超高額で落札された新一万円札(Yahoo!オークション公式サイトより)

写真拡大

珍しい番号探しがブーム?

 7月3日から新札の発行が始まり、ネットニュース各社は777777などのレアな番号、いわゆる“珍番号(通称:珍番)”に関する話題を報じている。それを受けてXやYouTubeでもこうした番号を探そうと、躍起になっている人が相次いでいる。巷ではちょっとした紙幣ブームが起こっているようだ。

【驚愕】え、私の5000円札が66万円に!? 今日から財布の中の紙幣をじっくり確認したくなる「レア紙幣オークション」の世界

 そもそも、珍番号とはどのようなものなのか。紙幣にはAD564076ERとか、RT651112KLといった具合に通し番号が印字されている。この番号が111111や888888などのぞろ目だったり、000001のような最初の番号、もしくは100000などのキリ番だったりするとコレクターから珍重され、プレミアがつくのである。

超高額で落札された新一万円札(Yahoo!オークション公式サイトより)

 はやくも、Xでは777777の番号を偶然に“神引き”したという人が登場して大きな話題になったほか、すでにネットオークションでは珍番号の紙幣が多数出品されている。例えば、AB555555KKの1万円札はなんと13万3501円で落札された。実に額面の13倍以上の価格であり、他にも珍番号の新紙幣が高額落札されるケースが相次ぐ。

AA-AAの紙幣が未発見?

 また、さるネットニュースでは、数字の前後にあるアルファベットが「AA-AA」のお札に価値がある、という話題も報じられていた。AA-AAは、いわば初期ロットの証しなのである。

 AA000001AAは日本銀行の貨幣博物館が所蔵するのが慣例となっているが、それ以外の若い番号は、紙幣にゆかりのある公的団体や自治体などに寄贈される。例えば、1万円札の肖像になった渋沢栄一の出身地である埼玉県深谷市にはAA000006AAが寄贈され、裏面に描かれた東京駅を管理するJR東日本にはAA000003AAが寄贈されている。

 こうした若い番号以外のAA-AAの紙幣は、日本銀行から払い出され、市中に出回るのが慣例だ。熱心なコレクターの間では、AA-AAを連番で手にしようと、情報交換が盛んになっているというが、8月1日現在、市中に出回った実物が発見されていないのだという。日本を代表するコインの専門店、「銀座コイン」の竹内三浩さんはこう話す。

「2004年に新札が切り替わった時はすぐに初期ロット“A-A”の紙幣が発見され、どこの銀行から出たのかと、業者間ですぐに話題になりました。しかし、今回はもう発行開始から1ヶ月が経とうというのに、まだ発見されていないのです。日銀がまだ温存していて市中に流していないのではないか、という説が有力になっています」

 補足しておくと、数字の前後のアルファベットは、今回の新紙幣からAA-AAスタートになっているが、以前はA-Aからスタートしていた。したがって、現在のAA-AAに相当するのがかつてのA-Aということになる。そんなAA-AAの紙幣はどこかのタイミングで出回ると推定され、誰もが手にできるチャンスがあるというわけだ。

AA777777AAなら驚きのプレミアも

 ところで、ネット上ではAA-AAがレアである、という法則を誤解している人が続出している。ある有名なYouTuberも誤解していたのだが、あくまでも人気があるのはAA-AAである。AA-TYやAA-BKのように。前のアルファベットの組み合わせがAAなだけではプレミアはつかない。

 ところが、AAならば価値があると思い込み、ネットオークションやフリマサイトで紙幣を“転売”している人もいるのだ。そういった紙幣は、さすがにほとんど売れていないだろう……と思いきや、額面の何倍もの価格で購入してしまっている人も一部にいる。基本的にプレミアがつくことはないので注意してほしい。

「AA-AAの紙幣で凄まじいプレミアがつく可能性が高いのが、AA-AAと、さきに紹介した珍番号の“合わせ技”が見られるものです。もし、AA111111AAやAA777777AAのような奇跡的な超激レア紙幣が発見され、オークションに出品された場合、通常の珍番号を遥かに超える金額で落札される可能性が高いですね」

 こう竹内氏が言うように、こうした紙幣がひとたびオークションに出品されると、コレクターがざわつくという。そして、そういった紙幣はATMでお金を引き出したり、お釣りで入手したりと、誰の手にも平等に回ってくる可能性があるのだ。「そんな紙幣を偶然見つけたら、宝くじに当たったようなものでしょうね」と竹内氏が言うのも、納得である。

衝撃、5000円札の100枚束が2900万円!

 銀座コインのオークションには、珍番号の紙幣が毎回出品されている。過去の高額落札を見てみると、A777777Aの福沢諭吉の旧1万円札は、なんと68万円で落札されている。A333333Aの樋口一葉の5000円札は66万円で落札された。A-Aとぞろ目の組み合わせだけで、これほどの価格に跳ね上がるのだ。

 これをさらに上回る衝撃の超高額落札になったのは、樋口一葉の5000円札の100枚束である。番号がA000001A〜A000100Aとなっており、もちろんすべてピン札だ。額面は5000円×100枚なので50万円だが、落札額は衝撃の2900万円であった。額面の実に58倍という恐るべきプレミアである。

 先に述べたように、通常はA000001Aなどの若い番号は、お札にゆかりのある施設や団体などに寄贈される。樋口一葉の5000円札も、2004年に発行が始まった初期のものは、関係団体に寄贈されている。オークションに出たものは、ホログラムの透明層の大きさと記番号の色が黒から褐色(茶色)に変更されたうえで2014年から発行された、いわば改良版の紙幣であった。

「あくまでもマイナーチェンジにすぎなかったため、関係機関に寄贈されることがなく、普通に流通したのでしょうね。もし、記番号の色が黒だったら、初期に発行されたものですから、さらに高額で落札されたと思われます」と、竹内氏。AA-AAで、かつ珍番号の紙幣を見つけたいという人に、こうアドバイスする。

「こんな紙幣は、それこそ日本中のコレクターが血まなこになって探しているため、簡単に見つかるものではありません。ただ……もし奇跡的に見つけた人は、ぜひ“銀座コイン”まで持ち込んでみてはいかがでしょうか(笑)」

ライター・山内貴範

デイリー新潮編集部