なぜ都会では“カフェでひと休み”すらできないのか?「カフェ難民」が続出している根本的原因

写真拡大

常住人口1400万人、昼間人口は1600万人超と、世界でも有数の人口密度を誇るメガロポリス・東京。円安を背景とした外国人観光客も流入し、今、東京は“カフェでひと休み”すらできない都市になりつつある。

【写真】おしゃれカフェが相次いでオープンし、“下町のブルックリン”と呼ばれる街

休憩したくても場所がない!?

「ちょっと休もうと入店したけど、満席で泣く泣くあきらめた……」

都心部のカフェで、こんな経験をしたことがある人は多いのではないだろうか。実際、こうしたエピソードが昨今のSNS上で定期的に話題になっている。

今年4月には、「都会ではチェーンの喫茶店まで行列ができており、“ちょっと休憩する場所”すらなくなっている」との議論が沸騰。

SNS上には、〈体力ないからカフェで休憩したいのに、カフェ探すのにまた体力を奪われる〉〈土日の都心ってどのカフェもパンパンになってる〉〈東京では休憩するのにも金かかる〉〈30分か1時間くらい座りたいだけなのに そのためならコーヒー1杯くらいのお金は出してもいいと思ってるけど席が空いてない〉など、さまざまな声が上がった。

10月20日にも、『マネーポストWEB』が『都心繁華街の“カフェ大混雑”問題がますます深刻化 「カフェオレ1杯が出てくるまで30分」「1時間待ってやっと入店」の悲鳴も』という記事を配信し、話題となった。

実際、現場もこの“混雑問題”は肌で感じているようで、東京を代表する繁華街・渋谷のカフェ店員からは、こんな声が聞こえてきた。

「平日も午後はほぼ満席で、サッと座れるのは午前中くらいですね。土日はもっとすごくて、街自体も人があふれてますから、チェーン店も喫茶店も多くは列ができていると思います」(渋谷カフェ店員・20代男性)

「渋谷は再開発によって有名スポットや商業施設ができて、人がさらにたくさん集まる街になっています。最近は旅行で来た外国人のお客さんも増え、歩き疲れてカフェに入ろうとしてもなかなか席がなかったりしますね」(渋谷カフェ店員・30代男性)

その後、駅周辺でドリンク容器を持って歩く人に遭遇。持ち帰りの理由をたずねたところ、やはり混雑がネックになっている様子だった。

「ちょっと時間があって、何か飲みたかったのでカフェに行きました。でも混んでて居心地悪そうで、わざわざほかを回るほどじゃないからテイクアウトで。まぁしょうがないかなって。でもゴミ箱がないので、飲み終わったらどうしようって今思ってます」(学生・20代男性)

“カフェの聖地”の下町でも同様の問題が

深刻な様相を呈している都心部のカフェ混雑問題。

一方で、昨今のカフェブームでお店が林立したスポットはどのような状況なのか。渋谷から東京メトロ半蔵門線で一本、清澄白河駅に場所を移して調査を続けた

清澄白河には2015年に「サードウェーブコーヒー」の先駆けであるブルーボトルコーヒー日本第1号店が出店し、以降、多くのカフェが林立。まさにカフェの聖地だ。

かつては倉庫が立ち並ぶ下町だったが、この10年でおしゃれスポットへと変貌を遂げた。

 渋谷に比べると人通りは少ないが、ガラス張りのブルーボトル店内は、平日にもかかわらず満席状態。

ビジネスパーソンと思しき男性から若い女性、外国人まで客層もさまざまで、15時頃のカフェタイムであることを踏まえても、その人気ぶりがうかがえる。

だが、周辺で話を聞くと、この日はまだマシなほうだという。

「すぐ座れるのは平日の昼頃までで、あそこは土日だと外まで大行列。人の多さであきらめて、他店に行く人も多い。昔はブルーボトルってここだけだったけど、今はあちこちにあるのにね」(近隣住民・70代男性)

