過去5期平均DOEでランキングした

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株主還元指標として注目度が増している「DOE」。その数値が高い順にランキングした(イメージ写真:years / PIXTA)

株主へ支払う配当を大幅に増やし、株主還元を充実させる上場企業が相次いでいる。従来掲げてきた配当性向を引き上げたり、新たな還元指標としてDOE(株主資本配当率、Dividend on equity ratio)を採用したりする動きが盛んだ。


これまで配当還元の指標としては、期間利益の純利益に対する配当総額の割合を示す配当性向(「配当総額」÷「純利益」、%)が一般的だった。

ただ、純利益は事業の好不調や臨時損失などで年度ごとにブレることもある。そこで、株主資本に対する配当総額の割合を示すDOE(「配当総額」÷「株主資本」、%)もあわせて採用する企業が急速に増え始めている。

たとえば野村不動産ホールディングスは「不透明な事業環境下での配当の安定性を高めるため」として、今2025年3月期から、配当性向目標とは別にDOE4%を配当下限とする方針を追加した。ダイセルも従来掲げている総還元性向40%の目標に加えて、新たにDOE4%以上の目標値を採用している。

収益性や資本効率の高い企業が上位に並ぶ

DOEは「配当性向(配当÷純利益)×ROE(純利益÷株主資本)」に分解できる。したがって、DOEの数値が高い企業とは、配当性向とROE(株主資本利益率)のどちらか、または両方が高い企業を指す。このため、海外の機関投資家の間でDOEは以前から非常に重視されている指標だ。

そこで今回は、6月17日発売の『会社四季報プロ500』2024年夏号に掲載した「過去5期平均DOEランキング」の一部を紹介する。

過去5期の平均DOEが28.5%でトップとなったのはZOZO。アパレルのネット通販サイト「ZOZOTOWN」を運営し、2024年4月から日経平均構成銘柄となっている。同社は過去5期平均のROEが62.5%に上り、株主資本を使って非常に効率よく稼げている会社だ。

同社はブランドからの商品供給が増え続けており、今期は取扱高が一段と伸びるほか、広告事業も好調であることから、連続最高益となる見通しだ。年間配当についても107円を見込んでおり、配当性向は70%に達する。

2024年3月期以降のおおむね5年平均で、総還元性向は8割超を目指している。事業の成長によって配当原資を積み上げ、株主還元へとつなげる好循環を実現しているといえよう。

2位には通信大手のソフトバンクがランクイン。平均DOEは25.5%。同じく過去5期平均のROEも31.2%と高い。今期はメディア・EC(ネット通販)事業が拡大するほか、決済サービス「PayPay」の利用が拡大し、前期赤字だった金融部門が黒字化する見通しだ。

同社は「中長期的な成長と株主還元の両方を重視」しており、「高水準の株主還元を維持」する方針。配当性向は81.8%を見込んでおり、配当利回りも4%台と高い。

『プロ500』夏号では上位100社を掲載

3位に入ったのは、時価総額400億円台のリソー教育。首都圏を地盤に個別指導受験塾「TOMAS」などを展開し、過去5期平均DOEは23.8%だった。同社は配当政策として、「配当性向50%以上をメド」としている。

4位には日本オラクルがランクイン。データベース管理ソフトで世界シェア首位のアメリカ・オラクルの日本法人であり、過去5期平均DOEは23.5%と高水準。また過去5期平均ROEも29.5%に上る。12期連続増配を見込んでおり、2024年5月期の年間配当は173円と、前期比で11円の増配となる見込み。

このように、今回取り上げた上位30社には、今期配当利回りの高い企業が目白押し。6月17日に発売する『会社四季報プロ500』2024年夏号では上位100社までの完全版ランキングを掲載している。


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(佃 陸生 : 東洋経済 記者)