なでしこの課題「カバーし合わないと狙われてしまう」…OG岩清水が懸念、18歳逸材の「良さを引き出したい」【見解】
【専門家の目|岩清水梓】スペイン戦で見えたなでしこJの懸念点
なでしこジャパン(日本女子代表)は現地時間7月25日にパリ五輪の初戦でスペイン代表と対戦し1-2で敗れた。
MF藤野あおばの直接フリーキックで先制点を奪ったものの逆転負け。2008年北京五輪と12年ロンドン五輪に出場し、11年の女子ワールドカップ(W杯)優勝メンバーでもある元代表DF岩清水梓は、18歳でスタメンに抜擢されたDF古賀塔子について「得意なプレーをやらせてあげたい」と話し、左サイド全体が修正点になっていると指摘した。(取材・構成=轡田哲朗)
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緊張感のある初戦に抜擢された古賀は、守備時には左サイドバックに入りながら攻撃時は3バックの一角としてMF清家貴子を後方からサポートするような変則的な役割を与えられた。後半は全体が3バックに整理されたが、DF清水梨紗の負傷に伴い右サイドへシフトするなどゲームの中での役割も多岐に渡った。
対人プレーで奮闘する姿もあった古賀について岩清水は「そつなくやろうと頑張っていたけれど、ゲームに入るのでいっぱいいっぱいの印象だった。アジア大会ではセンターバックでプレーしていた選手で、少し不慣れに見えた。対人での良いプレーはあったけれども、まだ(このポジションの)プレーを重ねていないところが見て取れた」と話す。
今後のなでしこジャパンを支えていくべき才能だが、まだ18歳の若手であり初の大舞台でもある。それだけに岩清水は「得意なプレーをやらせてあげたほうがいいと思う。対峙して潰しにいくのが好きならば、ガンガン行かせて周りがカバーしてあげればいい。彼女の良さをチームとして引き出してあげたい。それが若手選手とプレーするうえでは必要だと思う。経験ある選手が多いと思うので、古賀選手を上手く使えるような声かけやコーチングが必要だと思う」とも話した。
前半は清家、後半はMF宮澤ひなたが入ったワイドのポジションは、7月13日の国際親善試合ガーナ戦で負傷したDF北川ひかるがチームに帯同しているものの初戦に間に合わなかった。岩清水は「北川選手がいない今、職人という感じの選手がいない。イレギュラーが起きていると思うけど、カバーし合わないと狙われてしまう。ワイドは攻守どちらもできる選手が求められるけど、左サイドは左足で縦に流せる選手が欲しい。FWの動き出しも変わってきてしまう。修正点で言うと、左サイドになると思う」と話す。
岩清水は「どこでもできる選手が入るのと、本当にそのポジションで自分のチームでも活躍している選手が入るのは少し違う。そこが不安材料になってしまっている。連係を高めるしかない」としながらも、「北川選手の復帰を心待ちにしている状態」と、左サイドのスペシャリストの戦線復帰がチームにとって待望されるという印象を話していた。
日本はこの後、現地時間28日にブラジル、同31日にナイジェリアと対戦する。五輪の女子サッカー競技は12チームが出場し、4チームずつに分かれた3組のそれぞれ2位以上と3位のうち上位2チームが準々決勝へと進出する。
[PROFILE]
岩清水梓(いわしみず・あずさ)/1986生まれ、岩手県出身。2001年に日テレ・ベレーザ(現日テレ・東京ヴェルディベレーザ)でリーグ戦デビュー。なでしこジャパンには06年に初選出され、女子W杯メンバーに3度、五輪メンバーには2度選ばれ、11年W杯の優勝を経験した。20年3月に第一子を出産し、“ママさん戦士”として現役を続ける。(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)