WBO世界バンタム級タイトルマッチ、比嘉大吾に判定勝ちした武居由樹(右)【写真:中戸川知世】

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WBO世界バンタム級タイトルマッチ

 ボクシングのWBO世界バンタム級(53.5キロ以下)タイトルマッチ12回戦が3日、東京・有明アリーナで行われ、王者・武居由樹(大橋)が同級1位・比嘉大吾(志成)に3-0の判定勝ち(114-113×2、115-112)を収めた。武居は初防衛に成功。比嘉は6年5か月ぶりの世界戦だったが及ばなかった。強打が売りのKOパンチャー同士が激闘。戦績は28歳の武居が10勝(8KO)、29歳の比嘉が21勝(19KO)3敗1分けとなった。

 初回から緊張感ある対戦となった。6年5か月ぶりの世界戦となった比嘉が拳を振り回し、武居に襲い掛かると会場はどよめきに包まれた。2回、3回も両者が激しい打ち合いを見せた。4回、比嘉が猛攻。武居をコーナーに追い詰めてラッシュを浴びせ、再び観客を熱狂させた。パンチを顔面に浴びた武居だったが、ダメージを感じさせない動きで試合を継続した。

 激闘は続き、6回には観客席で「大吾」コールと「武居」コールの応酬となった。比嘉はこのラウンドで武居の有効打を浴び、右目下をカット。武居は圧力をかけてくる比嘉の攻撃を上手くいなし続けた。9回、比嘉は武居をロープ際に追い詰め、接近戦で連打。10回、今度は武居が比嘉の有効打で左目上をカットした。

 11回、残り1分を切ったところで武居がダウン。武居はスリップであると抗議したが、認められなかった。12回、比嘉の動きが止まり、防戦一方に。武居が猛攻を浴びせるも決着はつかず、試合は判定にもつれ込んだ。会場は両者に拍手。勝者の武居は名前がコールされると、感極まった表情を見せた。

 武居はリングインタビューで「すみません、自分の中では全然、この勝ちに納得できていなくて……でも大吾さんと最高の試合ができてよかったです。本当にありがとうございました」と話した。比嘉については「本当に打たれ強いし、気持ちも強くて、前に出てきて、パンチも強くて。自分がやられたくないことをいっぱいやられた。凄く強いファイターでした。本当に感謝しています」と敬意を込めて話した。

 ダウンの場面については「自分の中ではダウンかわからないけど、ダウンになってもおかしくないパンチのもらい方をしていたので、自分が悪いです。でも、大吾さんのおかげでまだまだ上に行けるなと思えるので、感謝しています。まだまだ頑張ります」と振り返った。

「本当にきつい試合をできて、もっともっと強くなれると思った。でも本当、反省点ばかりです。まだまだ頑張ります、本当にすみません」と勝ったにもかかわらず“謝罪”。「大吾さんと最高の試合ができて本当によかった。まだまだこれからも頑張ります。最後に、10月の天心君頑張ってください。応援しています」と那須川天心についてもコメントした。

 武居は育ての父として慕う格闘技ジム「POWER OF DREAM」の古川誠一会長と二人三脚でK-1世界王者に。大橋ジムでボクシング転向後は、元世界3階級制覇王者・八重樫東トレーナーに師事し、21年3月にボクシングデビューした。今年5月の東京ドーム興行で世界初挑戦し、ジェイソン・マロニー(オーストラリア)に判定勝ち。日本人初のK-1とボクシングの両方で世界王者になった。

 15戦連続KO勝ちの日本記録を持つ比嘉は18年4月に世界戦では日本人初の体重超過を犯し、2度防衛したWBC世界フライ級王座を剥奪。資格停止処分を経て1敗したが、再起後4連勝で6年5か月ぶりの世界戦にたどり着いた。比嘉を指導する野木丈司トレーナーの階段トレーニングには、過去に武居と師匠の八重樫トレーナーも参加。親交が深い戦友のような間柄だが、リングで火花を散らした。

 バンタム級は武居のほか、WBAに井上拓真、WBCに中谷潤人、IBFに西田凌佑が就き、全4つの王座を日本人が独占。拓真は10月13日に元日本王者・堤聖也と3度目の防衛戦を予定し、那須川天心も同級で世界獲りを見据える。

 試合はセミファイナル。メインイベントでは、世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)が元IBF王者TJ・ドヘニー(アイルランド)と4団体防衛戦を行う。

(THE ANSWER編集部)