乗り遅れた人向け「ティアキン」の楽しみ方! 「もう疲れちゃって全然動けなくってェ」の現代人を想定した緻密な設計
今年発売された数々の大作ゲームソフト。その中からひとつ挙げるとすれば、とりあえず「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」(以下「ティアキン」)は外せないのではないのでしょうか。
本作は発売から半年以上経ちますが、12月8日にロサンゼルスで開催された「The Game Awards 2023」でも「ベストアクションアドベンチャー」を受賞するなど、最近でもまだまだ話題の多いタイトルです。
ゲームの舞台は前作「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」と同じく「ハイラル」ですが、前作の物語から数年経過し、各所に様々な変化が見られます。特に本作では地底と天空が新たに追加されました。地底はハイラル全土に広がり、マップは前作の倍以上。天空についても世界の各所にさまざまな「空島」があり、探し出すだけでもワクワクします。
もちろんマップが広いと聞いて移動が面倒と感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし本作はリンク(主人公)に備わった新たな能力を駆使することで、移動も含めて楽しめます。
馬がなくても、「ウルトラハンド」という能力で身近な資材置き場にある板や車輪などをくっつけ、即席の車を作って走ることができます。また、ふと空から空島のかけらが降ってきたら「モドレコ」という能力を使うチャンス。移動してきた物体の時間を巻き戻せるため、かけらの上に乗って使えば、エレベーターのように素早く山をも超える高さへ登っていけます。あとはパラセールで滑空するなどしてラクラク進めるというわけです。
家や洞窟の天井をすり抜けられる「トーレルーフ」も便利です。頭上にちょっとしたでっばりを見つけた場合も、周りの壁を登る手間が省けます。また、各地に点在する「鳥望台」を使えば一気に上空へ飛び上がれて、スカイダイビングを楽しめます。
大空でまだ見ぬ空島を探すのも楽しめますが、はるか上空からハイラルを見渡せば、まだクリアしていない「祠」(ミニダンジョン)や、地底に続く大穴など、様々な発見があります。何かやりかけているチャレンジがあったとしてもつい寄り道したくなる楽しみは、前作より豊富です。
そして先に挙げたウルトラハンド、これが時間泥棒です。くっつけられるものとして板や車輪といった単純な物体に加え、「ゾナウギア」と呼ばれる機械の部品がさまざま登場します。トロッコや車の動力となる「扇風機」、自走する「タイヤ」、自由に乗り物を操作できるようになる「操縦桿」、さらには進行方向に向かってまっすぐ飛んでいく「ロケット」や、敵を自動で追尾する「追跡台車」も。
これらを使って戦車を作る人もいれば、自由に飛び回るドローンを作る人もおり、全自動で敵を攻撃するロボットを組み立てる人も……と、世界中に様々なプレイヤーが現れました。ものをつくるのが好きな人は、これだけで無限に遊べます。
もちろん、攻略だけなら必ずしも凝ったものを作りだす必要はありません。例えば新しいゾナウギアが出てくると、そのギアを使って攻略する祠がだいたい近くにありますが、そこでは各ゾナウギアの最低限の用途さえわかればクリアできるようになっています。
どの祠も攻略にかかる時間は大体10〜15分程度。クリアすることでリンクのハート(ライフ)やがんばりゲージ(スタミナ)を増やすのに必要なアイテムが手に入るようになっています。また、祠自体がワープポイントになっていて、難しければいつでもワープして再挑戦できるので、一旦放置してもOKです。
マップの移動に便利なワープポイントとなり、ゾナウギアなど冒険のチュートリアルや、リンクも強化にも役立つ祠。いくつものメリットがあるこれらのミニダンジョンでの“遊び”が、本作のプレイをより楽しくしてくれているように感じます。
時間のない平日は30分〜1時間程度のプレイで、「祠」を2〜3個見つけてクリアするだけでも達成感が得られます。休日のまとまった時間が取れるときに、メインとなる物語や神殿など大きなダンジョンの攻略を進めたり、ウルトラハンドでより凝った構造物を作ったりして楽しむというプレイスタイルを取るのも良いでしょう。
そう考えると、本作はオープンワールドであり、クリエイティブなゲームでもありながら、ソーシャルゲーム的な手軽さも同時に兼ねそろえているような気がします。やりこみたい人はとことんまでやりこめる上、気軽に遊びたい人の満足も満たしてくれる間口の広さが、本作にはあります。
そもそも「ゼルダの伝説」というゲームは、シリーズ初期から「発想や閃きをプレイヤーに求める」ゲームでした。ダンジョンの中で新しいアイテムが手に入れば、それを使って謎解きやボス戦などを楽しむことにやりがいがあり、本作でもその要素は健在です。
そういった意味でもゼルダの伝説は、歴代のシリーズを通して「閃きを生む装置」と考えることもできるかもしれません。
ただ過去作は、途中で行き詰って挫折してしまうユーザーがいたという話を聞くこともありました。今作はできることが幅広く道筋も自由なので、「今は難しいから後で」と一旦放置し、その間に別の挑戦を進めるという遊びがやりやすくなっています。
考えてみれば現代のビジネスも、「1つのことに固執すること」が必ずしも良策とは言えません。時にはそのタスクを一旦止めて他のことに目を向けつつ、新たな閃きが起きた際に再び戻って進める、ということも必要な時があります。
本作も、クリアできなければ一旦そのダンジョンから離れ、他のチャレンジを進めたりアイテム集めに精を出してみると良いでしょう。あるいは、一旦プレイ自体から離れてみることも。そこから日常生活のふとした瞬間に「ひょっとしてアレとアレを組み合わせたらうまくいくかもしれない」という閃きが生まれ、前へ進める快感が味わえる場合もあります。
昔ながらの「閃き」の要素も大事にしながら、令和のユーザーに向けて間口も広くなり、遊びごたえもグッと深くなった本作。筆者はこの作品を、今年ぜひプレイしておくべきソフトの1本として推奨いたします。
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