日本サッカー協会(JFA)は3日、千葉市内の高円宮記念JFA夢フィールドで記者会見を行い、10月の北中米ワールドカップアジア最終予選2試合に臨む日本代表メンバー27人を発表した。森保一監督と山本昌邦ナショナルチームダイレクターが登壇した。

●山本昌邦ナショナルチームダイレクター

「9月シリーズで歴史を変えるような素晴らしいスタートを切ることができた。ただ、今回の10月シリーズからがいよいよ本番という認識でいる。W杯予選に簡単な試合はないというのは歴史が物語っている。今回のアウェーのサウジアラビア戦は本当に厳しい環境下でのゲームになる。しっかりと準備をして臨みたい。そしてホームでのオーストラリア戦はチケット完売だと伺っている。スポンサーの皆さん、ファンの皆さんの熱い思いをピッチで表現し、期待に応えられるように準備していく。10月シリーズで覚悟を持ってW杯予選の流れをしっかりと作り、新しい歴史に挑戦していきたい」

●森保一監督

「いつも我々を応援してくださっているファン・サポーターの皆さん、スタジアムに駆けつけてくださっているファン・サポーターの皆さん、日頃からサッカー日本代表への応援ありがとうございます。10月のサウジアラビア戦、オーストラリア戦とアジアの強豪2チームとの対戦を控える中、アジア最終予選は良いスタートを切れたと思うが、まだ何も掴み取れているわけではない。また試合は0-0から始まるということ。過去の勝利はこれからの勝利を約束してくれるものではないので、これまで通り、一戦一戦勝利を目指して最善の準備をする、そしてチーム一丸となって全力で戦い抜くことをチーム全体で共有して戦いに挑みたいと思う。山本さんがおっしゃられたことと重複するが、10月のホームのオーストラリア戦はすでにチケットが完売と聞いている。たくさんのファン・サポーターの皆さんがスタジアムに足を運んでくださること、多くのサポーターの皆さんが期待をしてくださっていること、スポンサーの皆さんの日頃からのサポート、10月に向けて最大限のサポートをしていただけていることに感謝申し上げたい。ホームの試合ではDAZNさん、テレビ朝日さんが放送してくださるということで、テレビだけでないメディアの方もいろんな発信をしてくださる中、ホーム日本で勝利をお届けできるように全力を尽くして戦いたい。まずはサウジアラビア戦で勝利を喜んでいただけるように、良い結果を日本に持ち帰ってこられるように目の前の一戦に全力を尽くしたい」

―山本ダイレクターが10月からが本番と言ったが、まさにアウェーのサウジアラビアは前回など日本の歴史ではなかなか勝てていない。経験を活かしてどのように戦いたいか。オーストラリアもアジアの強豪で、どのような試合をしていきたいか。

「まずは完全アウェーの中、すべての環境で厳しい戦いを覚悟して、試合に挑まなければいけないと思っている。スタジアムの雰囲気はもちろんだが、まずは我々が今持てる、その時に出せる最高のパフォーマンスをできるように準備しないといけない。前回のW杯予選でもサウジアラビアと対戦させていただいて、同じタイミングで試合をしているし、経験がある中、日本もまだまだ暑いが、だいぶ涼しくなっていることであったり、日本代表の選手の大半がヨーロッパでプレーしており、すでに涼しいよりも寒くなっている中、(サウジアラビアでは)30度越えの気温の中で戦わないといけない、2日間ほどで暑熱対策をしないといけないことは簡単にできることではない。むしろできない中でどう戦っていくかという非常にタフな戦いになる。一人一人、チームの最高のフィットネスの状態を上げることと、体力的にも非常に厳しい戦いになるので、チームとしての戦い方の意思統一をどれだけイメージを持ってできるかということと、個々の役割をしっかり整理した上で、選手が持っている個々の力をチームとしてつなぎ合わせて、厳しい試合を勝ち取れるように準備しなければいけない。一番大変なのは暑さとの戦い。その中でパフォーマンスを発揮できるかがカギになる。前回も選手たちがサウジアラビアで非常にいい戦いをしていたが、疲労が出ていた中、一つのミスで決勝点を奪われた経験もしているので、チャレンジしつつも、致命的になるミスは起きないようにしっかりと戦術的にも準備しないといけない」

―9月からの変更は3選手にとどめたが、コアなメンバーが固まっている印象がある。現状のチームを成熟させる部分と、新しい戦力を呼びたいという思いとのバランスをどう考えているか。

