岸田のセーフティースクイズで生還し、笑顔を見せる坂本(カメラ・宮崎 亮太)

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◆2024 JERA クライマックスシリーズ セ・ファイナルステージ 第4戦 巨人4―1DeNA(19日・東京ドーム)

 「2024 JERA クライマックスシリーズ セ」の最終ステージ(S)第4戦(東京D)は、巨人がDeNAとの接戦をものにして初白星を挙げ、アドバンテージを含め2勝3敗とした。同点の7回、阿部慎之助監督(45)のタクトが的中。坂本の安打からチャンスをつくると、岸田のスクイズで勝ち越し、重盗も絡め3点をもぎ取った。先発・井上が6回1死まで完全投球を披露するなど、投手陣も13Kで1失点。崖っぷちで、リーグ王者が底力を見せた。

 執念が逆境をはね返した。全員の熱い気持ちが重苦しい空気を一掃した。阿部監督がズバズバと果敢に交代カードを切り、強気の采配に応えるように選手が躍動した。同点の7回1死一、三塁、岸田が初球を投前にセーフティースクイズ成功。ジャクソンが本塁にバックトスも、三塁から坂本が頭から滑り込んで生還した。ベンチの丸や小林らナインが叫びながらガッツポーズ。場内は大歓声。風向きが大きく変わった。

 「相手にプレッシャーをかけられていなかったし、失敗を恐れずどんどん動いていくぞというのは言ってあったので。期待に応えてくれた。思い切ってね。ドキドキしたよ、俺が」

 7回は泥臭く得点をもぎ取る阿部野球の真骨頂だった。1死一塁、中山の右前安打で坂本が三塁にヘッドスライディングした。岸田のセ・リーグのポストシーズン史上初となる「決勝スクイズ」の直後、相手投手が中川颯に代わって代打・長野への初球、中山の代走・増田大と岸田が重盗成功。増田大は三塁に頭から滑ると、長野の一ゴロでも本塁に頭から生還。相手失策も重なり、岸田も生還した。超異例の“1イニング4ヘッスラ”でかき回した。

 「短期決戦だから、ああやってどんどん選手を代えていこうっていうのもね、川相さんからもそういうアドバイスいただいたので。なかなか動けなかったんですけど、そのアドバイスがあってバンバン代えて」

 初戦から0点、1点、1点と攻撃陣が沈黙。3連敗で土俵際に追い込まれた中で、経験豊富な川相内野守備コーチの助言が監督1年目の指揮官を変えた。6回1安打1失点の先発・井上を「後の投手を信頼して攻撃に転じて」と同点の7回からスパッと代え、継投。攻守で攻めダルマと化した。

 1勝3敗で負けたら終わりの一戦。東京Dベンチ裏の選手食堂に粋な差し入れがあった。大のG党のタレント・中居正広から首脳陣、選手、スタッフ全員へのカツサンドだった。「三度勝つ!!!」のメッセージが添えられていた。あと3試合、日本シリーズ進出へ3勝。愛の詰まったエールで士気が高まった。「もう崖っぷちなのでね。あと1個も負けなきゃいいんだと思ってやった結果、やっと勝てた」と阿部監督。思いは届いた。

 試合前のミーティングでは選手に熱く呼びかけた。「本当に強いチームになるために、ここからやり返せたら本当に強いチームだなと思うし、そうなれるかもしれないチャンスがあるんだから、そこはもうチャレンジしていこうよ」。ピンチはチャンス。逆転の発想で重い扉をこじ開けた。

 「みんなで1個勝ったので流れが変わると思っている。またあした頑張ります」。徳俵から押し返してこれで2勝3敗。負傷から吉川、ヘルナンデスも電撃復帰して役者はそろった。日本Sまであと2つ。2度勝つ! さあ20日の第5戦は準決勝だ。阿部巨人が息を吹き返した。(片岡 優帆)