「感動日本一」の花火大会を目指して~ 実行委員会が第31回赤川花火大会にかける想いとは――

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2024年8月17日(土)に第31回赤川花火大会が開催される。山形県の鶴岡市で行われる同花火大会は、全国の花火ファンから絶大な人気を誇っている。なぜそれほどに花火ファンに支持されるのか?そして地域の方々に支持されるのか? その理由を探るべく、実行委員長の木曽亮慧氏、総括の伊藤俊氏、企画室副室長の長南雄太氏、広報にぎわい室副室長の常田拓哉氏、特別観覧席販売部会部会長の加藤大貴氏にコロナ禍を経て開催される第31回赤川花火大会への想いを訊いた。

――第31回赤川花火大会が8月17日に開催されますが、今回は『劇場版モノノ怪 唐傘』とのコラボレーションが発表されています。どのような経緯からコラボレーションが決まったのでしょうか?

木曽:2022年は『東京リベンジャーズ』とのコラボレーション、そして昨年の2023年の第30回の記念大会では『ウルトラセブン』とコラボレーションした花火を打ち上げさせていただいたのですが、これまでのコラボレーションが評価していただけたようで。

赤川花火大会 実行委員長 木曽亮慧氏

――今回の第31回がコラボレーション花火は3回目なんですね。

木曽:そこに『劇場版モノノ怪 唐傘』側とのご縁があり、今回のコラボレーションが実現しました。『劇場版モノノ怪 唐傘』は7月26日(金)から公開中なのですが、豪華絢爛で色鮮やかな作品ということで作品いうことで花火とのマッチングもいいよねと。

――確かに『劇場版モノノ怪 唐傘』の独特な色彩は花火との親和性が高いですよね。

木曽:あと主題歌がアイナ・ジ・エンドさんの書き下ろし楽曲「Love Sick」ということで、楽曲に合わせての花火がいいのではとなり、プロモーションタイアップとして、今回のコラボレーションが決まりました。

第30回赤川花火大会の様子

――なるほど。ではそんな赤川花火大会ですが、やはりコロナ禍は大変でしたか?暗い話になってしまうので悩んだのですが、改めてインタビューさせていただくとなると、聞かないわけにはいかないのですが。

加藤:コロナ禍でも花火大会を実施しようと動いてはいたんですけど、やはり開催は難しいとなって、でもその時の暗い雰囲気、それは赤川だけではなく、全国的にも世界的にも沈んでいたのを、なんとか花火というコンテンツを使って盛り上げたいな、という想いがありました。だから普通に花火を上げることはできなくても、少しでも花火を上げようということで、30日間花火を上げたりとか、鶴岡だけではなく、全国的にも盛り上げたかったんです。当然難しいところもあったんですけど、やりがいもありました。

――やはり大変だったんですね。そして去年からナンバリング開催、第30回が開催されるわけですが、改めて開催となると苦労があったのでは?

加藤:赤川花火は鶴岡青年会議所からの出向という形で花火大会の実行委員会をしているのですが、約3年ほど花火大会ができなかったため、その間に実行委員会の人達が卒業してしまったんです。実行委員会は40歳になったら卒業するルールがあるんですけど、それで経験者がほとんどいなくなってしまって。これまでは毎年開催するとで、引継ぎ、先輩を見て学ぶということができたんですけど、それができなくなってしまったんです。もちろん書類とかは残っているのですが、知識のないところから始めなくてはならず、やはり最初は不安が多かったです。もちろん先輩も手伝ってはくれてはいたのですが、それでも難しいな、というのは2023年の開催前は結構ありました。
ただ、2022年の時にプレ開催ですが有観客で開催することができたので、その時にかなり運営について学ぶことができた。そこで学んだ人達が主導して、2023年は成功させることができたので、今考えるとある意味ゼロから学ぶことができたのは良かったのかな?と思っています。

特別観覧席販売部会 部会長 加藤大貴氏

――ある意味、引継ぎはできなくても、新しいメンバーがゼロに近いところから学ぶことができたと。前にインタビューさせていただいたときに、実行委員長など役職がついてる方々は毎年変わっていく、とお聞きしたのですが、今も同じように毎年変わっていっているのでしょうか?

加藤:そうですね。赤川花火実行委員会は単年度制なので、昨年の総括は私だったんですけど、今年は伊藤君がやっていたり、毎年違う人がトップになるようになっています。いいところでもあり、大変なところでもあるのですが、それでもOBのアカハナ会も含めて、2022年から入って頑張った人達も力をつけてきて、2023年は動いているという感じです。

――では若手の方々が基本中心になって、先ほどお話にでたOBによるアカハナ会の方々がサポートに入ってるっていう運営の仕方は今回も変わらずっていう。

伊藤:アカハナ会の方も今年から会長さんが変わったのですが、皆さんが赤川花火実行委員会の総括経験者とか実行委員長の経験者ばかりなので、やっぱりノウハウを持っていて、僕らだけでは考えつかなかった「ここどうなってるんだっけ?」「あれどうなってるだっけ?」というようなことを気軽に聞けたりするので、先輩組織としてすごく頼りがいがあります。

企画室副室長 長南雄太氏

――若手中心の実行委員会とOBのアカハナ会の協力体制はうまく回っているのですね。そしてそんな実行委員会は青年会議所の方々が中心になっていますが、若い方は入られているのでしょうか?

