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気分が華やぐ春は、新しいことを始める好機です。このタイミングに、なんとなく続けていた人間関係や生活のルール、家事、お金のことを見直してみませんか?今の自分に本当に必要なものは何なのか。毎日を心地よく過ごすために、自分にとって何が必要で何がいらないと考えているのでしょうか。『婦人公論』の読者アンケートでお聞きしました。(構成◎村瀬素子)

A美さんの家計簿。収入・支出のひと月の内訳は

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世代別・読者の家計公開&お金のプロがアドバイス

【A美さん(68歳・既婚)の家計簿】


A美さん(68歳・既婚)

居住地域: 沖縄県
同居家族: 夫65歳、愛犬12歳
貯蓄額:6万円

定年後に散財した途端、医療費がかさんで……

昨年、夫も自身も定年退職したというA美さん。現在受け取っている夫婦の公的年金は月約21万円と標準的な額だが、支出が多く、毎月大幅な赤字が続いている。「退職した解放感から、夫とリゾートホテルに遊びに行ったりしたんです。その直後に、狭心症など複数の病気が発覚。手術やリハビリで医療費がかさみ、貯蓄はほとんど底をついてしまいました。見通しが甘かったですね」と、後悔を口にした。

深田晶恵さんは、「定年退職という収入ダウンの壁にぶつかって、家計が傾くケースは珍しくありません。危機を自覚して、今から家計を立て直しましょう」と話す。お金の管理が苦手だというA美さんは、どこから改善すべきだろうか。

「A美さんの1ヵ月の支出を見ると、まだまだ削減の余地がありますね。最初に手をつけるべきは、通信費や保険料といった固定費です。手続きさえすれば、努力しなくても節約効果が続きます。通信費は、スマホを大手キャリアから格安スマホに乗り換えれば、1台につき5000〜6000円ほど削減可能。格安スマホはオンラインで契約を結ぶプランほど料金が安くなります。ただ、スマホ操作に自信がない人は、店頭での契約が可能な通信事業者を選ぶと安心でしょう」(深田さん。以下同)

保険料に関しては、A美さんも夫も過去に病気を患ったので、保障内容を見直したとしても安くすることはできないとのこと。

「ならば、思い切って解約するのも選択の一つ。病気になったときに最も頼れるのは、国の健康保険です。高額療養費制度があるので、医療費の自己負担額は多くても月5万〜8万円ほど(収入により異なる)。70歳以上はさらに下がります。入院・手術時にしか給付されない保険料のために家計が苦しくなるのは、本末転倒です」

『おつかいメモ』で食費や日用品費の節約

次に改善すべきは、月ごとに変動する食費や日用品費だ。「合わせて7万4000円は使いすぎですね。月5万円まで、と予算を決めて管理する習慣をつけましょう。私がおすすめするのは、『おつかいメモ』。紙を用意し、上部に冷蔵庫の在庫を、その下の左半分に1週間分の献立を、右半分に必要な食材など買うものを書いておきます。そして、そのメモを持って買い物へ。もし週の途中で不足するものがあれば、それだけを買い足す。この方法なら、無駄買いや食品ロスがなくなるうえ、ゴミも減って一石二鳥です」

予算を管理するのが苦手な場合、コツはあるのだろうか。「即時に銀行口座から引き落とされるデビットカードを活用してみては。食費と日用品費の専用口座を作り、買い物時にデビットカードで支払うのです。たとえば、予算が5万円なら口座に6万円入金し、月末に1万円残るようにやりくりする。そして月初めに5万円を入金。この方法なら、家計簿をつけなくても通帳とカード明細で管理でき、使いすぎを防げます」 

A美さんの悩みの一つが、子や孫への援助だ。子どもたちが家に帰ってくるときは食事を豪勢にしたり、孫の祝いごとや季節の行事のたびにお金を渡したり。負担に感じつつも、やめどきがわからないという。

「お子さんには家計の状況を伝え、今までと同じ援助はできないと正直に打ち明けて。心配をかけたくない気持ちもわかりますが、このままでは老後破綻を招き、もっと大きな迷惑をかけることになりかねません」

もう一つの悩みは、80歳まで残る住宅ローン。このまま家計の赤字が続けば、マンションを手放すことも考えているそう。

「それは最終手段。その前にできることがたくさんあります。お伝えした節約と家計管理を実践して、健全な家計にすることが先決です」