モノづくりは日本のお家芸とよく言われる。しかし、油断していると足元をすくわれる。鬼怒川ゴム工業の中国工場の話を聞くと、そんな思いを抱かざるを得ない。

「中国広州市の鬼怒川ゴム工業の工場には、自動車F1レースのピット作業さながらの工程がある。合図と同時に機械に5人が素早くかけ寄り、各人が無駄なく役割をこなし、パッと作業を終える。

日本の工場をまね、2人でしていた作業を細分化して5人で一気に交換する方法に変えた。20分かかっていた交換時間は5分になり、交換時の廃棄樹脂量も4分の1に減った。この工程では1日4回の交換が必要で、工場全体の生産性が高まった。(参考:2010年12月3日 日本経済新聞 15面)」

別の鬼怒川ゴム工業の中国福州市の工場では、製品加工から梱包、検査まで行う多能工によるセル生産方式が導入されている。これにより、ライン生産よりも少人数で済み、無駄な在庫も減ったという。

これまで中国での製造工程は、人件費の安さを頼みにしたものが主流であった。不良が発生すれば、工程改善ではなく、検査工程に人を張り付け不良をはじく方法で対処するといった方法だ。これでは、仕損は減らないが、それでもトータルでは日本よりも製造コストが安くすんだ。

しかし、経済成長に伴い、人件費は上昇する。中国の人件費も上がってきている。資源高や環境経営が求められる中で、仕損で無駄になる材料も無視できない。リワークで再利用するといっても、やはり、一連の工程は無駄だ。厳しいグローバル競争の中で、こんな無駄をいつまでも続けられる訳がない。そろそろ中国でも工程改善が求められる時期に来ているのかもしれない。

「『新興国の工場も、先進国の工場と同じレベルで競わせる。』日産自出身で生産技術のスペシャリスト、関山定男社長は力を込める。実際『生産時の廃却比率など一部指標は、中国工場の方が日本より良くなってきた』(堀正彦執行役員)」


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