MacBook Pro 14インチ。M4、M4 Max搭載モデルを含め、ボディのデザインとカラーが共通化された(筆者撮影)

アップルが11月8日に発売した新型ノートブックコンピューター「MacBook Pro」。ハードウェア的な刷新は主に、M4、M4 Pro、M4 Maxのチップとなる。

一言で言えば、極めて高速。そして人間のほうが先に根を上げるほどスタミナを発揮してくれるバッテリー、そして意外なことに「カメラ」の性能向上が光る。

発売に先駆けて1週間試したM4 Proモデルの14インチMacBook Proのレビューのほか、5機種の選び方、買い替えのコツをお伝えする。

メインメモリがより高速化

2024年10月末、アメリカ大統領選挙の前の週に3日連続で行われた新型Macのオンライン発表で、最後に登場したのがM4ファミリーを搭載するMacBook Proだ。

スタンダードなM4チップに加え、高性能なM4 Pro、そしてさらに高性能なM4 Maxチップが用意されている。

【画像】Adobe Premiere ProによるAI文字起こし、1時間駆動してようやく1%減少するバッテリー、被写体を自動認識して追随するセンターフレーム機能、机の上あたりを映し出してくれるデスクビュー、M3搭載MacBook Proと比較、M4 Pro搭載14インチMacBook Proの側面

Appleシリコンは設計上、チップとメモリを一体化する「ユニファイドメモリ」という構造を採用しており、M4チップは16GB以上となるが、M4 Proでは24GB以上、M4 Maxでは36GB以上となる。

M4 Pro・Maxでは、このメインメモリがより高速化されており、さまざまなレベルでの動作の高速化に寄与してくれる。とにかくデータの転送が早い、処理が早い、結果が素早く返ってくる、という経験をすることができる。

これに加えて、クロック周波数がM2、M3世代から向上し、4.5GHz駆動となった。

【M4搭載MacBook Proシリーズ】
・ M4搭載14インチ16GBメモリのモデルが24万8800円(税込)から
・ M4 Pro搭載14インチ24GBメモリのモデルが32万8800円(税込)から
・ M4 Max搭載14インチ36GBメモリのモデルが39万8800円(税込)から
・ M4 Pro搭載16インチ24GBメモリのモデルが39万8800円(税込)から
・ M4 Max搭載16インチ36GBメモリのモデルが55万4800円(税込)から

M4 Proチップの破壊力

今回試しているM4 Proチップ搭載の14インチMacBook Proは、メインマシンとして十分すぎる性能を誇る1台と位置づけられる。同時に試していたデスクトップモデルのMac miniでも、その性能を試してきたが、少なくともM2 Max搭載のMac Studioよりも、広範な処理で優れた性能を発揮する。

Mac miniでの経験と同様、Finderを開く、Spotlightでマシンの中のファイルを検索する、写真アプリを開く、といった、ビジネスユーザーでもクリエイティブユーザーでも等しく行う日常的なタスクの動作が、すべてがワンテンポずつ早まる経験をすることになる。

またAIタスクも高速で、Adobe Premiere ProにおけるAI文字起こしなど、筆者が日常的に行うタスクについても、M3世代のチップから10%ほどの性能向上を体験することができた。


Adobe Premiere ProによるAI文字起こし。M2 Max搭載Mac Studioに比べて10%程度高速で、2時間のビデオを5分弱で、文字起こしをしてくれる(筆者撮影)

M4 Proチップは、数字の上では、M2世代の最高峰とも言えるM2 Ultra(M2 Maxを2つ連結したチップ)を搭載したMac Studioよりも処理速度が速かった。手元の機材のGeekbench 6でのベンチマークで、M4 Proは22500前後。対してM2 Ultraは21500前後、M3 Maxは20500前後のスコアをマークする。

なお、M4のベンチマークスコアは15000前後だ。ちなみにこの数値はM1 Maxの12000程度、M2 Maxの14000程度といった数値を上回る。そう考えると、簡単な4K動画編集程度の作業であれば、M4チップ搭載の14インチMacBook Proで十分快適に使うことができる。

M4 Proチップですら、多くの人にとっては過剰なパワーかもしれない。

全然バッテリーが減らない

そんな強大な処理性能を備えていながら、相反するように、驚異的なバッテリー持続時間を経験することになった。


M4 Pro搭載14インチMacBook Proでの執筆作業。1時間バッテリー駆動させて、ようやく1%減少するほど、電池が長持ちする(筆者撮影)

この原稿は、北陸新幹線「あさま」の車中で、M4 Pro搭載のMacBook Pro 14インチモデルをバッテリー駆動で使いながら、書いている。東京駅を出て、すでに1時間列車に揺られており、熊谷を過ぎたところで、ようやくバッテリー表示が99%になった。

