Photo by Gage Skidmore https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/14800476884

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オリバー・ストーン監督による『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(1994)は、バイオレンス描写やミュージックビデオのような映像とあわせて、若かりしロバート・ダウニー・Jr.の狂気をはらんだ演技も印象に残る一作だ。米国での公開から30年を祝したのインタビューにて、当時のストーンがダウニー・Jr.のアドリブ演技に苦言を呈していたことを振り返っている。

連続殺人犯ミッキー(ウディ・ハレルソン)とマロリー(ジュリエット・ルイス)の逃避行やラブストーリーを描くとともに、2人をヒーローのように担ぐメディアや、そこに熱狂する市民の歪さをあぶりだした『ナチュラル・ボーン・キラーズ』。自らの手がける番組「アメリカン・マニアックス」の高視聴率を狙って、ミッキー&マロリーに接近するのが、ダウニー・Jr.演じるTVキャスターのウェイン・ゲイルだ。

撮影最後の2か月間、ダウニー・Jr.はハイになっているか、酔っぱらっているか、居眠りしているかだったそう。今でこそアイアンマン役などで老若男女に親しまれるスターとなったダウニーだが、当時は薬物依存に苦しんでいた時期でもあり、「目覚めていたのは“アクション!”と“カット!”の間だけだった」と本人も振り返っている。

終盤のあるシーンで、ダウニー・Jr.は、血まみれになった白シャツの裾をズボンのジッパーから引っ張り出し、血まみれのペニスに見立てるアドリブを披露したそう。すると、ストーンは「おい、やり過ぎだ! 行き過ぎだぞ、ロバート。私の映画を台無しにするのか!バカなイチモツのアイデアは忘れなさい、デタラメなドタバタ喜劇じゃないんだ」と苦言を呈したのだそう。

ところが、のちにダウニー・Jr.が撮影現場に初めてシラフで現れた際、ストーンはこの発言を撤回することになったようだ。ゲイルがミッキーとマロリーに「殺さないでくれ」と命乞いするシーンで、シャツの裾がズボンに入っており、ジッパーも完全に上がっていることにストーンは気づいたのだ。

「ちょっと、ちょっと待って。イチモツのやつをもう一度見せてくれ。ハーフインチ下げてくれ。」

ダウニー・Jr.はストーンに従い、ズボンに手を突っ込むと、ジッパーからシャツの裾をほんの少し引っ張り出したそう。ストーンは「よろしい、さあやろう」と頷き、このアドリブは形を変えて本編に採用されることとなった。完成版の映画でも、その様子はほんのわずかに見ることができる。

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