4月28日、補選の結果を受け、取材に応じる自民党茂木敏充幹事長。左は小渕優子選対委員長(写真・時事通信)

 4月28日の衆院補選で、自民党は東京15区、長崎3区においては独自候補を立てずに不戦敗、島根1区では元財務官僚の錦織功政(にしこり・のりまさ)氏を立てるも、立憲民主党の亀井亜紀子氏に敗れ、3敗となった。

4月28日付の産経新聞は《自民党内で「岸田おろし」気配薄く 有力な代役不在》、日テレニュースは《補選3敗で「解散」戦略に狂い…「岸田おろし」すぐには起きず?》として「岸田降ろしはすぐには起きない」などと報道した。

《有力なポスト岸田候補も不在で、「岸田降ろし」の動きがすぐに本格化する気配は薄い》

《複数の自民幹部や議員が「解散しなくても総裁選の勝機はある」との認識を首相や首相周辺に伝えている。幹部の一人は「岸田首相の他にいない」と語る》(ともに産経新聞)

 など、9月の総裁選まで、解散はないかのような印象を与える内容だった。これらを受け、それぞれのニュースサイトコメント欄には、辛らつな意見が投稿された。

《次期総理候補と言われる人たちも、この状況で岸田さんの後を継ぐのは嫌でしょ、世論から袋叩きにされるのは目に見えてるから。なので、岸田さんをおろすよりも戦況が読めるまでは岸田さんにサンドバッグになってもらって、次の総理に岸田さんの尻拭いで世論から叩かれる役目を背負ってもらい、その次の総裁を狙ってると思うよ》

自民党が島根1区で敗北を喫したことは、単なる選挙の失敗以上の意味を持つ。この地区での敗北が初めてという事実は、党内のリーダーシップと組織力の衰退を如実に示している。さらに、党内に岸田文雄首相の有力な後継者が見当たらない現状は、党の深刻な人材不足を露呈している》

《政権与党である自民党が、自分達の都合のいいように、国政を行ってきた。大事なことは閣議決定、議論も深めないうちに数の力で通す、都合のわるいことははぐらかしたり、じらしたり。今の良識ある一般国民の生活はどうなっていますか?取り巻きだけが満足していませんか?今回の選挙のように、声をあげて、行動していくことが大事だと考えます》

《今回の自民党敗北は、党内の深刻な問題点と国民の期待に応えられない現状を知るべきである。党幹部の責任問題を明確にし、岸田政権は早期退陣すべきである》

 果たして、岸田首相は辞めるのか、続けるのか。

「岸田首相は補選で3敗しても、解散しますよ」

 じつは、首相周辺を取材する政治部デスクは、補選前にこう話していた。

「6月23日の今国会会期末までに、大胆な人事刷新を図ったうえで、衆院解散に踏み切るはずです。首相は4月、側近議員に『真意を問わずに総裁選を迎えることはない』と話しています。衆院補選で3敗しても『国民に真意を聞く』と譲らないようです。茂木敏充幹事長は『解散できるわけがない。強行するなら閣僚が閣議決定書にサインしない』と言っていますが、閣僚を罷免して、首相ひとりでも解散を断行できますから。首相と茂木氏の信頼関係は、いまやゼロになっています」

 さらに続ける。

「最近の首相は、岸田派を解散するときも、安倍派幹部を処分するときも、あまり他者に意見を聞かず、トップダウンでやる傾向があります。解散せずに9月の総裁選へ、というシナリオは可能性としてはほとんどない。かりに解散できなかった場合は、次の選挙の顔選びの場となる総裁選に出ても、再選できる可能性は皆無に等しいですから。解散できなければ、菅義偉前首相のように総裁選に出馬せず、1期で終わることになります。

 どういうことかと言うと、衆院選で勝った実績がなければ、どんな総裁候補が出ても『岸田よりは選挙の顔になる』と、官邸幹部が口をそろえているからです。つまり、岸田首相は、解散せずに総裁選に出ても、ほかの候補に確実に負けるということです」

 元安倍派のベテラン議員秘書は、「もし解散を強行するなら、岸田さんは自分のことしか考えていないということになるね」と吐き捨て、こう語る。

「『週刊文春』の議席予測では、自民が73議席減らすと衝撃の数字が出ていましたが、実際にはそこまではいかずとも、50議席くらいは減るだろうと党内では分析されています。そんな状況で解散総選挙をされたら、現職の自民党議員たちはたまったものではありません。自民党の人間なら、選挙なんかいまは誰もやりたくないのです。どうしてもやるというのなら、6月末までに内閣支持率を大幅にアップさせてからにしてもらいたい」

 いまから2カ月が、岸田首相の正念場となる。