「まずは活動ごとにベストなメンバー編成、チーム編成をして臨んでいくということで毎回選手選考をさせてもらっている。固まったメンバーでいま活動が進んできているような印象があるかもしれないが、選考ではフラットに見ている。コアなメンバーを確認しながらもフラットに、どの選手がこのメンバーに入って来られるのか、次の活動に招集すべきかを考えて招集の議論をさせていただいている。コアなメンバーが固まっているというより、コアなメンバーが存在感を見せ続けているので、ここにコアなメンバーとして名を連ねることになっていると思う。新しい選手、これまで見ていなかった選手、招集できていなかった選手をまたチームの中に迎え入れることについては、常に代表の戦力になりうる選手は招集したいという気持ちは持っているし、その見方を持って選考の段階から現地の試合視察、映像での試合視察をしている。ありがたいことにリスク管理として23人のベンチメンバープラス、4人のバックアップメンバーということで、そう決まってはいないが、そのくくりで活動させてもらっているので、プラスアルファの部分で戦力となりうる選手、いまも戦力だがさらに伸び代がある期待のある選手も招集させてもらえているので、バランスという点ではお答えしづらいが、勝利するために編成した選手と、プラス将来の期待枠というところも招集が可能な体制をJFAの皆さんに作っていただいている」

―この2試合で戦術的な部分ではどのあたりがポイントになるか。中でもサウジアラビアは強力なサイドアタッカーがいる。

「まずは相手のことを分析して、個々の能力、チーム戦術としてどういう戦いをしてくるのかということを分析、把握した上で、我々が戦略を練っていかないといけないと思う。対策についてはすでに進めているところではある。一番大切なところは相手のことについても大切だが、我々が個々、そしてチームとして持てるものを最大限に発揮できるかが間違いなく大切になってくると思う。自分たちが思い切って力を発揮できるように、戦術的な準備、役割の準備をしないといけない。サウジアラビアのサイドアタッカーの選手のことも質問にあったが、イメージは出てくる。ただサイドだけでなく、中央からも突破できるし、9月の活動ではセットプレーで高さを活かしてデザインしてゴールにねじ込んでくるところもある。すべての部分を対策しないといけない」

―初招集の大橋祐紀に期待することは。また森保監督が見ていた東京五輪世代以前から出てきた選手をこのタイミングで初招集することについてどう捉えているか。

「同じ力を持っているのであれば若い選手を招集することも考えられるかもしれないし、いろんな招集の仕方がある中で、彼がすでに28歳ということで、W杯を見据えた時、その先のことを見据えた中で招集されると言う部分では、なかなかこれまでやってきていなかったことかもしれない。ただ、そうでもないところも我々は見てきているところをいろんな選手に知っていただければと思う。若手であれ、ベテランであれ、明らかに結果を出している、そして存在感を発揮しているのであれば、誰にでもチャンスがあるということを大橋選手の招集を通じて、日本代表として世界の舞台で戦いたいと選手に思ってもらえると嬉しい。我々のスカウティングの目はイングランドであればプレミアリーグだけでなく、2部のチームも見ているということ。ヨーロッパ全土でも見ているし、アメリカにも選手がいるし、もちろん国内にもJリーグで活躍している素晴らしい選手がいる。スカウティングのネットワークは全てと言っていいほど、できる限り広くスカウティングした上で、毎回選手を選んでいることを再認識していただけると嬉しい。あとは本人に普段やっていることを代表の舞台で発揮してもらえるように、思い切って年齢関係なくチャレンジしてもらいたい」

―復帰となった藤田譲瑠チマ、瀬古歩夢にどのようなことを期待するか。

「譲瑠は五輪でもアジア予選、そして五輪本大会の舞台でもチームの中心として、キャプテンとしてチームをまとめて引っ張り、国際舞台でもA代表の舞台でも通用するというプレーを見せてくれていた。五輪が終わってベルギーの所属チームの中でも安定して先発で、チームの戦いに貢献しているプレーを確認させてもらい、招集ということにつなげさせていただいた。プレーとしてはボランチとして、6番のプレーを主に見ているが、作りのところの6番だけでなく、8番の攻撃的な可能性を代表の中で見てみたいと思っている。普段やっていることをまず発揮してもらい、代表の戦力として存在感を活動の中で示してもらいたいと思っている。瀬古歩夢についてはこのチームの立ち上げ、2期目のスタートでは招集させてもらっていて、その後はなかなか招集できていないが、彼のプレーも我々は追っている。その中で彼が成長しているところ、彼自身が自チームでレベルアップしているところを確認させてもらっているし、今の我々の戦いの中にも彼がグラスホッパーでやっていることを自然と発揮してもらえれば戦力になり得ることを確認させてもらった上で招集している。さらに彼はまだ若い選手で、今の実力プラス将来の伸び代も持っている。今の戦力に未来のレベルアップも期待して、譲瑠も歩夢も、そして大橋選手も招集させてもらった」

