「SWBC JAPAN東北」主催の野球教室の様子【写真:川浪康太郎】

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「チーム、小学校単位」の部員数確保に苦慮…“遊び”を入れた野球教室の存在意義

 野球の競技人口が減少の一途をたどる昨今、少年野球チームは選手確保に向けた一手を模索している。8月17日、宮城県仙台市内で「SWBC JAPAN東北」主催の野球教室が開催された。15人ほどの野球未経験者を含む小学生75人が参加。台風7号接近の影響で急遽、会場が屋外から体育館へ変更となったが、子どもたちは終始笑顔で野球を楽しんでいた。そこには、競技人口増加のヒントが隠されていた。

「SWBC JAPAN」は草野球チームの社会人選手で構成する団体。軟式野球をプレーするだけでなく競技の普及、国際化を目指しており、関東・関西・東海・東北の4エリアで活動している。

 企画や会場の確保などは「SWBC JAPAN東北」代表で、仙台六大学野球連盟付属審判部長も務める坂本健太さんが中心となって行い、所属選手らが指導にあたった。また同メンバーで野球YouTuberのトクサンが東京から、大学軟式前日本代表監督で中京学院大監督の小野昌彦さんが岐阜から駆けつけた。

 坂本さんは「一番は野球人口を少しでも増やしたいという思い。子どもが野球をやる場所が減っているので、誰かがつくらないといけない。結果だけを求める野球ではなくて、本来の楽しく、ポジティブになれる野球を知ってもらいたい」と開催の意図を明かす。

 その言葉通り、景品が当たるストラックアウトゲームや、班ごとに全員でノーエラーを目指す「ノーエラーチャレンジ」といった“遊び”を取り入れたプログラムが多数設けられた。また、野球未経験者に対しても手をバット代わりにしてボールを飛ばす体験をしてもらうなど、工夫を凝らしたアプローチをかけた。

「『野球をするとこうなる』という未来図を可視化しなければ」

 野球教室に参加した少年野球チームの指導者からはさまざまな声が聞かれた。泉ダイヤモンドキッズの3年生以下を指導する森修一さんは、「今は土日のコンテンツが野球以外にもたくさんある。その中で野球を選んでもらうためには、試合や練習を体験させるだけでなく、大人が子どもに野球を好きになってもらうアイデアを出すことが大事になる。少年野球チームだけではネームバリューが足りないというのであれば、トクサンのような方を呼んで興味を持ってもらうことも必要」と力を込める。

 トクサンはメーンチャンネル「トクサンTV」が登録者数80万人を超える人気YouTuber。特に野球少年からの人気は絶大で、この日も子どもたちは、右手を添えて捕球することやフルスイングすることの大切さを説くトクサンの話を食い入るように聞いていた。少年野球チーム単位、小学校単位で自然と競技人口が増える時代ではなくなったからこそ、野球界のキーマンや別カテゴリーの団体と手を取り合うことも必要になる。

 岡田小クラブを率いる八島幸也さんは「WBCなどの影響で野球をやりたい子どもは多いが、親御さんの意向で始められないケースが目立つ」と話す。「道具代が高額なのでは」「厳しい指導をされるのではないか」といった先入観を抱く保護者は少なくないという。保護者に野球の本質を知ってもらう手段として、“遊び”を取り入れた野球を楽しむ子どもの姿を見せることには意義がある。

 トクサンも「野球を毛嫌いしている大人は絶対に子どもに野球をやらせないので、大人が野球をやらせたいと思えるような環境作りが重要。ただ野球をさせるのではなく、『野球をするとこうなる』という未来図を可視化しなければいけない」と力説するように、保護者にも目を向けた働きかけは必要不可欠だ。

「こういうイベントが我々一般の野球人ではなく、プロチームや自治体の主導でも行われるようになると、より良い方向に進むはず」と坂本さん。子どもたちの笑顔をつくる地道な取り組みが、野球界の未来を変える。(川浪康太郎 / Kotaro Kawanami)