アメリカの運輸省道路交通安全局(NHTSA)が、テスラの完全自動運転(FSD)システムに関する予備評価を開始することを通知する電子メールを公開しました。このメールの中で、NHTSAは「テスラの公式Xアカウントが、FSDシステムの使用に関して、公式な安全指針と矛盾した使用方法を推奨している」と懸念を示しています。

INIM-PE24031-27346.pdf

https://static.nhtsa.gov/odi/inv/2024/INIM-PE24031-27346.pdf

US agency raises concerns about Tesla Full Self-Driving social media posts | Reuters

https://www.reuters.com/business/autos-transportation/us-agency-raises-concerns-about-tesla-full-self-driving-social-media-posts-2024-11-08/

NHTSA urges Tesla to clarify ‘Full Self-Driving’ messaging | AP News

https://apnews.com/article/tesla-investigation-full-self-driving-questions-6ca8e2880af87361f3148b7e78718d52

テスラは一部の車両向けにFSDシステムを提供していますが、このFSDシステムを搭載した車両が複数の衝突事故を起こした報告を受け、NHTSAは2024年10月に調査を開始しています。

テスラのフルセルフドライビングに関する調査をアメリカ運輸省道路交通安全局が開始、視界不良時の衝突報告4件のうち1件が死亡事故 - GIGAZINE



NHTSAが公開した文書は2024年11月5日付けで送信された調査開始通知書で、NHTSAのグレゴリー・マグノ氏からテスラのField Quality担当ディレクターであるエディー・ゲイツ氏に送信されたものです。このメールには2024年5月14日付けで送信されたメール「Tesla's messaging concerning driver engagement with FSD-Supervised」が添付されており、NHTSAはテスラの公式説明とXでの投稿内容に矛盾があると指摘しています。

THSTAが懸念を表明したポストの例が以下。「病院まで13マイル(約21km)の距離をFSDシステムで移動した」というテスラユーザーの投稿を引用リポストしたもので、NHTSAは「運転者の常時監視という原則に反する使用例」だとコメントしています。



以下のポストでは、ドライバーがハンドルから手を離して運転している動画(記事作成時点で削除済み)をテスラの公式Xアカウントが引用リポストし、「FSDを使用すると疲労が軽減される」とコメントしていますが、これも適切な運転姿勢と矛盾するとNHTSAは述べています。



さらにテスラの公式Xアカウントは、運転に自信を失いつつある高齢ドライバーをFSDが支援できるという内容を引用リポストし、「個人の状況に関係なく、誰でもどこへでも行けるようにすることがFSDの目標」とコメントしています。



NHTSAはこうしたSNSでの投稿が「テスラのFSDシステムをロボタクシーのように見せかけており、システムの実際の能力や必要な注意事項と矛盾している」と指摘しました。

また、テスラのウェブサイトでも同様の問題が見られ、ストアページでは「Full Self-Driving Capability」として「自動運転」や「ほぼどこでも自動で運転可能」と説明していたり、チャットボットが「ドライバーによる操作は不要」と解説していたりすることが指摘されています。

NHTSAは、テスラがユーザーマニュアルでは「車両は自律的ではなく、ドライバーは警戒を怠らずに完全なコントロールを維持する必要がある」と説明しているにもかかわらず、その内容と一致しないメッセージをSNSで発信していることを問題視しています。

マグノ氏は「SNSプラットフォームは、ユーザーマニュアルよりもはるかに大きな影響力を持つコミュニケーション手段です。テスラには自由な情報発信の裁量があることを認めますが、これらの投稿は新製品への熱意を適切な使用上の注意で抑制する機会を逃しています」と述べ、テスラのSNSでの振る舞いを見直してユーザーマニュアルとの一貫性を示すように要請しました。