中村芝翫

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 歌舞伎界の大名跡が迷走中だ。中村芝翫(58)のことで、7月に長男・中村橋之助(28)と歌舞伎鑑賞教室で「義経千本桜」にダブル主演して以降、9月までは出番がゼロという状態。10月の歌舞伎座においても、主演演目は皆無という体たらくだ。

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「もっと活躍していなければならない世代」

 歌舞伎評論家が解説する。

「芝翫は80代の尾上菊五郎や松本白鸚、片岡仁左衛門、50代前半の松本幸四郎、中村獅童、40代の市川團十郎、尾上菊之助らのちょうど中間に位置する世代。もっと活躍していなければいけません。歌舞伎界は芝翫より若い世代を前面に押し出すなど、世代交代が急速に進んでおり、歌舞伎座での主演演目がないのも分からなくはないのですが……」

中村芝翫

 若者たちの登用は、斯界の将来を見越した松竹の戦略とされる。それで芝翫が割を食った面はあるものの、彼には主演舞台に恵まれない致命的な理由が他にあった。4月に明るみに出た、2年ぶり4回目の不倫問題である。

「最初の騒動は平成28年。芝翫は自身の襲名披露興行を目前に控えたタイミングで、京都の人気芸妓との密会が報じられた。以降も艶話は続き、5年後の令和3年には23歳年下の女性と、さらに同年暮れにもアパレル関連企業で働く40代女性との不倫が発覚した」

 今回のお相手は、3人目だったアパレル関係の女性。

「つまり、その後も関係が切れずに続いていた。現在は都内の芝翫の実家で同棲中というからあきれます」

“梨園の妻”から“梨園の母”にシフト

 これまで夫の奔放さに苦しんできた、妻でタレントの三田寛子(58)は、すでに芝翫を見放しているという。

「最初の不倫が発覚した際、三田は取材に“私も主人も至らない点があり、夫婦で深く反省しております。地に足を着けて頑張りたい”と気丈に対応。梨園の妻として株を上げましたが、芝翫の浮気癖は直らなかった。2度、3度と続いたことで、2年前から芝翫が家を出て別居状態になっていました」

 三田に離婚の意思はないそうだが、自身の立ち位置を“梨園の妻”から“梨園の母”にシフトしている。

「彼女のインスタグラムには、橋之助をはじめ福之助(26)、歌之助(22)という三人の息子たちと写ったカットが目立つ。彼らの公演情報とともに、母親からの応援コメントを発信しています」

 職場で干される不肖の父を尻目に、息子たちは人気上昇中。毎月のように歌舞伎公演に出演するほか、9月12、13日には三人が手がける2度目の自主公演「神谷町小歌舞伎」を、浅草公会堂で行う予定だ。

 歌舞伎担当記者が言う。

「昨夏の初公演は3日間で4公演でしたが、チケットはすぐに完売に。演目は歌舞伎でも指折りの名場面とされる『弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)』と、役者らが高下駄でタップダンスを踊る場面が楽しい『高坏(たかつき)』の二作でした。今回は相撲がテーマで、部屋を破門された力士を巡る人情話の『一本刀土俵入』と、二人の力士の意地と義理を描いた『双蝶々曲輪日記角力場(ふたつちょうちょうくるわにっきすもうば)』が上演予定。こちらも完売は必至ですよ」

精を出しているのは……

 順調に地歩を固める彼らとは対照的に、不遇を託(かこ)つ父・芝翫は国立劇場養成所の歌舞伎俳優研修で講師の任に精を出している。事情を知る関係者が言う。

「養成所の主な役割は、歌舞伎界の縁者ではなく一般家庭の出身者を歌舞伎俳優として育成すること。現在活躍する歌舞伎役者の、およそ3分の1がここの修了生。実技指導の主任講師を女方の重鎮である中村萬壽(69)が務め、芝翫は立役の講師だった市川團蔵(73)に代わり、昨年から講師を務めています」

 後進を育てる重要な立場ながら、スケジュールに余裕がない売れっ子には本来、縁の薄い役回り。来夏は還暦の芝翫だが、当面は観客ではなく若手に“にらみ”を利かす日々が続きそうだ。

「週刊新潮」2024年8月29日号 掲載