ぐにゃぐにゃと曲げられる非シリコン製RISC-V CPU「Flex-RV」をペンに巻き付けながら動作させるデモ映像が公開中
イギリスの半導体メーカー・Pragmatic Semiconductorがハーバード大学などと共同で、ぐにゃぐにゃと曲げられるCPU「Flex-RV」を開発しました。このチップは一般的なシリコンチップとは違って柔軟な素材で作られており、Pragmatic Semiconductorは実際にFlex-RVをペンに巻きつけながら動作させる映像を公開しています。
Bendable non-silicon RISC-V microprocessor | Nature
A Bendable Non-silicon RISC-V Microprocessor - Pragmatic Semiconductor, Qamcom, Harvard - YouTube
Flex-RVは、オープンソースの命令セットアーキテクチャであるRISC-VをベースとするServ CPUコアを基にしています。このServ CPUはRV32E命令セットアーキテクチャを採用しており、32ビットの演算を1ビットずつ順次処理する「ビットシリアル方式」を採用しています。
Flex-RVのチップサイズは9mm×6mmで、1チップに2つのコアが搭載されています。動作周波数は平均52kHz・最大60kHzと比較的低速ですが、組み込み用途に応用するには十分であるとPragmatic Semiconductorは述べています。消費電力は3V・5.8mWと非常に低く、その99%が静的消費電力だとのこと。
Flex-RVは、インジウム・ガリウム・亜鉛酸化物(IGZO)薄膜トランジスタ技術を使用して、柔軟なポリイミド基板上に製造されています。この技術により、チップは80μm未満の厚さを実現し、5mm未満の曲げ半径で機能することができます。
Pragmatic Semiconductorはムービーで、細いペンにぐるぐると巻き付けたFlex-RVで「Hello World!」を表示する簡単なコマンドを実行しています。
また、Flex-RVには、機械学習用のハードウェアアクセラレータが組み込まれています。このアクセラレータは8×4と4×4の乗算器を組み合わせたSIMD(Single Instruction Multiple Data)エンジンで構成されており、行列演算や活性化関数の後処理を高速化します。さらに、メモリアクセスにはカスタムされたシリアルペリフェラルインターフェース(C-SPI)が使われており、79本のRAMポートを4本のSPIポートに変換し、チップの外部接続を簡素化しているそうです。
Flex-RVは製造コストが非常に低く、柔軟で薄い素材で作られていることから、ウェアラブルデバイスや使い捨ての医療機器、商品のパッケージへの組み込みなどへの応用が期待できます。研究チームは、Flex-RVは従来の電子部品に依存しない新しいコンピューティングの可能性を示すものであり、オープンスタンダードの32ビット非シリコンマイクロプロセッサの時代を切り開くものだと論じました。
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