つまり、このペースでUlyssesというテキストエディタを使って原稿を書き続ける場合、あと99時間は動作させられる可能性がある、ということだ。

M4 Pro、M4 Maxチップを搭載するMacBook Proでは、iPhoneのように、低電力モードを選択することができる。選択するとメニューバーの電池のアイコンが黄色くなる点も、iPhoneと同じ演出だ。

グラフィックス性能をベンチマークしてみると、高出力もしくは自動モードと比べ、低電力モードでは12〜15%程度負荷を抑えていることがわかった。

カタログの数値では、M4 Pro搭載の14インチMacBook Proは、ビデオ再生で22時間というバッテリー持続時間だった。M4搭載モデルは24時間となっており、さらに省電力性が高い。

14インチのM4搭載MacBook Proは、処理性能とバッテリー持続時間のバランスが、極めて良いと言えるだろう。

多彩なカメラ性能は「かなり使える」

今回発表されたiMacとともに、MacBook Proには12MPセンターフレームカメラ(英語ではCenter Stage Camera)が搭載された。これまでのFaceTime HDカメラより高解像度化されているが、それだけでなく、レンズが超広角となっている。

このカメラは非常に使い勝手が良くなった。

まず、解像度が上がり超広角となったため、倍率を調整したり、カメラのどこをウェブ会議などに映し出すか、フレームの調整ができるようになった。ノートパソコンの場合、カメラの位置は画面上部に固定されている。

しかし正面に座れず、ウェブ会議でズレた位置に自分が映し出されてしまうことがあった。新しいMacBook Proのカメラを使うと、カメラの倍率を上げれば向きを調節できるため、画面の正面に自分を映し出すよう調整できる。


センターフレームカメラは、自分で倍率やカメラの向きを変えて、映る範囲を調整することができる。センターフレームをONにすると、被写体を自動認識して追随する(筆者撮影)

これを自動でやってくれるのが、センターフレーム機能だ。被写体である自分を認識して、常に画面中央に映るよう、カメラワークを自動的に行ってくれるのだ。立ち上がれば、カメラを上に動かしながらワイドにして、自分の顔が画面に収まるようにしてくれる。

もし複数の人が集まれば、その人たち全員が画面に映るようにしてくれるのだ。

ウェブ会議だけでなく、授業の配信で黒板の前を動き回るような場面でも、自動的に追いかけてくれるようになり、その活用範囲は広いだろう。

さらにカメラ機能でもう一つ追加されたのが、デスクビューだ。これは、キーボードと使っている人の間の領域あたりの机の上を映し出してくれる機能で、手書きや手作業をウェブ会議や授業配信などで見せる際に便利な機能だ。


デスクビューは、自分の手元をウェブ会議や授業配信で映し出すことができる。その際、自分の顔も同時に配信可能だ(筆者撮影)

ちなみに、デスクビューはこれまで、超広角カメラを備えるiPhoneをMacのウェブカムとして活用する際にのみ、利用できた機能だった。またMacにおいてセンターフレームは、27インチのStudio Displayで利用できる機能だった。

ナノテクスチャーも選べるM4モデルに注目

MacBook Proのディスプレイは、HDRコンテンツを表示する際のピーク輝度が1600ニトである点は変わらないが、一般的な(SDR)コンテンツの輝度が600ニトから1000ニトに向上し、日が出ている屋外での使用時の視認性が大幅に向上した。

加えて、反射を抑えるコーティングを施すナノテクスチャーガラスを2万2000円のオプションで追加できる。特に屋外で写真やビデオを確認する機会が多いフォトグラファーやビデオグラファーだけでなく、屋外作業が多い人にとっては、快適さが大幅に上がるオプションと言える。

また接続性も改善されている。上位チップ搭載モデルとは異なり、これまでM3搭載の14インチMacBook Proには、右側のThunderbolt(USB-C)ポートが省かれており、左側の2ポートのみしか利用できなかった。

電源の取り回しでどうしても右側で接続したい場合や、接続する機器が増えた場合に、不便な状況となっていた。

しかしM4搭載MacBook Proでは、上位モデルと同様、右側にもポートが用意され、最も安いモデルの問題点の1つが改善された。


ナノテクスチャーガラスオプションのMacBook Pro 14インチ(上)と、M3搭載MacBook Pro。右側面のポートが1つ増えている様子がわかる(筆者撮影)


左側面には、MagSafe 3充電ポート、Thunderbolt 5ポート2つ、ヘッドフォンジャックが備わる。M4モデルはThunderbolt 4ポートとなる(筆者撮影)

さらに、こちらも上位モデルでしか選ぶことができなかった真っ黒なカラーの「スペースブラック」も、M4搭載モデルで選択可能となり、反射を防ぐナノテクスチャーガラスのオプションももちろん選択可能だ。

M4搭載MacBook Proは、16GBメモリと512GBストレージで24万8800円(税込)。多くの場合、何も足さなくても十分、長く使うことができる、多くの人にお勧めできる製品だ。

(松村 太郎 : ジャーナリスト)