ここ数年、スマートフォンの世界ではAIの活用が大きく進んでいる。写真から不要物を削除したり背景を変える編集機能、音声認識による文字起こしなどは、もはや当たり前のものとなりつつある。さらに今後は、Appleの「Apple Intelligence」やGoogleの「Gemini」など生成AIがOSに取り込まれることで、これまで以上にAIを活用した機能が活用されるようになりそうだ。

 そのAIの波は、PCにも押し寄せている。2023年末にIntelから登場した「Core Ultraプロセッサー」は、AI処理に特化した処理エンジン「Neural Processing Unit(NPU)」を内蔵。Core Ultraプロセッサー搭載PCは「AI PC」と銘打って発売され、大いに注目された。

 そして2024年6月には、MicrosoftがAI PCの新基準を発表。AIコンパニオン「Copilot」の強化に加えて、生成AIを活用した新機能を提供するとともに、それらAI機能を活用するために必要となるPCのシステム要件を策定。その要件を満たすPCを「Copilot+ PC」として認定すると発表した。

 Copilot+ PCは、すでに認定製品がいくつか発売済みとなっており、読者の中には実際に入手して活用している人もいるかもしれない。ただ、Copilot+ PCと聞いても、まだピンとこない人も多いのではないだろうか。そこで本稿では、改めてCopilot+ PCとはどういったPCのことを指すのか、解説したいと思う。

Microsoftが定めるAI PCの新基準「Copilot+ PC」

「Copilot+ PC」として認定されるにはNPU内蔵プロセッサーの搭載が絶対条件

 まずはじめに、Copilot+ PCとはどういったPCなのか見ていこう。

 Copilot+ PCは、Microsoftが提唱するAI PCの基準だ。そのため、Copilot+ PCとして認定されるには、Microsoftが定めるシステム要件を満たす必要がある。その最小システム要件は、以下に示したとおりとなっている。

Microsoftが定めるCopilot+ PCの最小システム要件 プロセッサ

互換性のあるプロセッサまたはシステム オン チップ (SoC)。承認された一覧には、ニューラル処理ユニット(NPU)と40兆以上の1秒あたりの操作 (TOPS) が組み込まれているプロセッサまたはSoCのみが含まれます

メモリ

16GB DDR5/LPDDR5

ストレージ

256GB SSD/UFS

 このうち、メモリやストレージについては定められた容量以上であればいいためわかりやすい。それに対して、わかりにくいのがプロセッサだ。“互換性のあるプロセッサまたはSoC”と言われてもピンとこないかもしれないが、この“互換性”という部分が大きなポイントとなっている。

 Microsoftが定める互換性とは「AI処理能力」のこと。具体的には、1秒あたり40兆回以上のAI演算が可能であることが求められている。Copilot+ PCを紹介する記事で「40TOPS」という表記を見かけたことがあるかもしれない。このTOPSとは「Trillion Operations Per Second」の頭文字を取ったもので、1TOPSは1秒間に1兆回の演算が行えることを示す。つまり40TOPSとは1秒あたり40兆回の演算が可能ということになる。

 そして、40TOPSの演算能力を備えるニューラル処理ユニット(NPU)を内蔵するプロセッサの利用が求められている。つまり、Copilot+ PCの最小システム要件を満たすには、40TOPS以上のNPUを内蔵するプロセッサの搭載が絶対条件となるわけだ。

Copilot+ PCには、40TOPS以上のAI演算が可能なNPUを内蔵するプロセッサの搭載が求められる

 ところで、Copilot+ PCのキーボードには、直接AIコンパニオン「Copilot」を起動するための「Copilotキー」を搭載しており、この点も特徴となっているいる。ただ、このCopilotキーはCopilot+ PCに準拠しないPCのキーボードも搭載しており、Copilot+ PCだけのものではない。

