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●「旅先で旨いものを食べたければ、タクシードライバーに聞くのが一番」と言います。そこで、東京のB級グルメに精通する現役タクシー運転手・荒川治さんに、オススメのお店を教えてもらいました。

 タクシードライバーの荒川です。

 今年は梅雨入りが遅く、7月になっても、朝からしとしと。はたまた急などしゃ降り、なんて日もありますね。雨の日は憂鬱な気分になりますが、タクシー運転手にとっては稼ぎどき。普段タクシーを使わないお客さんも乗車してくれますからね。ただ、飲食店は、梅雨模様のお天気の日のお客さんの入りは減少傾向かもしれませんね。

新宿御苑駅から徒歩5~6分

 しかし、人気店は別。今回ご紹介するお店も、どしゃぶりの日だろうが、行列ができるお店なんです。いや、「雨の日なら並ぶ時間が少ないだろう」と目論むお客さんたちで、かえって並ぶ人が増える、そんな“超”がつく人気の店なのです。

朝から大雨の東京。でも『あおい』の前は傘をさしながら待つお客さんがいっぱい

 それが、新宿御苑から歩いて5分ほどの場所にある『あおい』という和食店。いつも昼の開店前から行列ができていて、先日の大雨の日でも写真の通り。

 みんなのお目当てはお昼の「生本マグロ」定食(2000円)なんです。

あおいのお昼「生本まぐろ」(2000円)は、マグロづくしのお刺身に、ごはん、味噌汁、小鉢5品付き

 この定食、私も何回か食べたことがありますが、「本当に2000円でいいんスか?」と言いたくなるくらい、そのクオリティの高さに驚かされます。ご主人に毎回「美味しかったです」と声をかけずにはいられないし、心の中は感謝でいっぱい。では、どんな定食なのかご紹介しましょう。

大トロ、中トロ、赤身の食べ比べ定食

あおいのお昼のお品書き

『あおい』は、和食歴30年のキャリアを持つご主人が一人で切り盛りするお店です。夜は完全予約制で、季節の素材を用いた鮮魚と野菜を中心としたコース料理で楽しめます。

 そしてお昼は、4つの種類(画像参照)があり、旬の焼き魚定食や、刺身定食、丼ものなどもありますが、前述したように7~8割の人が「生本まぐろ」(2000円)の定食を食べているんです。

お会計から返却までセルフサービス

 まず、お店での注文方法を紹介しましょう。

 入店したら、厨房との境になっているカウンターまで進み、先にメニューを注文してお会計します。するとご主人からサイコロ状の番号札を渡されます。それを持って、空いている席に座り、番号を呼ばれるまで待機。なお、ご主人のワンオペなので、お冷ややお茶などは専用スペースでセルフサービスで注ぎます。

サイコロ状の番号札

 自分の番号札が呼ばれたら、カウンターに御膳を取りに行くわけですが、このとき、きっとみなさん興奮すると思います。その「本生まぐろ」定食を見ると、お皿にのった“生本マグロ”の美しい天然の色合いとボリューム感に、思わず心が高揚し、体温が上がって、自分の顔もマグロのように赤らむ感じがするハズです。

本生マグロの美しさに感激間違いなし!

 赤身、中トロ、大トロは、どれも分厚くカットされていて、新鮮さのあまりキラキラ輝いています。紅色、ピンク色、深紅。マグロの部位によって異なる美しい色を愛でたら、いよいよ実食です。

 口に入れた時の食感、甘み、旨み、とろけ具合、部位ごとに全部違います。しかも同じ中トロでも包丁の入れ方が異なり、最も美味しく食べられるようなカットしてあります。どれ1つとっても同じ食感でもなく、同じ味でもない。1つ1つが味わい深く、マグロの食べ比べをしている気分です。

自分でごはんの上にマグロを載せて丼にしてみたりも自由。

 マグロの美味しさだけではありません。この定食が素晴らしい理由は、小鉢に入った副菜の美味しさにもあります。茄子の煮浸しやだし巻き玉子、小松菜の胡麻和え、きゅうりのたたきなど、どれも 新宿丁寧な味わいで、ご主人の腕の良さに感動するんです。

 そして、私の大好きな白飯。この美味しさも尋常ではありません。ツヤツヤとしてお米の持つ旨みと甘みをしっかり感じられます。嬉しいのは、ごはんのおかわりが自由なことです。セルフサービスの場所にお茶碗を持参しておかわりをします。女性も含むお客さんのほとんどが、ご飯をおかわりしているのを目にします。それだけ、この定食が美味しいということの証ではないでしょうか。

つやつやのご飯。セルフサービスでおかわりOK。ふりかけもフリー

 というわけで、雨が降っていてもどしゃ降りでも、並んで食べたくなる『あおい』のお昼ご飯でした。食べれば心が晴れる、そんな「生本マグロ」定食、ぜひ皆さんも食べてみてください。

(撮影・文◎土原亜子)

●SHOP INFO

店名:あおい

住:東京都新宿区四谷4丁目31-7
TEL: 03-6457-7736
営:11:30~13:00、18:00~20:00
休:水・土・日

●著者プロフィール

荒川 治
東京都内在住のタクシー運転手。B級グルメ好きが高じて、現職に就き、お客さんを乗車させつつ、美味い店探しで車を回している。中年になってメタボ率300%だが、「死神に肩をたたかれても、美味いものを喰らって笑顔で死んでやる」が信条。