エアコンつけっぱ or こまめに消す論争に結論! 専門家も実践する「裏ワザ」とは?

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世界情勢の影響で電気代は高まる一方だが、「酷暑」といっていいほどの日本の夏を、エアコン抜きで過ごすのは現実的ではない(都市部では特にそうだ)。こうなると、個人でできる対策は「できるだけ電気の無駄なく、効率的にエアコンを使う」ぐらいしかないだろう。そのためのポイントを「空気・空調の専門家」で知られるダイキン工業広報の重政周之さんに教えてもらった。(取材・文:箕輪 健伸)

「除湿」だとかえって電気代が高い?

まず、「エアコンは除湿運転より冷房運転の方が、電気代がかかる」という話の真偽を教えてもらった。重政さんは「一般的なエアコンに搭載されている"除湿(弱冷房除湿)"と冷房を比較すると、消費電力量は大差ありません」と話す。

少し差が出るのは、エアコンが"再熱除湿"という方式を採用している場合だ。この除湿方式が採用されているのは、主に高価格帯のエアコンだという。重政さんは「再熱除湿は、空気を冷やして湿気を取り除いたあと、空気を暖め直して適温に調整する"寒くなりづらい除湿"です。再熱除湿と冷房を比較すると、再熱除湿の方が電気代は若干高くなります」と解説する。

差は「若干」ということだが、いちおう自宅のエアコンの除湿機能が弱冷房除湿なのか、再熱除湿なのかは、確認してみた方が良いかもしれない。

「つけっぱなし」「こまめに消す」どちらがいい?

さて、次にエアコンに関する論争でよくあるのが、「つけっぱなし」がいいのか、それとも「こまめに消した方がいい」のかというもの。エアコンは起動時に最も電力を消費することから、つけっぱなしの方が電気代はかえって安くなるという考え方だ。重政さんに尋ねると、ダイキンが行った実験結果をもとに、詳しく説明してくれた。

「ダイキンの実験では、夏の暑い日の日中の場合、30分程度の外出であれば、つけっぱなしの方が消費電力は抑えられる結果となりました。反対に長時間(厳密には35分以上)家を空ける場合は、スイッチを消した方が省エネという結果となっています。30分程度を目安にエアコンのスイッチを消すのか、つけっぱなしにするのかを考えていただくのが良いかと思います」

それでは夜間はどうなのか。

「夜間は日中より外気温が下がるため、つけっぱなしにしても日中ほど電気代はかかりません。電気代だけを考えると寝るときには消した方がいいです。しかし、寝苦しくてエアコンをつけたり消したりすると、電気代はかえって高くなる可能性がありますし、体調を崩してしまうおそれもあります。夜も無理のない範囲でぜひエアコンを使っていただきたいですね」

意外と大事な「夏前の準備」

電気代を抑えるためには、事前の準備も重要だという。エアコンを本格稼働させる前、つまり今の時期にできることとは。

「まず行っていただきたいのがフィルターの掃除です。エアコンは室内機と室外機に分かれていますが、部屋の中の空気を室内機に取り込んで、取り込んだ熱い空気を室内機で冷やして、部屋の中に戻すという仕組みで部屋を涼しくしています。空気中のホコリが室内機の中に入るのを防ぐため、室内機にはフィルターが入っています。フィルターにホコリがたまった状態だと室内機に取り込める空気の量が減ってしまうんです。その結果、部屋の中の空気全体を冷たくするのに時間がかかってしまい、消費電力も余計にかかってしまいます」

重政さんによると、フィルターの掃除はシーズン前のほか、2週間に1度は行うのがベストなのだそう。

室外機まわりの「裏ワザ」とは?

また、室外機の周りでも省エネのためにできる工夫があるという。

「室内機で取り出した空気中の熱を室外機に運び、そこから屋外に排熱します。室外機の周りに障害物がたくさんあって、室外機が空気を吸い込んだり吹き出したりしづらくなると、運んできた熱を外にうまく逃がすことができなくなってしまいます。そうするとエアコンは、より多くの電力を使って頑張ってしまうんです。余計な電力を消費した結果、電気代が高くなってしまうというわけです」

重政さんは他にも室外機に関する裏ワザを紹介してくれた。

「室外機の"周囲"への打ち水です。室外機が室内の熱を放出しやすいように、周囲に打ち水をすると、取り込まれる空気が気化熱で冷え、エアコンの運転効率が良くなります。ただ、室外機に直接水道水をかけると熱交換器の劣化が進んでしまう場合もあるため、おすすめしていません。室外機には、水をかける代わりに日陰を作ることをおすすめします。例えば、室外機から1メートルくらい離れたところによしずを立て掛けたりすると、風通しを妨げずに日陰がつくれます」

もちろんエアコンの室外機は雨で濡れることを想定している。ただし、水道水を使った打ち水はあくまで室外機の周辺にとどめておこう。

風量は「自動」がおすすめ

もうひとつ気にかかるのが「風量」の問題だ。イメージ的には風量が「強」よりも「弱」の方が、電気代が抑えられそうだが……。

「実は、風量が"弱"だとエアコンが吸い込む空気と吹き出す空気の量が少ないため、部屋全体を涼しくするまでに時間がかかってしまいます。エアコンは、室内機に空気を取り込み、その空気を室内機の中で冷やして部屋に戻します。フィルターにホコリが溜まっている場合もそうですが、風量が少ないと部屋の中が設定温度に到達するまでに時間がかかり、その分、電力も多く消費してしまいます」

「ダイキンとしておすすめしているのは風量自動です。風量自動は、部屋の中ができるだけ早く涼しくなるようにまずは強めの風量で運転して、あとは温度を維持するための少ない電力での運転に自動で切り替わります」

言い換えれば、電力量を抑えるためのポイントは、「設定温度にいかに早く到達するか」ということのようだ。

「そこは大きなポイントです。エアコンの室外機の中には圧縮機と呼ばれる部品が入っています。これは空気を冷やしたり温めたりするのに必要な、いわばエアコンの心臓部で、エアコン全体の消費電力の約80%を占めています。設定温度に到達するまでの間、この圧縮機への負担が大きくなります。室温が設定温度に達するのが遅いと、その分、圧縮機に負担がかかります。圧縮機への負担を軽くするには、できるだけ早く設定温度に到達する必要があるわけです」

それでは、「省エネのために一番おすすめの温度はどれくらいなのか」と尋ねようとした瞬間、「そんなの温度は高ければ高いほど電気代は安くなるにきまっているだろう」と気づいた。念のため、重政さんに尋ねたところ「それはもちろんそうですね。ただ、節電のために無理をしてまで設定温度を高くするのは、あまりおすすめはできません。熱中症の心配もありますし」と少し困らせてしまった。

すでに真夏日というニュースが流れているが、これから夏本番には、どうしてもエアコンに頼らざるを得なくなってくるだろう。重政さんのアドバイスを参考に、効率的なエアコン運用を目指してほしい。