2024年6月、AMDは次世代CPUマイクロアーキテクチャの「Zen 5」および、Zen 5を採用したAI PC向けのチップとなるRyzen AI 300シリーズを発表しました。その後、Zen 5やRyzen AI 300シリーズの詳細が明らかになり、Ryzen AI 300シリーズの上位モデルとして「Ryzen AI 9 HX 370」も発表されています。この「Ryzen AI 9 HX 370」のレビューがさっそく公開されていたので、どんな評価になっているのかまとめてみました。

The AMD Ryzen AI 9 HX 370 Review: Unleashing Zen 5 and RDNA 3.5 Into Notebooks

https://www.anandtech.com/show/21485/the-amd-ryzen-ai-hx-370-review



AMD Ryzen AI 9 HX 370: 100+ Benchmarks Validate Zen 5's Captivating Power Efficiency & Performance Review - Phoronix

https://www.phoronix.com/review/amd-ryzen-ai-9-hx-370

AMD launches Ryzen AI 300 Zen5 "Strix Point" mobile series, first reviews now available - VideoCardz.com

https://videocardz.com/newz/amd-launches-ryzen-ai-300-zen5-strix-point-mobile-series-first-reviews-now-available

'Strix Point' First Tests: AMD Ryzen AI 300 Laptop Chip Flexes Real CPU, NPU Chops | PCMag

https://www.pcmag.com/news/strix-point-first-tests-amd-ryzen-ai-300-laptop-chip-flexes-real-cpu-npu?taid=66a64f019dd5cd000152d2c8

Tested: AMD Ryzen AI 300 brings serious performance to Copilot+ PCs | PCWorld

https://www.pcworld.com/article/2411004

AMD Ryzen AI 300 "Strix" APU-Powered Laptops Launched: Combine Zen 5 CPU, RDNA 3.5 GPU & XDNA 2 NPU Cores, First Die Shot Pictured

https://wccftech.com/amd-ryzen-ai-300-strix-apu-powered-laptops-launch/

なお、Zen 5アーキテクチャとRyzen AI 300シリーズの詳細については以下の記事にまとめてあります。Zen 5アーキテクチャは2022年にリリースされたZen 4の次世代アーキテクチャで、高度な分岐予測(Advanced Branch Prediction)とデュアルパイプフェッチを組み合わせることで、レイテンシー(遅延)を低減し、精度とスループットが向上するよう設計されています。また、AI PC向けのSoCということで、NPUとしてはXDNA 2を統合。これにより、Ryzen AI 300シリーズは最大50TOPSのAIパフォーマンスを実現することが可能となります。

AMDが新アーキテクチャの「Zen 5アーキテクチャ」&Zen 5採用のAI PC向けプロセッサ「Ryzen AI 300」&デスクトップ向けプロセッサ「Ryzen 9000」の詳細を発表 - GIGAZINE



テクノロジーメディアのAnandTechは、SoCとして「Ryzen AI 9 HX 370」を搭載した「ASUS Zenbook S 16(UM5606WA)」をレビューしています。なお、ASUS Zenbook S 16は解像度2880×1800ピクセル、リフレッシュレート120Hz、最大輝度400ニト、HDRピーク輝度500ニトの16インチディスプレイを搭載したノートPCです。

AnandTechは複数のベンチマークソフトを使用して「Ryzen AI 9 HX 370」のパフォーマンスを測定しており、その結果が以下。なお、ASUSは「標準モード」、超静音の「ウィスパー モード」、28W TDPの高性能な「パフォーマンス モード」、制限のない「フルスピードモード」という4つのパフォーマンスモードを提供しており、ベンチマークテストでは「パフォーマンス モード」で実施しているとのこと。

ピーク電力テストにおいて「Ryzen AI 9 HX 370」は最大「33.03W」を記録。通常、ピーク電力値はTDPよりもわずかに高い数値を記録するそうですが、Intel Core Ultra 7 155HはTDP 28Wであるにもかかららずピーク電力として「64.04W」を記録しました。



続けてCPU向けのベンチマークソフトであるSPEC CPU 2017で、シングルスレッドパフォーマンスのスコアを比較したのが以下の画像。スコアが高いほど優れたパフォーマンスであることを示します。比較対象となっているのはM3、Ryzen 97940HS、Intel Core Ultra 7 155Hの3つ。2つある値の上部(グレー、オレンジ)が整数演算、下部(黒、赤)が浮動小数点演算パフォーマンスを示しています。整数演算パフォーマンスでは前世代のRyzen 97940HSからわずか0.01ポイント上昇しているだけでM3には大きく差をつけられていますが、浮動小数点演算パフォーマンスでは他と差をつけたスコアを記録。



整数演算ベンチマークの詳細が以下。水色がIntel Core Ultra 7 155H、オレンジがRyzen 97940HS、青がRyzen AI 9 HX 370、黒がM3のスコアを示しており、こちらもスコアが高いほど優れたパフォーマンスを発揮したということになります。ほとんどのテストでM3が高いスコアを記録しているというだけでなく、Ryzen AI 9 HX 370がRyzen 97940HSのパフォーマンスを下回るケースも確認できます。



浮動小数点演算ベンチマークの詳細が以下。全体のスコアではRyzen AI 9 HX 370がダントツのトップでしたが、項目別にみるとそれほど大きな差はないようです。ただし、549.fotonik3dなどのいくつかのテストでは前モデルのRyzen 97940HSからスコアが41%も向上しています。



マルチスレッドパフォーマンスのスコアを比較したのが以下の画像。マルチスレッドパフォーマンスの場合、整数演算ベンチマーク(グレー、オレンジ)と浮動小数点演算ベンチマーク(黒、赤)の両方でRyzen AI 9 HX 370がトップに。



整数演算ベンチマークの詳細が以下。Ryzen AI 9 HX 370は502.gcc、505.mcf、520.omnetppといったテストではRyzen 97940HSからパフォーマンスが大幅に向上しており、シングルスレッドでのパフォーマンスよりも大きな進歩がみられます。



浮動小数点演算ベンチマークの詳細が以下。503.bwavesではRyzen 97940HSからパフォーマンスが大幅に低下しています。



CPUベンチマークソフトのCinebenchで、シングルスレッドパフォーマンススコアを比較した画像。



マルチスレッドパフォーマンススコアを比較した画像。



Microsoft Officeのパフォーマンスを測定するUL Procyon Officeのスコアを比較したのが以下の画像。

Word



Excel



Outlook



PowerPoint



JavaScriptベンチマーク「JetStream 2」のスコア比較



MySQLデータベースであるMariaDBでのベンチマーク結果



WebP2画像のエンコードにかかる時間(1秒当たり何メガピクセルの画像をエンコードできるか)を示した画像が以下



SVT AV1エンコーダーでのエンコードにかかる時間(1秒当たり何フレームの動画をエンコードできるか)を示した画像が以下。

解像度1080pで最速プリセットを利用した場合



解像度4Kで最速プリセットを利用した場合



解像度1080pで中級プリセットを利用した場合



解像度4Kで中級プリセットを利用した場合



3DCG製作ツールのBlenderでモデルをレンダリングするのにかかる時間を測定した結果が以下の画像。

BMW27



FishyCat



AnandTechは「AMDはRyzen AI 300シリーズで、ノートPC市場の最前線に確固たる地位を築いた」と言及。 Ryzen AI 9 HX 370は高負荷でもしっかりと性能を発揮でき、特にレンダリングなどの負荷の高いワークロードにおいて優れたパフォーマンスを発揮すると評しています。