ファーストリテイリング(Fast Retailing)は、同社最大のブランドであるユニクロ(Uniqlo)で米国の顧客に広く知られているが、現在はもうひとつのブランドを米国の顧客に紹介しようとしている。同社は、より価格帯が低く若いZ世代の顧客にフォーカスしたユニクロの姉妹ブランドであるジーユー(GU)の米国初の旗艦店を、今秋オープンする予定だ。

1万平方フィート(約930平方メートル)の店舗が、この4年間で84%増の小売店入居率を記録した人気の商業地であるニューヨーク市のソーホーにオープンする。その前には、同じくニューヨーク市で2022年後半からジーユーポップアップが試験的に運営されており、今夏まで営業を続ける予定だ。なお、旗艦店に加え、ジーユーのオンラインストアもはじめて米国の顧客向けにオープンするという。

ジーユーはアジアで400店舗以上を展開しているが、それ以外の市場に進出するのはこれがはじめて。ファーストリテイリングは昨年9月、ニューヨークにジーユー商品開発オフィスを設立し、米国市場専用にフットウェア、バッグ、アクセサリーの新商品を開発してきた。

専門職の採用とインフルエンサーの活用



ジーユーの柚木治CEOは、ポップアップの収益性が高かったことから、米国でのブランドの将来性に大きな期待を寄せている。「ポップアップストアで学んだことを活かして、グローバルレベルでの商品開発や事業運営の枠組みを確立した」と同氏は語る。

その枠組みを具体的に言うと、現地で専門職の人材を採用することだという。ジーユーは、ニューヨークの商品開発の拠点で働くデザイナーやパタンナーをニューヨーク地域で採用し、デザインプロセスにアメリカの視点を導入する計画だ。さらに、ファーストリテイリングは北米展開のマーケティングにあたり、米国を拠点とするインフルエンサーやコンテンツクリエーターに重点を置くという。

2月の時点で米国内にはファーストリテイリング傘下の店舗が53店舗あり、8月末までにジーユー旗艦店を含めてさらに20店舗がオープンする予定。同社は、ヘルムートラング(Helmut Lang)やセオリー(Theory)などのファッションブランドを擁するリンク・セオリー・ホールディングス(Link Theory Holdings)も所有しており、昨年の売上高は、全体で200億ドル(約3兆800億円)近くに達していた。

成長の柱は北米、欧州、東南アジア



こうしたことに加え、ファーストリテイリングが米国で大きく成長する可能性があることを示す強力な証拠がすでに存在している。

「北米、欧州、東南アジアは、ファーストリテイリング全体の柱となる成長分野で、2024年度上半期に大幅な増益を達成した」と、ファーストリテイリングのCFOである岡粼健氏は述べ、「これらの地域が、この期間の全体的な成長の重要な原動力となり、新たな記録的な業績を達成するのに貢献した」と話す。

北米では、ファーストリテイリングの全ブランドで店舗売上高が2桁の伸びを記録。岡粼氏によると、ファーストリテイリングでは、この成長が続けばことしの米国での売上高は記録的なものになると予想しているとのことだ。昨年、ファッション界ではバイラル化したユニクロの20ドル(約3000円)のショルダーバッグがもっとも話題の商品のひとつとなったが、部分的にはこれが勢いを後押ししているという。

[原文:Uniqlo parent Fast Retailing is betting big on US stores and targeting Gen Z]

DANNY PARISI(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:島田涼平)