Copilot+ PCのキーボードに搭載される「Copilotキー」は、Copilot+ PC以外のPCのキーボードにも搭載可能

初代Core UltraプロセッサーはCopilot+ PCの基準を満たせない

 8月末の時点で、Copilot+ PCの要件を満たすプロセッサとしては、Qualcommの「Snapdragon X Plus」および「Snapdragon X Elite」が存在している。実は、先に示した最小システム要件のプロセッサの項目は、MicrosoftがCopilot+ PCを発表した段階のもの。現在は「互換性のあるプロセッサまたはシステム オン チップ(SoC)。これには現在、Snapdragon X PlusとSnapdragon X Eliteが含まれています。この一覧は、より多くのオプションが利用可能になると定期的に更新されます。」と変更されている。

 そして、実際にCopilot+ PCとして販売されているPCについても、8月末時点ではこのいずれかのプロセッサを搭載する製品しか存在しない。

Copilot+ PCの要件を満たす、Qualcommのプロセッサ「Snapdragon X Elite」

Snapdragon X PlusまたはSnapdragon X Eliteを搭載するMicrosoftの「Surface Pro」および「Surface Laptop」は、Copilot+ PCとして発売

 2023年末に登場して話題となったAI PCに搭載されているIntelの「Core Ultraプロセッサー(開発コードネーム“Meteor Lake”)」。Intel初のNPU内蔵プロセッサであり、AI処理を高速にこなせる点が大きな特徴とされた。しかし、その内蔵NPUの処理能力は11TOPSと、40TOPSを大きく下回っている。そのため、Core Ultraプロセッサー搭載PCはCopilot+ PCとして認定されないというわけだ。

2023年末に登場したIntelの「Core Ultraプロセッサー」は、搭載NPUの処理能力が11TOPSのため、搭載PCはCopilot+ PCとして認定されない

 また、AMDは2023年に投入したプロセッサ「Ryzen 7000」シリーズからNPUを内蔵。ただこちらも処理能力が10TOPSにとどまる。2024年初頭に登場した後継の「Ryzen 8000」シリーズでは、処理能力を16TOPSに強化したNPUを内蔵するが、どちらにしてもCopilot+ PCの要件を満たせず、搭載PCもCopilot+ PCとして認定されることはない。

 そういったこともあって、8月末の時点でCopilot+ PCとして認定されたPCは、プロセッサにSnapdragon X PlusまたはSnapdragon X Eliteを搭載する製品しか存在しないというわけだ。

 ただ、Intel、AMDともCopilot+ PCの要件を満たすプロセッサを用意している。

 AMDは、6月に最新プロセッサ「Ryzen AI 300」シリーズを発表。こちらには処理能力が50TOPSのNPUを内蔵しており、Copilot+ PCの要件を満たしている。

 Intelは、9月3日(現地時間)に「Core Ultra モバイル・プロセッサー(シリーズ2)(開発コードネーム“Lunar Lake”)」を発表。こちらも処理能力が40TOPSまたは48TOPSのNPUを内蔵と、Copilot+ PCの要件を満たしている。

 これら、Ryzen AI 300シリーズやCore Ultra モバイル・プロセッサー(シリーズ2)を搭載するPCが登場することで、Copilot+ PCとして認定されたPCが一気に拡充し、選択肢が大きく拡がることになるだろう。

50TOPSのNPUを内蔵するAMDのプロセッサ「Ryzen AI 300」シリーズ

Intelの「Core Ultra モバイル・プロセッサー(シリーズ2)」は40TOPSまたは48TOPSのNPUを内蔵

Ryzen AI 300シリーズやCore Ultraモバイル・プロセッサー(シリーズ2)搭載PCのCopilot+ PC認定は11月に

 ところで、先ほど紹介したAMDの最新プロセッサ、Ryzen AI 300シリーズを搭載するPCは、8月からすでに販売が始まっている。しかし、8月末時点でRyzen AI 300シリーズを搭載するPCにCopilot+ PCとして認定された製品は1つもない。プロセッサだけでなく、メモリや内蔵ストレージの要件を満たしていても、だ。

 9月末以降に登場予定の、IntelのCore Ultra モバイル・プロセッサー(シリーズ2)搭載PCについても、当初は同様の対応となるようだ。

ASUSが発売する「Zenbook S 16 UM5606WA」などRyzen AI 300シリーズ搭載PCは、8月末時点でCopilot+ PCとして認定されていない

