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先日ご紹介した香港ファッションウィーク、ワールドブティック香港開催期間中の2010年1月17日〜20日、tokyoeyeの展示商談会が現地で開催された。これは経済産業省による日本ブランドの対外発信力強化、および海外展開への支援を視野に入れた新たなチャレンジとなる。

(上写真)会場となった香港コンベンション&エキシビション・センター内の153平米に及ぶ展示ブース。

今回参加したのは、Betty Smith(ベティスミス)、FUGAHUM(フガハム)、GUT’S DYNAMITE CABARETS(ガッツダイナマイトキャバレーズ)、JieDa(ジエダ)、RIVORA(リヴォラ)、sise(シセ)、steteco.com(ステテコドットコム)、SWATi(スワティ)、VANQUISH(ヴァンキッシュ)の合計9ブランド(ABC順)。またカーブベルトやディナージーンズを考案し、そのオリジナリティ溢れる創作が評価されるBetty Smith 、独特のロックマインドが海外バイヤーにも好評だったGUT’S DYNAMITE CABARETS、シンプルなミックス&マッチをスタイリッシュにアレンジしたVANQUISHにいたってはファッションショーも開催。


(左)GUT’S DYNAMITE CABARETS。“BUNNY ROCK”をテーマに味のあるウサギモチーフのオリジナルプリントでイケイケの個性を際立たせていた。(右)VANQUISH。JFWでも評価の高かったモーリス・メーテルリンクの名作「青い鳥」を香港で再現。

毎回約20,000人の来場者が訪れ、世界第2位の規模を誇るという香港ファッションウィーク&ワールドブティック香港。では、そこでのバイヤーの反応はどうだったのだろうか? RIVORAでは香港や台湾、マレーシア、タイ、モスクワなどから早速コンタクトがあった。またメンズは元々比較的サイズが大きめなのだが、中国では体格の違いもあってかLサイズの需要を強く実感したという。今後は日本の工場とのリレーションシップは継続維持しつつ、さらなるクオリティ向上と価格とのバランスが課題だ。


2009年に誕生したRIVORAは文化服装学院、Istituto Marangoni Londonを経て、MOSSLIGHTやdictionaryで経験を積んだ鈴木泰宏によるブランド。デビュー以来、一貫してテンションの異なる素材の組み合わせが特徴的なシンプルかつ品のあるデザインを手がけている。メンズからスタートし、2011S/Sよりレディスも登場。レディスではワンピースが人気。折り紙のようなプリーツをモダンに味つけしたフィット&フレアのものや、ボックスシルエットにグラフィカルな視覚効果で着やせして見えるタイプなど。

また、今回は消費者とバイヤーからの意見主集約を目的に尖沙咀(チムサーチョイ)にあるミラマーショッピングセンターでテストマーケティングも実施している。地下に登場したポップアップストアでは、特に香港の気候にマッチした通気性の良い素材使いが特徴のsteteco.comのホームウェアが好評だった。ちなみにsteteco.comは世界初のステテコ研究所として、日本人のライフスタイルに密着した肌着を提案。今回は伝統的な清涼素材である滋賀県の高島ちぢみを京都でモダンなプリントにアレンジし、大分で縫製という凝った作りのアイテムが紹介された。

そしてFUGAHUMにも注目して欲しい。独特のディテールやシームレスなアートプリントが織りなす刺激的な世界感は、ざっくりと言ってしまうならば、日本発のモードとしてアジアの目にも新鮮に映ったと思う。構築的なフォルムに視覚効果、どこかプリミティブであり東京っぽくもある不思議な感覚……そんな要素をミックスした新しい概念にはどこにもない存在感があり、専門家の評価も高かったという。香港においては、あとはそのセンスをどこまで理解し、消費者に落とし込むまで受容できるかといったところだろうか。


2011S/Sコレクションより。FUGAHUMはエンライトメントのアートディレクターだった三嶋章義とヨウジヤマモトでパタンナーをしていた山本亜須香によって2006年に誕生したメンズ&レディスのブランド。ブランド名は、架空の国の名称に由来している。

それにしても、世界が注目する“東京”とは? そんな疑問に答えるセミナー「The Secret of Tokyo Fashion」が香港貿易発展局とJETROの共催で開催された。ゲストスピーカーは東京、香港、北京にファッションプレスを持つ(株)MOON CAKE代表の中込知野とファッションジャーナリストの川原好恵。主に渋谷、原宿、青山に生息する東京のファッションピープルのスナップを撮影し、そこから細分化されたファッションに対する嗜好傾向は、同じ日本人の目から見てもマーケティングの点で大いに参考になる。密集地帯でセグメント化された層は、服装はもとよりメイクに対する意識やカルチャー、コミュニケーション、他人を意識する目線も多種多様。また、そこからクロスオーバーした価値観が生まれることもあり、そんな独特のコンテンポラリーな感性が東京の一部のエリアに凝縮していることは海外から見れば面白い現象なのかもしれない。
ここでは、竹下通り、明治通り、キャットストリート・イースト、キャットストリート裏、表参道ヒルズ、南青山の6つにカテゴライズした最新東京ファッションの分析結果を発表。なお、東京のファッションを知るには約133種類ある雑誌を見るのが最適だそうで、香港では路地の売店やコンビニでもあまたの日本雑誌が売られていることからハイスピードで“東京らしさ”を吸収していることが伺える。

tokyoeyeは、日本ブランドの海外展開支援を行うためすでにパリ、上海でも展示商談会、テストマーケティングを実施している。経済産業省のクール・ジャパンストラテジーを世界に紹介したいという想いは、少しずつ、でも確実に浸透しているようでもある。中国マーケットのポテンシャルの高さを見込んでトライした今回の香港では、日本の優れたソフトパワーであるファッションに対する注目度、認知度がぐっと高まったのではないだろうか。今後は日本のファッション産業、ブランドがもっと羽ばたくためのさらなるアピール力とリレーションシップの強化に期待したい。


上海での展示商談会の様子。こちらではAGURI SAGIMORIやヒデノブヤスイ、Johnbul、everlasting sproutなどが参加。


上海ファッションウィーク期間中、SEVEN DAYS実施のショーでも日本ブランドを紹介した。

tokyoeye

近藤陽子/ファッションエディター&スタイリスト

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