―オーストラリア代表の監督が代わったが、準備に影響が出ているか。またポポビッチ監督はかつてのチームメートで、監督としても対戦経験があり、フォックスコーチも元チームメートだが、どのような思い入れがあるか。

「オーストラリア戦はとても難しい戦いになると思っている。オーストラリアの選手は世界で活躍しているいい選手がもともと多い中、前監督のアーノルドさんもいい監督で、またポポビッチ監督もAリーグ、ヨーロッパの舞台でも指揮を執った経験があり、世界を知る指導者がオーストラリアの監督になったことで我々にとって厳しい戦いになるような準備をしてくると予想している。ポポビッチ監督とは広島でチームメートとして戦っていた仲間で、今も友達として付き合いがある監督なので、彼が選手の時にオーストラリアや日本、そしてクリスタルパレスでプレーしたり、世界の舞台でも選手経験を持っている。コーチとしてもAリーグや欧州の舞台でも経験があるので、非常にすごくいい準備をしてくるだろうと考えている。9月の代表戦を終えて、10月までの準備期間が短い中でも、フォックスコーチ等々これまで一緒に仕事をしていたコーチを招集して、組閣して、阿吽の呼吸でチーム作りができるというグループ作り、スタッフづくりをしてくるので良い準備をしてくると想像している。フォックスも一緒にプレーしていたので、非常に優秀な選手であり、コーチであると認識している。私が広島の監督をしていた時、ACLでウェスタンシドニーのスタッフ・監督として対戦したことがあるが、その時には勝てなかった記憶が残っている。彼らはダイナミックに局面局面を戦ってきて、ゴールに結びつけるという戦いをしてくるので、分析する時間は1試合しか持てないが、彼らがやってくることを1試合でもできるだけ把握して、我々の力を最大限発揮できるように準備していきたいと思う」

―ベンチ入り枠よりも4人多くベンチ外で帯同するのは選手としては難しいと思うが、それを踏まえてもなお27人をグループとして帯同させることの意味をどう捉えているか。

「バックアップをスタートから完全に決めていることはなく、大体の構想はあるが、トレーニングを見て、コンディションを見た上で最終的に判断することで決めさせていただいている。バックアップという言葉がいいのかどうかはわからないが、リスク管理は必要で、いろんな予算もかかってくる中、リスク管理を協会の皆さんがバックアップしてくださるのは非常にありがたい。9月の活動は最後に怪我人が出たところがあるが、現実的に試合に支障がなかったのは、バックアップの選手を帯同させていただいているからこそ。ベンチ入りできる23人のメンバーを欠くことなく、勝利を目指して戦うことで常に23人の選手にベンチ入りしてもらいながら勝つ可能性を上げながらということで準備できている。試合での戦力としても、先ほどもお話しさせていただいた未来に向けての戦力アップという意味でもプラスで選手を招集させていただいていることは間違いなく日本サッカーの今の勝利と、日本サッカーの発展のためにという我々がいつも基本に置いている考えの中で2つに値する招集をさせていただいている」

―これまで攻撃的3バックを試して、9月シリーズでは三笘薫と伊東純也を起用していたが、この2人を起用した手応えと今後の2試合で期待したいことは。

「どの選手を起用していても最終的に同じ結果になったと思っているが、準備の段階で選手を選び、ピッチ上に送り込んだ選手が最高のパフォーマンスをしてくれたと思っている。名前が出た選手たちも最高の個々のパフォーマンスと、チームに貢献するパフォーマンスを発揮してくれたと思う。アグレッシブに勝利を掴み取りにいくという攻撃的な姿勢はこれまでどおり持ってもらいたいが、チームのコンセプトとして、攻撃に特徴のある選手がいい守備からいい攻撃にというところ、まず相手に攻めさせない、失点しない、そこから攻撃を仕掛けてチャンスを作るというところを献身的に、そして泥臭くやってくれたことがチームの良い結果につながったと思う。2試合目のバーレーン戦でいえば、ウイングバックで起用した選手がスタートの三笘、堂安、途中出場で中村敬斗と伊東純也というところ、攻撃的に非常に特徴を持っている選手たちが前半から相手が狙いを持って攻撃を仕掛けてくる中、個々の守備で勝ちながら攻撃につなげていくところを攻撃の選手が率先して、激しく厳しく、そして泥臭く献身的にチームのために戦ってくれたことが、チームの戦い方を具現化してくれたし、勝利という結果に結びつくチームへの貢献をしてくれた。攻撃的に行くことは忘れずとも、これまでやってきたいい守備からいい攻撃にということは、ただ自分たちがやりたいことだけでなく、相手のやりたいことを押さえながら勝って行くということで、10月シリーズからこの先はより強かに勝って行くこともチームとして準備してやっていきたいと思う」