そのブルーボトルを追うようにしてできた店舗も、波及効果を受ける一方で“パンク”に近い状態にあるという。

要因としては、「カフェの街」と化したことでの“食べ歩き”ならぬ“飲み歩き”の増加や、過去最高を更新する訪日外国人の影響があるようだ。

「土日は特にお客さんが多いです。ありがたいことに注文待ちが発生することもあって、おっしゃるような混雑問題も感じますね。公園やベンチも多いので、渋谷とかに比べると休む場所はあると思うのですが」(清澄白河カフェ店員・30代男性)

「土日の人通りは多く、外国人も見かけます。この辺は古い町並みが残っているところもあるし、清澄庭園なんかもあるので、“和”が感じられて人気なのだと思います。

飲食店も、昔からある和菓子屋さんや最近できたカフェ、ハンバーガーの店などもあります。外国人にとっては、和も感じられるし故郷の味もあるしで、勝手のいい観光地なのかなって」(清澄白河カフェ店主・40代男性)

原因はインバウンドだけでなく……

清澄白河は半蔵門線のほか都営大江戸線も通っているが、カフェタウンは数駅ほど行ったところにも。近年、おしゃれカフェが相次いでオープンし、“下町のブルックリン”とも呼ばれるようになった蔵前だ。

ここは清澄白河周辺よりもさらにカフェが林立しているのだが、複数の店舗に話を聞いたところ、やはり人の多さは感じているとのこと。

また、浅草という一大観光地の徒歩圏内であるためか、外国人観光客の影響はさらに顕著なようだ。

「浅草は日本人も多いけど、外国人の観光客もたくさん来られます。でも川沿いのスカイツリーが見える店とかは、若い女性中心に待ちがすごいですよ。インスタ映えみたいな需要もあるのかもしれません」(蔵前カフェ店員・50代男性)

「カフェなんて薄利多売だから、あまり長居されちゃうと商売上がったりよね。ウチはスイーツだけのお客さんが結構来るから、ワンドリンク制にしたの。最近は、心苦しいけど値上げもして。この辺りは外国人観光客が多くて、彼らにとっては値上げしてもまだ安いから買ってくれる。日本人のお客さんには悪いけど……」(蔵前カフェ店主・40代女性)

取材を進めるなかで、多くの店が“混雑問題”の要因に挙げたインバウンド。

しかし、これはあくまで一因にすぎず、SNSやリモートワーク、果ては季節の影響も大きいそうだ。

「ウチは予約優先でやっていて、混雑回避のため90分制を採っています。だいたい平日は15組くらいで、土日祝日は40~50組ほどでしょうか。
混雑問題の要因はインバウンドもありますが、コロナが終わって外出する人が増えたことと、何よりもSNSから火が付いたカフェブームが主かと感じます」(蔵前カフェ店主・30代男性)

「そもそもカフェはおしゃべりに使う方が多いので、回転率は悪いです。そこに、コロナ以降リモートで仕事するようになった人がPCを持って来店されたりして、より滞在時間が長くなった印象です。
ウチはWi-Fiもないですし、混雑時には席をお譲りできないかうかがったりしてます」(清澄白河カフェ店員・30代男性)

「ウチはWi-Fiやコンセントも提供してますが、PCで作業される方は回転も悪いし、ワンドリンクやフード1品でずっといられると困るのが正直なところですね。『何かおかわりされますか?』とか、お声がけするようにはしているのですが……」(蔵前カフェ店員・20代男性)

「並ぶほど人が集まるのは、みんな涼みに来るのもあるのよ。今年の夏は特に暑かったしね。でも夏だけじゃなくて、今度は冬になると、温まりに来る人でもっと混むわよ。カフェは温かいものを出すから」(蔵前カフェ店主・40代女性)

情報が氾濫したSNS社会、オーバーツーリズム、“地球沸騰化”とも呼ばれる気候変動……。“都心カフェ混雑問題”は現代社会のあらゆる問題が反映された、想像以上に根深い現象なのかもしれない。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班