2023年、世論の強い批判を受け断念したのにまたぞろ与党税調も議論開始(宮沢洋一自民党税調会長)/(C)共同通信社

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 まったく懲りない連中だ。昨年「サラリーマン増税だ!」と強い批判が巻き起こり、実施を断念したのに、また自民党政権が「退職金増税」に動きはじめている。

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 首相の諮問機関「政府税制調査会」が15日に開かれ、退職金課税を見直すかどうか議論をスタートさせた。その場で財務省は、勤続20年を境に控除額が変わる現行の仕組みが、1989年から変わっていないと説明。有識者からも「転職する人が増えている現状に合わない」などと、見直しを求める声が続出したという。

 月内に本格化する「与党税制調査会」の2025年度税制改正論議でも、退職金課税を取り上げるという。自民党の宮沢税調会長が「議論していく」と明言した。

退職金増税」は、昨年、岸田政権が「骨太の方針」の原案に盛り込んだが、「増税メガネ」と岸田首相を揶揄するあだ名が飛びかい、実施を断念した経緯がある。なのに、また持ち出してきた形だ。

退職金増税」が強行されたら、労働者の人生設計が狂うのは確実だ。

 退職金所得税の課税対象になっているが、現行制度では「退職所得控除」によって税負担が軽減され、ほとんど税金がかからない仕組みになっている。

 ポイントは、長く勤めるほど優遇されることだ。勤続20年までの退職金控除は1年につき40万円だが、20年を超えると控除額は1年につき70万円に引き上げられる。たとえば、38年勤務の人の場合、退職金が2060万円までなら税金がかからない。岸田政権は、控除額を勤続20年以降も1年40万円に据え置こうとしていた。その場合、1520万円以上は課税対象となってしまう。

 一度、潰れた「退職金増税」が再浮上したことに、さすがにネットでも<退職金は、日本独特のいい制度。そこから税金を巻き上げようとすることは、やめさせないと>といった声があがっている。

 経済評論家の斎藤満氏はこう言う。

「隙あらば増税したい、というのが財務省なのでしょう。しかし、長い目で見たら日本経済にはマイナスだと思う。かつて、ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われた日本経済の強みは『年功序列』『終身雇用』という日本型経営にあった。いま、アメリカもそう評価しています。雇用が保証されていることで安心して家族を持ち、住宅ローンを組むこともできた。会社への帰属意識も高まり、生産性も高くなった。なのに、自民党政権は、頻繁な転職と、非正規労働者を前提にした税制にしようとしている。日本経済は再建できませんよ」

 もう一度「退職金増税」を潰さないといけない。

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