奈良公園のシカ(写真はイメージ)

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外国人観光客も多数集まる中、歩いて来た若い男が突然シカを蹴り上げて......。奈良市内の県立奈良公園そばの歩道で、こんな様子が撮られた動画がユーチューブに投稿され、批判の声が上がっている。

奈良のシカは、国の天然記念物に指定されていることから、文化財保護法違反に問われる可能性も指摘されている。県の奈良公園室は、動画は把握しているとしたうえで、「不適切な行為には間違いないと思います」と取材に答えた。

「鹿さんたち、何も悪いことしてないのに」「これは悪質ですね」

歩道にたくさん集まったシカに、外国人女性がシカせんべいをあげ、触れ合いを楽しんでいる。シカと一緒に記念撮影しているグループの姿も見られた。

そんな中で、白いTシャツの男が人混みの中から現れ、いきなりシカの顔を右手で引っぱたく。

さらに、歩いて来ると、別のシカに近づいて、右足で思い切り蹴り上げた。パ〜ンと足が当たった音が響き、シカが先に逃げる。周囲の人たちは、驚いた様子で男を見ていた。男は、左手にスマホを持って、お構いなしに歩き、今度は、シカの後ろから右の脇腹に蹴りを入れた。シカは、次々に逃げ出したが、歩いてすれ違ったシカの頭を右手で叩いていた。

この動画は、2024年7月21日にユーチューブで投稿された。男は、外国人だったと紹介されており、動画の最後には、ここで撮影を切って、男を注意しに行くとするコメントが画面に出た。

動画は、6万回以上再生されており、X上で転載されて拡散している。

シカへの暴力に嘆く声が次々に上がっており、「鹿さんたち、何も悪いことしてないのに」「これは悪質ですね、とても許せません!」「メディアも取り上げて厳罰に処してほしい」などと書き込まれていた。

この暴力行為について、動画が投稿された21日ごろに警察などに通報はあったのだろうか。

「職員がパトロールし、不適切な行為を見つけると指導している」

奈良公園一帯を所管する奈良署は7月22日、J-CASTニュースの取材に対し、シカへの暴力について通報や出動はなく、動画も把握していないと答えた。

過去には、車への体当たりに腹が立ったとして、オノでシカを切り付けて死なせた容疑者が、文化財保護法違反の疑いで21年3月に奈良県警に逮捕されている。

シカの保護活動をしている「奈良の鹿愛護会」(奈良市)は22日、取材に対し、暴力行為について特に連絡は来ておらず、スタッフが現場には行っていないと説明した。ただ、動画のことを知らせるメールなどが来ているとし、県の奈良公園室に情報提供したことを明らかにした。

シカへの暴力行為について、県の奈良公園室は同日、連携している関係団体から連絡が来て、情報を共有しているとしたうえで、「不適切な行為には間違いなく、よろしくないことだと思います」と取材に答えた。

公園事務所の職員が公園一帯をパトロールしており、不適切な行為を見つけると指導しているという。また、不用意にシカに近づいたり、シカせんべい以外のエサを与えたりするのは止めるよう、看板を40か所に立てて注意を促していると説明した。

(J-CASTニュース編集部 野口博之)