 なぜこういった対応となっているのか。8月上旬にMicrosoftに確認した段階では、「Ryzen AI 300シリーズは、現在Copilot+ PCで必要とされるパフォーマンスが問題なく発揮されるか検証中で、確認が取れた段階でCopilot+ PCとして認定する」との回答が得られていた。その後、Microsoftは9月3日(現地時間)に、Ryzen AI 300シリーズとCore Ultraモバイル・プロセッサー(シリーズ2)搭載PCについて、11月にCopilot+ PCとして利用可能になると公表した。

 これまでWindowsは、定められた最小システム要件を満たしていれば無条件にインストールし利用できた。そのため、ハードウェア的には最小システム要件を満たしているのにCopilot+ PCとして認定されないという今回の対応には、少々違和感を覚える。

 Microsoftは、Copilot+ PCとしてSnapdragon X Plus/Elite搭載の「Surface」シリーズを投入している。うがった見方をすると、それらCopilot+ PC準拠のSurfaceを発売している関係で、Snapdragon X Plus/Elite以外のプロセッサを搭載するPCのCopilot+ PC認定を先送りにしているのでは、とも思えてしまう。

 実際にはそうではないにしても、システム要件を満たしているのにCopilot+ PCとして認定されないのは残念だ。とはいえ、11月にはCopilot+ PCとして利用可能になると公表されたことは、今後PCの購入を考えている人にとって安心材料と言える。

8月末時点で手に入れられるのは、Snapdragon X Plus/Elite搭載PCのみ

 ここまで説明したように、Copilot+ PCに認定されるPCは、11月まではプロセッサとしてSnapdragon X PlusもしくはSnapdragon X Eliteを搭載する製品のみとなる。8月末時点で発売済みの製品は、以下にまとめたとおりだ。

8月末時点でCopilot+ PCとして販売されている製品 製品名 搭載プロセッサ 日本マイクロソフト Surface Pro (第 11 世代) Snapdragon X Plus Snapdragon X Elite Surface Laptop (第 7 世代) 13.8インチ Surface Laptop (第 7 世代) 15インチ 日本エイサー Swift 14 AI Snapdragon X Elite ASUS Vivobook S 15 S5507QA Snapdragon X Elite Dell XPS 13 Snapdragon X Elite Inspiron 14 Plus Snapdragon X Plus Snapdragon X Elite" Latitude 7455 日本HP OmniBook X 14-fe Snapdragon X Elite EliteBook Ultra G1q レノボ・ジャパン ThinkPad T14s Gen 6 Snapdragon X Elite Yoga Slim 7x Gen 9

 また、8月末時点ではCopilot+ PCとして認定されていないものの、11月以降にCopilot+ PCとして利用可能となる予定の、AMDのRyzen AI 300シリーズ搭載PCも、以下の製品が販売されている。

 この他、IntelのCore Ultra モバイル・プロセッサー(シリーズ2)搭載PCは、9月末以降に登場し、11月以降にCopilot+ PCとして利用可能となる予定だ。

8月末時点で販売されているAMD Ryzen AI 300シリーズ搭載製品 製品名 搭載プロセッサ ASUS Zenbook S 16 UM5606 Ryzen AI 9 HX 370 Vivobook S 16 M5606 Vivobook S 14 M5406 ProArt P16 H7606 ProArt PX13 HN7306 Zephyrus G16 GA605 Gaming A14 FA401 日本HP OmniBook Ultra 14-fd Ryzen AI 9 HX 375
Ryzen AI 9 365

Copilot+ PCで何ができるの?

 ここからは、Copilot+ PCで何ができるのか見ていこう。なお、実際に試したCopilot+ PCの機能については、ASUSより借用したCopilot+ PC「Vivobook S15(S5507)」を利用している。

今回、Copilot+ PCの機能は、ASUSより借用したCopilot+ PC「Vivobook S15(S5507)」を利用して試した

 Microsoftは、Copilot+ PCで利用できるAI機能として、「リコール」「コクリエイター」「ライブキャプション」「Windows Studio エフェクト」「イメージクリエイター/リスタイル」などの機能を用意している。

