中国の半導体業界は「利益なき繁忙」の様相を強めつつある。写真はSMICの生産施設内部(同社ウェブサイトより)

中国の半導体メーカーの業績低迷が続いている。半導体の受託製造(ファウンドリー)で中国最大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)が2月6日に発表した2023年10〜12月期決算は、設備稼働率の低下などが響き、前年同期比で大幅な減益となった。

具体的には、同四半期の純利益は1億7500万ドル(約260億円)と、前年同期比54.7%減少した。一方、同四半期の売上高は16億7800万ドル(約2489億円)と前年同期比3.5%の増収を確保した。

生産能力が1年で13%増加

同時に発表した2023年の通期決算は、売上高が前年比13.1%減の63億2200万ドル(約9378億円)、純利益が同50.4%減の9億300万ドル(約1339億円)となり、大幅な減収減益だった。

SMICは受注価格を下げて量を確保する戦略をとるが、設備稼働率の上昇につながらなかった。2023年10〜12月期の設備稼働率は76.8%と、前年同期比2.7ポイント、直前の7〜9月期比でも0.3ポイント低下した。

背景には同社がここ数年、生産能力の増強に巨額の投資を続けてきたことがある。2023年の設備投資額は74億7000万ドル(約1兆1081億円)に上り、同年末時点の生産能力は8インチウェハー換算で月間80万6000枚と、1年間で約13%増加した。

「生産能力の増強を進めた結果、設備稼働率を計算する際の分母が大きくなった。そのため、生産量および出荷量の増加にもかかわらず稼働率が低下してしまった」。SMICの共同CEO(最高経営責任者)を務める趙海軍氏は、業績説明会でそう釈明した。


SMICはさらなる減益を見込んでいながら、2024年も前年並みの設備投資を継続する。写真は上海市の本社工場(同社ウェブサイトより)

さらに趙氏は、2024年の事業環境も厳しい状況が続くとの見解を示し、次のようにコメントした。

「2022年以降、(ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに)グローバルなサプライチェーンの不確実性が高まり、地政学的な観点に基づいた(自国内での)半導体生産設備の建設投資がますます膨らんでいる。その一方、景気循環や消費低迷などの影響で需要の回復が遅れており、ファウンドリー業界が設備稼働率を短期間で回復させるのは困難だ」

1〜3月期はさらなる減益を予想


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2024年1〜3月期の業績について、SMICは売上高に関しては2023年10〜12月期比で横ばい、または2%程度の増収を見込んでいる。一方、利益率はさらに低下し、1〜3月期の粗利率は10〜12月期より5ポイント前後低い9〜11%になるとの予想を示した。

にもかかわらず、設備投資に関しては2024年も前年とほぼ同規模を維持する方針だ。SMICによれば、過去数年間に公表した12インチウェハー対応の生産ラインの建設計画に変更はないという。

(財新記者:翟少輝)
※原文の配信は2月7日

(財新 Biz&Tech)