伊藤:実は先日、新入会員の入会式がありまして、今年は31人が入会しました。

――えっ?すごいですね!青年会議所が盛り上がっている、ということで皆さん魅力に感じていると。

長南:そうかもしれないですね。やっぱり赤川花火大会をやっていて地域に対して貢献してるっていうところを含めて、青年会議所に魅力を感じてくれているんだと思います。

――やっぱり理由としてはみんな赤川花火大会をやりたい、というのが大きいのでしょうか?

長南:そこは実は全然違いまして、基本的には地域のためにっていうのと、青年会議所で学んだことを自分の会社だったりに活かしたいという理由が多いです。地域のために動くということが目的なので、その中のひとつとして赤川花火大会もあるという感じです。

第30回赤川花火大会の様子

――なるほど。青年会議所がどこまでも母体としてあると。ではちょっと質問を変えまして、SNSを積極活用されてるっていうイメージなんですけど、どなたが運用されてるんでしょうか?

常田:はい、私が大体メインで担当させていただいています。2020年に青年会議所に入会したのですが、コロナ禍ということもあり、2021年の30日間連続打ち上げ、2022年の規模縮小開催という流れから、本格的に復活に向けてSNSも育てていこうということになりました。

――チケットの袋詰めをしている動画がアップされていて、運営の裏側が見れるというのは面白いと思ったんです。

常田:主に袋詰めをしてくださってるのは、地域のボランティアさんです。皆さん有志で集まっていただいていて、そこを管理しているのが実行委員会なので、ぜひこういう裏方でやってるところをネットでも発信できればなというところでアップしてみました。

広報にぎわい室 副室長 常田拓哉氏

――ボランティアの方々も、すごいやりがいが出そうだなと。あと最近のトレンドでもある縦動画で団扇とかの宣伝もされていたり。このグッズの宣伝されている方も実行委員会の方なのですよね?

常田:今年の広報にぎわい室の室長ですね。去年で実行委員会は基本、卒業されているのですが、今年は直前まで理事長だったということで、広報にぎわい室の室長をやっています。

――凄くいい笑顔で広報にピッタリだなと。

常田:動画に出たのはいい笑顔だからという、ところもあるのですが(笑)、グッズ販売や、当日の露店の出店管理だったりだとか、そういういわゆるにぎやかしの部分を担当しているので、やはりトップの人間が出て宣伝するべきだろうということでの出演になっています。

――話は変わりまして今回のテーマ「新花~感動と希望を未来に紡ぐ~」はどのように決められたのでしょうか?

伊藤:テーマは事務局メンバーでやり取りしながら結構早めに決まりました。「新しい」っていうところは入れたいよねっていうところと、「新しい花火」にもしていきたいというところから、決めさせてもらいました。

――だから「新花」で「進化」もかけてる?

伊藤:はいそうです。ちょっと造語っぽい感じにはなってますけど、このメインテーマを出してくれたのが実行委員長なんですが、多数決で最終的に決めたのですが、「新花」(しんか)だろうとなりました。

総括 伊藤俊氏

――非常に分かりやすく、かついろいろな意味が含まれていていいですよね。そして今回もイープラスエリア席がありますが、これはどういった経緯で決まったのでしょうか?

加藤:2018年が最初だったと思うのですけど…以前からイープラスさんでチケット販売をさせていただいていて、最初は会場の端っこの席から始まったんです。その2018年が好評で、そして2019年はそのイープラスエリアが拡大したんですね。そして2020年はコロナ禍で開催できなかったのですが、赤川花火を担当してくれているイープラスの営業の方が、コロナ禍でもこちらに来てくれて、2021年も、2022年も毎年ちゃんと打ち合わせで足を運んでくれているんです。毎回、観覧席の販売を開始する前に席割りをするのですが、1週間ずっと一緒に席割りをしてくれて。それに、やはりまとまった席をお願いできるのが凄くありがたいです。あとイープラスさんが持っているチケット販売についてのノウハウですよね。これが大きい。実行委員会では、この席について全て手で作業していたんですけど、パソコンで作業してイープラスさんがさっとやってくれる。そのノウハウを教えてもらったり、あと「こんなことできますか?」って聞くとレスポンスも早い。

――開催が中止になった2020年もイープラスの営業が訪れていたんですね!信頼関係が築けていたから今があると。

加藤:東京から赤川花火のアンバサダーが来てくれている感じです(笑)。

――話は変わりまして、そんな花火大会ですが、2023年はいろいろなところで花火大会が中止になっていたり、地方の花火大会って開催自体が年々難しくなっているかと思うのですが、今後も含め、赤川花火ではどのような取り組みをされているのでしょうか?