 この中で、Copilot+ PCの目玉的なAI機能が「リコール」だ。利用しているPCの表示画面のスナップショットを特定のタイミングで撮影してPC内にのみ保存し、プロセッサ内蔵のNPUを利用したAI解析でその内容をインデックス化。その情報から利用したファイルやアクセスしたホームページのURL、やり取りしたメール、どういった作業を行っていたのか、などの過去の情報を検索し見つけ出せる機能だ。例えば、「棒グラフ」と入力すれば、過去に作成したり表示した棒グラフが検索され一覧表示される、といった具合だ。

 これだけを聞くとかなり便利そうな機能だが、表示画面のスナップショットを定期的に撮影するということで、プライバシーやセキュリティの懸念が指摘され、Copilot+ PC登場同時の提供を断念。今後、10月にWindows Insider向けにプレビュー版が公開された後に一般ユーザーへの提供を開始する予定となっている。

Copilot+ PCの目玉的なAI機能「リコール」。10月よりプレビュー版を公開し、その後一般ユーザーへの提供を開始する予定

【Microsoftが公開しているリコールの動画】

 次に「コクリエイター」。こちらは「ペイント」アプリに追加された画像生成機能だ。ペンや指で簡単なラフスケッチを入力するとともに、どういった画像にしたいのかを文字で追加情報として入力すると、ラフスケッチと文字をもとにAIが画像を生成する。生成された画像が気に入らなければ、スケッチに描き加えたり、文字情報を追加するなどして修正画像の生成も可能。

 絵心がなくてもそれなりの画像を生成できるのは、なかなか楽しい。なお、画像生成はプロセッサ内蔵のNPUを利用して行われるが、入力した文字の解析は、有害、攻撃的、不適切なコンテンツの作成を防ぐためにクラウドで行われるため、利用時にはインターネットへの接続が必須となる。

ペイントアプリに追加された画像生成機能「コクリエイター」

ペイントアプリを起動して、右上の「Cocreator」ボタンを押すとコクリエイターが起動する

左キャンバスにラフ絵を記入して、右ダイアログボックスに画像のイメージを文章で入力すると、右に画像が生成される

生成された画像をもとに説明文章を追加すると、より高精度な画像を生成できる

 「ライブキャプション」は、映像などの音声をリアルタイムで認識し文字で表示する、Windows 11で利用可能な機能だが、Copilot+ PCではリアルタイムの音声文字表示だけでなく、日本語を含む44言語をリアルタイムで英語に翻訳して表示する機能が追加された。

 ただし現時点では、翻訳できるのは英語のみとなっている。英語やそれ以外の言語を、日本語もしくは英語以外の言語に翻訳できないのは残念だ。今後対応予定となっているので、早い時期での対応を期待したい。

「ライブキャプション」では、日本語を含む44言語をリアルタイムで英語に翻訳して表示できる

 「Windows Studio エフェクト」は、カメラで撮影した映像に対してリアルタイムでエフェクトを加える機能だ。こちらはCore Ultraプロセッサー搭載PCに登場に合わせて提供が始まった機能で、カメラで捉えた人物を中央にトリミングする「自動フレーミング」、人物の目線をカメラ目線に補正する「アイコンタクト」、背景をぼかす「背景の効果」をCore UltraプロセッサーのNPUで処理して行う。そしてCopilot+ PCではこれら機能に加えて、画面上の文字を読んでいる場合でもカメラ目線に補正する「プロンプター」と、肌の質感を補正する「クリエイティブフィルター」が新たに利用可能となった。

 リモート会議を行う場合などに、これら映像のリアルタイムエフェクトをNPUで処理することでCPUコアの負荷を軽減し、システム全体のパフォーマンスを高められる。

「Windows Studio エフェクト」に、目線補正に「プロンプター」、肌の質感を補正する「クリエイティブフィルター」が追加された

 「イメージクリエイター/リスタイル」は、「フォト」アプリに追加される機能。イメージクリエイターでは、文字による説明だけで画像を生成したり画像の編集が可能。作りたい画像の概要を文字で入力すれば、それに沿った画像が作成される。

 また特定の写真を右クリックし、メニューから「編集」を選択すると、リスタイルが利用できる。リスタイルでは、元の写真や画像を、文字で指示したり、一覧から選択したスタイルに変換するというものだ。

