「コク」である。キリンビールが「コク」を訴求している。それは成長分野でキリンがアサヒに仕掛けたガチンコ勝負だ。

「あ、清冽!」。元フジテレビアナウンサー・内田恭子がCMでグラスを傾け一口飲んでつぶやくセリフだ。6月24日発売・キリン「コクの時間」。
同製品は全く新しい製法によって「コクの概念を変える全く新しいコク」を実現したという。同製品紹介のWebサイトによると<清涼感のあるホップの香りが、引き締まった後味を生み出し飲んだ瞬間に実感できる、新しいおいしさ>とある。「清冽」とは「水が清く冷たいこと(広辞苑より)」。つまり、引き締まったのどごしを端的に訴求する言葉なのだ。

この「コクの時間」は第3のビールという、いわゆる新ジャンルビール系飲料である。迎え撃つアサヒの第3のビールにおけるフラッグシップは「クリアアサヒ」。「クリア」というネーミングと「うまみだけ。雑味なし。」というコピーで製品の特性を訴求する。
「うまみだけ。雑味なし。」のアサヒ「クリアアサヒ」。それに対して、「コク」で「清冽」なキリン「コクの時間」。どう見てもガチンコ勝負である。

因縁浅からぬ両社ではあるが、キリンはアサヒになぜ、ガチンコ勝負を挑んだのか。
第3のビールには、麦芽を原料とする発泡酒にリキュールを加えた「リキュール(発泡性)」と、麦を使わず大豆たんぱく・えんどう・とうもろこしを原料とした「その他醸造酒(発泡性)」がある。キリンビールの第3のビールにおけるフラッグシップ「のどごし生」は後者である。
キリンビールの戦略の特徴は、この第3のビールの両カテゴリーに商品を配していることだ。ライバルのアサヒビールは選択と集中で、「リキュール(発泡性)」にのみ特化して製品を開発・販売している。

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