―9月に比べるとアタッカーが減って、中盤の選手が増えたが、どのような理由があるのか。

「考え方に大きな違いはありません(笑)。いまの質問で言うと、完全に攻撃とか中盤とかを分けているのではなく、いろんなパズルを組み合わせるようにチーム編成をしている中、試合に向けてのパズルとしての想像で招集させてもらっている部分と、いろんな状況を考えた中でピースとして考えている。一人攻撃の選手が減って、一人中盤が増えたということもあるが、特徴を踏まえた上で我々の戦い方にハマる選手として招集した。FWが何人、MFが何人、DFが何人というのはあるが、毎回同じだとは思っていない。その時々の状況で代表の戦力になり得る選手ということだが、将来への期待枠というところで招集したりというのはバランスとして変わってくる。細かいところを見ていただき感謝しています」

―(山本ダイレクターへ)前回サウジアラビアに敗戦したことを受けて、暑熱対策で変えようとしていることは。

山本ダイレクター「今回は初戦がサウジアラビアということでヨーロッパの選手が多い中、距離、時差、暑熱のところでかなり落差のある厳しい環境になる。監督、フィジカルコーチ含めて万全の準備をしていただこうと思っている。普段はクラブでプレーしている選手をどれだけのミーティング、トレーニングの回数でまとめるかという点は9月シリーズで効果が出たと思う。代表にとって1回のミーティング、1回のトレーニングの価値が本当に大きなものになる。所属先の試合が土曜に終わる選手、日曜に終わる選手、移動や暑熱も含めて最大限のコンディションを出せる準備をした。アジアは東から西に広く、オーストラリア、インドネシアもあり、力を出せる環境をどれだけ整えられるかがW杯予選を勝ち抜いていくために本当に重要な視点になる。最大限現場の要求に応えられるようサポートしていただいているし、期待に応えられる準備をしたい」

―チャーター機などの支援は。

山本ダイレクター「かなりしていただいている。ヨーロッパから集まる人数が揃うところで早めに移動することであったり、今回はサウジアラビアまで近いので、第2戦のオーストラリアまでの時間が非常に重要になる。サウジアラビアからチャーター機で日本に戻り、早くトレーニングに移るという準備をしている。細かいことで言うといろいろと手を打っているが、1戦目を終えた後に速やかに日本に移動するところにチャーター機を使っている」

―キャプテンの遠藤航がリバプールでなかなか出場機会を得られていないが、9月のパフォーマンスも踏まえてどう見ているか。

「まずは一言で言うと、心配はしていません。試合数からすると、彼が公式戦に出ていないところは考えなければいけないと思うが、日常から世界選抜のようなチームメートとしのぎを削りながら高いインテンシティでトレーニングしているというだけでも、試合に向けてのコンディションは整えてこられていると思っている。もちろん試合に出られたほうがいいけれど、彼の日常は随時ピッチ状で見ているわけではないが、メディカルスタッフ、チームスタッフ、コーチングスタッフも含めて遠藤本人、クラブとやりとりをしながら彼のコンディションを把握して招集させていただいている。明らかにコンディションが悪ければ、27人を招集させてもらっているので変えることがあるのは遠藤一人だけでなく全ての選手に言えることだと思う。ただ彼はこれまで素晴らしい経験をしており、プレーの判断にいろんな引き出しがあり、その経験を使ってもらいながらプレーしてもらえれば全く問題はないと思う。現に9月の時も公式戦からすれば試合に出ていない状況だったが、日本も暑い、バーレーンはもっと暑い中でもコンディション的に問題はなかったし、ゲームコントロールをしながら適切な判断をしていたので心配していない。いまは長谷部コーチが加わってくれているが、長谷部コーチも現役時代に試合になかなか出られない中でも代表として戦ってきた経験がある中、彼なら十分にできると太鼓判を押していた。日本代表での経験は私自身も見させてもらっている中、全く心配はしていない」

山本ダイレクター「先ほどの質問で時差対策について付け加えたい。ヨーロッパの選手たちが時差が厳しい中、ヨーロッパ時間で食事ができるような準備をしている。選手たちが帰った時の選手のコンディションも重要なので、朝食を外して昼、夕方、夜が向こうの日程に合うような工夫をサポーティングスタッフがしてくれている。ヨーロッパ時間を取り入れて、それで帰れるようなスケジュールを組んでいることは効果が出ていると思う」

(取材・文 竹内達也)