 なお、こちらもコクリエイター同様に文字内容の解析は、有害、攻撃的、不適切なコンテンツの作成を防ぐためにクラウドで行われるため、利用時にはインターネットへの接続が必須となる。

「フォト」アプリに追加される画像生成機能「イメージクリエイター/リスタイル」

フォトアプリを起動して、左メニューの「Image Creator」を選び、右ダイアログボックスに「多くの人が行き交う夕方の大都市の繁華街」と入力するだけで画像が生成された

フォトアプリから特定の写真右クリックし、メニューから「編集」を選択

編集アプリ右上の「リスタイルイメージ」をクリックすると、リスタイルが利用できる

スタイルで「印象派」を選ぶと、このような画像が生成された。変更したいスタイルの概要をダイアログボックスに文章で入力してもいい

 これらがCopilot+ PCで利用できる主なAI機能となる。現時点では、リコールが利用できなかったり、ライブキャプションのリアルタイム翻訳が英語のみとなっているなど、全機能を利用できる環境が整っておらず、活用できるのはWindows Studio エフェクトや、コクリエイター、イメージクリエイター/リスタイルなどの画像生成機能のみのため、活用の幅も拡がらない印象だ。リコールは10月以降に利用可能になるほか、ライブキャプションの日本語翻訳もいずれ対応するはずだが、Copilot+ PCの本領が発揮されるには、まだ少し時間がかかりそうだ。

Copilot+ PCはどれを買えばいいの?

 8月末時点で販売されているCopilot+ PCは、先にも紹介したように、プロセッサにSnapdragon X PlusまたはSnapdragon X Eliteを搭載した製品のみとなっている。そのため、いち早くCopilot+ PCを利用したいと考えているのであれば、その中から選べばいいだろう。

 ただし、Snapdragon X Plus/Elite搭載PCには、互換性という点で懸念がある。

 大多数のWindows PCは、IntelまたはAMDのプロセッサを搭載しているが、それらは「x86/x64(x86-64)」アーキテクチャに基づいたプロセッサで、利用されているアプリもほとんどがx86/x64アーキテクチャ上で動作するように設計されている。

 それに対しSnapdragon X Plus/Eliteは、「Arm」アーキテクチャに基づいたプロセッサだ。MicrosoftはArm対応のWindows 11やMicrosoft 365、Edgeなどのアプリを用意しており、Adobeをはじめ多くのソフトウェアメーカーもArm対応のアプリ提供を表明したり、実際に提供している。しかし、大多数のWindowsアプリ資産であるx86/x64対応アプリは、対応アーキテクチャが異なるために、そのままではArm版Windows 11で動作しない。

 そこでArm版Windows 11では、x86/x64アプリを動作させるために「Prism」と呼ばれるトランスコード機能を用意し、そちら経由で利用できるようにしている。

 実際に使ってみると、確かに多くのx86/x64アプリがPrism経由でArm版Windows 11でも動作し、ほぼ問題なく利用できる。ただし、中には正常に動作しないアプリも残念ながら存在している。例えば日本語変換アプリの「ATOK」は、一部アプリで文字が入力できなかったりする。仕事での利用が欠かせないアプリが正常に動作しない可能性も排除できないため、そのあたりに不安を感じるならお勧めしづらいのが正直なところだ。

 もちろん、とにかく今すぐにCopilot+ PCを使って新しいAI機能を試したいと考えているなら、発売中のCopilot+ PCを購入するべきだ。しかし、そういった人以外は、AMDのRyzen AI 300シリーズや、今後登場予定のIntelのCore Ultra モバイル・プロセッサー(シリーズ2)搭載PCを待つのもありだろう。

 どちらにしても、今後はWindowsだけでなく様々なアプリがAI機能を取り込み、プロセッサ内蔵のNPUを活用するようになっていくと考えられる。そのため、これからPCを購入しようと考えているのであれば、Copilot+ PCはもちろん、NPUを内蔵するプロセッサを搭載しているかどうかをしっかりチェックしたうえで、製品を検討してもらいたい。