バブルの時代は日本人が、中国がGDPで世界2位に付けるようになってからは主に中国人が、個人向けの贅沢(ぜいたく)品をたくさん買い込む様子が見受けられます。この点についてミシガン大学のマーケティング教授であるラジーブ・バトラ氏は、「アジア諸国は、質素倹約を唱える儒教や仏教といった伝統的な価値観や宗教感が深く根付いているはずではないのか?」と考え、調査しました。

Unpacking collective materialism: how values shape consumption in seven Asian markets | Journal of International Business Studies

https://link.springer.com/article/10.1057/s41267-023-00661-8

Why do Asian consumers love luxury shopping?

https://phys.org/news/2024-09-asian-consumers-luxury.html

アジア太平洋地域の国々は個人向け贅沢品の世界最大の消費地として知られ、こうした国々の人はニューヨークやミラノ、パリといった都市でも買い物をして高級品産業の目覚ましい成長に貢献しています。

しかし、こうした国々には儒教や仏教の考え方が浸透していて、仏教で言うところの凡夫の自覚を持ち、質素倹約、小欲知足の精神が重視されているはずであり、考え方と行動が矛盾しています。

この一見相反する現象に目を付けたバトラ教授は、香港、韓国、日本、シンガポール、インドネシア、マレーシア、タイの市場を調査し、18歳から64歳までの消費者3000人以上から得たデータを用いて、これらの市場において何が重視されているのかを確かめました。

その結果、こうした市場の人々の間には宗教的な価値観に加えて「集団主義」が重要な役割を果たしていることが判明。集団主義社会では、人々はしばしば社会集団の意見に影響され、仲間に好印象を与えて集団に溶け込むために高価なものや自分の地位を高めるものを購入することがありますが、こうした「集団の中でどう振る舞うか」を気にする気持ちが宗教的価値観を上回り、贅沢品の購買につながっている可能性があることがわかりました。



一般的に、西洋の個人主義文化では「見せびらかし」や「物質主義的なもの」として否定的に捉えられる行為が、集団主義文化では「集団の中で地位を確立するもの」として支持される可能性が高いとバトラ教授は考察。

この考察を踏まえ、バトラ教授は「地位を高める品を宣伝するときにターゲットとなるのは若い世代だと考えられるかもしれませんが、より宗教・伝統を重視する年配の消費者は、若い世代以上に社会集団との結びつきが強いため、地位向上をもたらす品を受け入れやすい可能性があります」と述べました。