寝ようと思っていたら「空腹感」が…! あなたならどうする?

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 連日、熱戦が繰り広げられているオリンピック・パリ大会。時差があることから、日本では深夜帯にテレビ中継されている競技も少なくなく、連日ついつい夜更かししてしまう…という人も多いことでしょう。観戦を終えて、そろそろ寝ようとしていると「何だかおなかがすいてきた…」と感じることもあると思いますが、そんなとき、あなたならどうしますか?

「空腹だとうまく寝付けない」「空腹のまま寝ると体に悪そう」と考える“何かを食べてから寝る派”と、「次の日に胃がもたれそう」「寝る前に食べると太るのでは?」と考える“空腹のまま寝る派”に分かれると思いますが、「健康のことを考えたとき、空腹と満腹どちらの状態で寝るのが正解なのか?」という疑問も浮かびます。

 そこで、「何かを食べてから寝る」と「空腹のまま寝る」のどっちが“医学的に推奨”されるのか、eatLIFEクリニック(横浜市旭区)院長で内科医・糖尿病専門医の市原由美江さんが解説します。

就寝中、胃腸の動きは弱くなる

 就寝前に「眠気を感じている」とき、私たちの体では副交感神経が優位に働いています。その結果、リラックスする方向に傾き、睡眠へ導かれるのです。このとき、体温は下がり、胃腸の動きは鈍くなり、脈拍はゆっくりとした速さになります。

 そんな就寝前に「おなかがすいた」と感じ、何かを食べてから眠りについた経験がある人は少なくないと思います。

 先述したように、通常、就寝中の胃腸の動きは弱くなっています。そのため、就寝直前に何か食べてから寝ると、消化や吸収に時間がかかり、胃酸も逆流しやすくなるので、胃もたれや胃のむかつきを起こす可能性があります。さらに、体は、消化や吸収を寝ている間も行うため、睡眠の質が落ちる可能性も考えられるでしょう。

 また、中には「寝る前に食べると太りやすくなるのでは?」と思う人もいるかもしれません。これは事実です。

 カロリー摂取自体が体重増加につながる上、「食べた後に寝る」、すなわち食後に体を動かさないので、カロリー消費が基礎代謝分しかなくなります。よってカロリー過剰になり、太りやすくなるのです。例えば、糖質は過剰摂取すれば中性脂肪に変換され、内臓脂肪などの蓄積につながりますし、脂っこいものを食べれば、それに含まれる脂肪自体も中性脂肪として内臓脂肪になります。

 さらに、食後に体を動かさないことで、食後の血糖値も上がったままになる可能性があることも、太りやすくなる要因の一つと考えられるでしょう。

 では一方で、「夜、就寝前に空腹を感じたものの、何も食べずにそのまま就寝した」場合ではどうでしょうか。

 何も食べずに寝た場合、先述の状態とは反対に胃腸への負担がないため、睡眠に悪影響が出ることは考えにくいです。そしてカロリーを摂取しないので、太りやすくなったり、血糖値が上がったりするといったこともありません。また、普段、食事を普通に取っているのであれば、筋肉量や脂肪量への影響も考えにくいでしょう。

 これらのことから、健康を考えたとき、たとえ就寝前におなかがすいたとしても何も食べず、空腹の状態で寝るのが望ましいといえるでしょう。胃腸にかかる負担や体重増加の懸念がないからです。

 しかし、「食べない方がよい」ことは分かっていても、就寝前におなかがすいてしまい、「どうしても何か食べたい…」というときもあると思います。

 そんなときにもし食べるとすれば、糖質や脂質ではなく、タンパク質を含む食べ物の方がよいでしょう。チーズや納豆などがおすすめです。ただし、空腹に近いほど消化や吸収への影響が少ないので、満腹になるまで食べるのは避け、少量にとどめてくださいね。