビッチに代えてFWパンデフを投入すると、後半4分にセットプレーの流れからMFティアゴ・モッタが決めて1対1の同点に追いつく。勢いに乗って攻め込みたかったインテルであるが、この後も、思うようにペースは上がらず。逆に、後半36分にシャルケがFWラウールの浮き球のパスからDFラインの裏に飛び出したDFヘヴェデスがゴールを決めて2対1と勝ち越しに成功する。これで勝負あり。

結局、試合はそのまま2対1でシャルケが勝利。トータルスコアでも「7対2」と圧倒して初の準決勝進出を決定。決勝進出をかけてイングランドのマンチェスター・ユナイテッドと対戦することになった。

■ ラウール 1ゴール・1アシスト

準決勝進出の立役者となったのはFWラウール・ゴンサレス。前半45分に貴重な先制ゴールを挙げると、後半36分のDFヘヴェデスのゴールもアシストし、1ゴール1アシストの活躍。大車輪の活躍でチームを引っ張った。

世界トップクラスの選手が集まるインテルに対して、シャルケで同じクラスの選手を挙げると、ドイツ代表のGKノイアーと元スペイン代表のFWラウールくらいで、戦闘力の差は明らかであるが、FWエトー、MFスナイデル、DFマイコンといったワールドクラスの選手をすべて脇役に追いやって、33歳のFWラウールが試合の主役となった。レアル・マドリーを放出されたときは、「もう、ラウールの時代は終わった。」と見る向きがほとんどであったが、シャルケで、予想外の活躍を見せており、改めてその実力を世界に知らしめた。

この試合のFWラウールの走行距離はシャルケではトップとなる11.42kmで、両チームを合わせて最多だったDF長友の11.53kmと遜色ないレベルだった。ゴールを決めて、アシストもして、さらには、チームの誰よりも走っている。本当に33歳なのか?と思わせる圧巻のプレーだった。準決勝のマンチェスター・ユナイテッド戦も不利が予想されるが、FWラウールがいる限り、何とかなるのでは?と思わせる。

■ DF内田はフル出場

シャルケのDF内田はこの試合もフル出場。トータルスコアで、大きくリードした状況での試合だったので、オーバーラップの回数は少な目であったが、それでも、走行距離ではチームで5位の10.11kmを記録。左サイドに張ることの多かったカメルーン代表のFWエトーをケアする仕事を任されたが、しっかりとマークして、FWエトーをほぼ完ぺきに封じた。

日本にいた頃は「DF内田は守備に不安がある選手」と考えられていたが、ドイツに渡って、MFロッベン、FWエトー、MFリベリ等、世界最高レベルの選手とのマッチアップを経験したことで、非常にタフになって、別人のようなたくましさを備えるようになった。もともと、スピードのある選手だったが、FWエトー、DF長友といった選手にスピードで勝負されても、苦労することなく対応できている。

これでシャルケはベスト4。ACミラン、インテル、バイエルン、レアル・マドリー、バルセロナといったメガクラブが「ベスト4」に残っても不思議ではないが、欧州レベルでは中堅クラブといえるシャルケがベスト4に残るというのは快挙であり、クラブ史に残る試合となった。DF内田も、グループリーグの初戦のリヨン戦こそベンチからも外れたが、それからの9試合はすべて先発で出場しており、チームでも、代えの効かない選手となった。

■ DF長友もフル出場

一方のDF長友も先発でフル出場。攻めるしかない状況で、DF長友も高い位置をキープし動き回ったが、インテルは単調な攻撃しか見せられずに、セットプレーからの1ゴールのみに終わった。

CLでは初先発だったDF長友であるが、前述のように走行距離はチームトップの11.53km。インテルで2番目に多かったのがMFティアゴ・モッタで10.50kmだったので、チーム内ではダントツの数字だった。インテルはベテラン選手が多くて、「動き」のある選手が少ないので、DF長友も動きはどうしても目立ってしまう。

残念ながら、2トップの一角のFWエトーが左サイドにポジションを取っており、DF長友と重なってしまう場面も多かったため、必ずしも、攻撃参加が有効に働いていなかったが、レギュラー取りということを考えると、まずまずのアピールができた。これで、インテルはCLでの戦いが終了したので、あとはリーグ戦とコパ・イタリアとなる。なんとかレギュラーを確保して、いい形でシーズンを締めくくってほしいところである。

■ 日本人対決はドローか。

チームの対決では、トータルスコアで「7対2」とシャルケが圧倒したが、DF内田とDF長友の日本人対決はドローといった感じで、何度か1対1でマッチアップする場面があったが、ともにしっかりと守って相手をストップさせたため、どちらが優勢だったといえない内容だった。

それにしても、世界最高峰のCLの舞台で、ベスト4入りをかけて日本人同士が対戦することになるとは、いったい誰が想像できただろうか。『何でもアリ』の雰囲気がある「キャプテン翼」の世界でも、このような状況を描いたら「リアリティに欠けるので、面白くない。」と苦情が来そうなレベルである。

シャルケの次の相手はマンチェスター・ユナイテッドである。厳しい相手であるが、こうなったら、「失うものは何もない。」というチャレンジャーの強さを発揮してほしいところである。もし、シャルケが決勝に進出して、その相手がレアル・マドリーだったとしたら、これ以上ない最高の舞台となる。

関連エントリー

 2009/01/30  日本人のサイドバックを論ずる。
 2009/09/30  データで見る最も空中戦の強いJリーガーは誰か? (2009年/J1編)
 2009/10/02  データで見る最も空中戦の強いJリーガーは誰か? (2009年/J2編)
 2010/06/30  日本代表のスタッフと27人の選手をたたえよう。
 2011/02/01  長友佑都のインテル移籍決定!!!
 2011/04/02  日本代表 歴代ベストプレーヤーを考える (右SB/右WB編)
 2011/04/03  日本代表 歴代ベストプレーヤーを考える (左SB/左WB編)