木曽:今おっしゃったように、本当に今は地方の花火大会の実情はすごく大変で、ニュースにもなっていますが、警備費の増大だったりとか、花火の火薬費の価格上昇とか様々な問題があります。それは赤川花火大会も同じ問題をかかえています。なので、その中で自分たちがやってることは、その観覧席の価値を上げていく、値段を上げて収入面を増やしていくことはしています。
ただ価格を上げていくのではなく、プログラム内容を精査して上げていくようにしています。皆さんが楽しんでもらえるような内容はなんなのか、ということを先ほどお話したイープラスさんとのコラボなどで、観覧席の販売をスムーズにしたり、エリア分けによる動線を考えたり、警備を充実させたり、といった様々なことでお客さんが来てもらえるような部分を作り上げていく。それによって赤川花火大会の価値を上げていくことが重要かな、というふうに感じています。

――では最後にこれは前回のインタビューでもお聞きしたのですが、皆さんにとって「赤川花火」とはどういったものなのでしょうか?

長南:自分にとっての赤川花火って子供の頃から当たり前にあるもの、毎年当たり前に開催されていたもので。そんな赤川花火を29回大会までお客さんとして参加していたんです。その後、青年会議所に入って、実行委員会に参加させていただいているのですが、子供の頃の感覚としても地域で一番大きくて、全国でも有名で、誇りで、毎年当たり前に開催されてるみたいな感覚があったんです。でも実際に実行委員会に入ってみて、当たり前に開催されてたものが、当たり前じゃないというか、地域の方々の理解であったり、青年会議所のメンバーの動きっていうのがあって、いろんな人の思いが集まって開催されてるものだっていうのに入ってから気づいたんです。花火大会はその裏にいろんな人の動きと思いが詰まっています、そしてみんなの目指してるものは一つで、地域を良くしたい、そして来てくれるお客さんに楽しんで帰ってもらいたい、って思いなのかなと。あと個人的な話ですが、自己肯定感を上げる最高のツールです(笑)。

常田:実は今喋った長南とは高校からの付き合いなんですね。そんな高校時代から、僕は生徒会とかに入っていて、長南は学級委員長で付き合いがあって、高校卒業した後も地域の何かするっていう時は、何かと一緒にやっていたんです。ずっと何か一緒に地域のために何かしたいよね、と言っていて青年会議所に入ったということがありました。なので、長南が言ったように、赤川花火は地域の中での誇りなんです。そしてこれからも繋いでいかなければいけないという使命感もあり、今運営に携わっています。

第30回赤川花火大会の様子

――高校の同級生から今、青年会議所に入り、さらに赤川花火の実行委員会と一緒に地域を盛り上げているというのはいい話ですね。

加藤:私も小さい時から赤川花火を見ていて、凄いな、ってイメージだけだったんです。でも実際に実行委員会に入って携わってみたら、凄い大変で(苦笑)。無償でやってるし、みんなそれの思いだけでやってる、っていう。コロナ禍の時かな?おばあさんから「(花火を)あげてくれてありがとうね」って言われたんです。その一言で全部報われたというか。「コロナ禍の時は(花火をあげてくれて)ありがとうございました」みたいなハガキとかもきていて、鶴岡のためになってるのかな、って。そういう皆さんの想い、感謝されているんだ、喜んでいれているんだ、っていうのが原動力になっている。おばあさんに言われた一言は今でも思い出したりするので、大事なコンテンツであり、地域にとって大事なものなのかなっていうふうに思ってます。

――地域の方から感謝されているというのを実感できるというのは、原動力になりますよね。

伊藤:今回担当している役職として、やっぱりいろんなところでお話を聞く機会があり、「やっぱり花火、期待してる」って言われるんです。それに応えたいなって思うのが一番ですよね。やっぱり繋いでいきたい。もちろん困難なこともあるんですけど、しっかりと解決していきながら、来年、再来年に向けてっていう思いでやってるところですね。

木曽:僕としては「感動日本一」を作る花火大会です。それは例えば観客動員数だったりとか、有名な花火大会に比べてしまうと、赤川花火大会ってそんなに全国的に有名ではないのですが、「感動日本一」を目指して、常に毎年毎年上を目指していく。どうやったら最大限のパフォーマンスをできるかってことを毎年、実行委員会のメンバーで考え抜いて、ブラッシュアップしていっています。上を目指す、ということを軸にして、みんなが共感して、やっぱり良かった、と思ってもらえるところかなと思っています。

「感動日本一」を掲げ2024年8月17日(土)に開催される第31回赤川花火大会。地域を想う心から作られた鶴岡が誇る花火大会にぜひ足を運びたい。

取材・文:林信行