家にあるMT車、「AT免許」で運転したら違反? でも「無免許」にはならないらしい、なぜ? 聞き慣れない「免許条件違反」 元警察官が解説
AT限定免許でMT車を運転したくなったら…どうなる?
運転免許に「AT限定」の条件が付いていると、MT車の運転はできません。
では、もしAT限定免許でMT車を運転してしまった場合、どのような違反に該当するのでしょうか。
運転免許証には氏名や住所、免許の有効期間、取得している免許の種類など、さまざまな情報が記載されています。
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また表面の中央部分には「免許の条件等」の欄があり、運転者の身体の状態や運転技能などに応じて運転できる車両を限定したり、必要な条件を付けたりしています。
たとえば普通免許に「普通車はAT車に限る」という条件が付されていれば、普通車のうちAT(オートマチック)車のみを運転でき、MT(マニュアル)車は運転できません。
加えて「中型車は中型車(8t)に限る」という条件の場合は、運転できる車両が車両総重量8トン未満・最大積載量5トン未満・乗車定員10人以下のタイプに限定されます。
その他にも「眼鏡等」の条件が付いていれば、運転の際にメガネやコンタクトなど、視力を矯正するアイテムを装着する必要があります。
警視庁のウェブサイトによると普通第一種免許の場合、原則として視力の条件は「両眼で0.7以上、かつ、一眼でそれぞれ0.3以上」と決められています。
では、もしAT限定免許でMT車を運転する、眼鏡等の条件があるのにメガネやコンタクトをせず運転するなど、免許の条件を守らない行為をした場合はどのような違反に当たるのでしょうか。
実はこのような行為は「免許条件違反」という交通違反に該当し、罰則として3か月以下の懲役または5万円以下の罰金が定められているほか、検挙されると違反点数2点、普通車で7000円の反則金が科されます。
AT限定免許でMT車を運転するのは「無免許」じゃないの? 免許条件違反」との違いはなに?
ドライバーの中には「無免許運転に当たるのでは?」と考える人もいるかもしれません。
実は運転が許可されていない車種を運転すると「無免許運転」、運転が許可されている車種でも運転の条件を満たしていないと「免許条件違反」になるという違いがあります。
具体的には普通免許で大型自動車を運転する、第一種免許しか持っていないのにタクシー・バスなどの第二種免許が必要な自動車を運転するといった、免許を受けずに運転する行為が無免許運転に当たりま
す。
その一方で、免許条件違反はAT限定の普通免許を持っている人が普通車のMT車を運転するというように、「免許自体は受けているものの運転条件を満たしていない」場合に該当します。
このような違いから、免許条件違反は無免許運転よりも軽い罰則・点数となっています。
なおAT限定の普通免許を持っている人が普通車のMT車を運転する場合には、「限定解除」の申請手続きをする必要があります。
限定解除とは、その名称のとおり免許に限定条件を付された人が条件を外す手続きのことです。
一般的には自動車教習所の「AT限定解除コース」で4時限以上の技能教習を受け、技能審査に合格してから警察署・免許センターなどで限定解除の手続きをすれば、AT限定の条件が解除された免許証が交付されます。このコースにかかる費用は教習所によって異なるものの、5〜10万円前後が相場のようです。
また教習所に通わず、運転免許試験場で直接技能審査を受けて合格し、限定解除の申請手続きをおこなうことも可能です。
この場合は教習所に通わないため費用は抑えられますが、私有地などで事前にMT車の運転を練習しておいた方が良いでしょう。
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新車に占めるMT車の割合は1%程度と非常に低く、最近はAT限定免許だけでも特に支障はありませんが、業務でMT車を運転する、MT車の操作感覚が気に入っているといったユーザーも少なくありません。