クレジットカードやキャッシュレス決済にまつわる疑問や悩みに、“クレカの鉄人”岩田昭男師範が答える連載企画。今回は、知っておけば必ず得する2024年のマネーのトレンドを岩田師範が大胆予想。2023年のトレンドを振り返りながら、2024年の必修キーワードを徹底解説します。

【第12回】2024年に注目すべきマネーの話題を教えてほしい!

 

【解説する人】岩田昭男

クレジットカード分野の取材・研究に30年以上携わるオピニオンリーダー。『あなたの生活をランクアップさせる プレミアムカード』(900円/マイナビムック)など著書・監修書多数。

 

【今月の悩める子羊】琴司茂 徳則(ことしも とくのり)

妻と2人の息子と暮らす40代男性。受験を控えた子どもの教育費がかさむなか、ここ数年の急激な物価高騰で食費や雑費もばかにならず、将来が少し心配になってきた。2024年こそはマネーのトレンドにのってうまくやりくりができるよう、師範に話を聞きに来た。

 

相談者の要望

○2024年、チェックすべきマネーのトレンドを教えてほしい

 

琴司茂 はぁ……。

師範  どうしたんじゃ。ため息なんかついて。

琴司茂 いえ、物価も光熱費も右肩上がりで、2023年は出費の多い一年だったなと思って。2024年こそは損することがないように、注目すべきキーワードを教えてほしいんです!

師範  おう、そうか。2024年こそは、しっかり得する年にしたいのう!

 

国内最大規模のポイント経済圏誕生!「新生Vポイント」

師範  まずは大躍進を遂げた、Vポイントの話からじゃ。

琴司茂 Vポイント? CMとかでチラチラ見たりはしましたが、そんなに凄かったんですか?

師範  凄いなんてもんじゃないぞ。一気にdポイントや楽天ポイントと肩を並べるまでに急成長しとるんじゃ。

琴司茂 ええ、そこまで!? そもそもポイントと言えば、Tポイントじゃないですか。

師範  そこなんじゃよ。実はな、2024年春で、TポイントはVポイントに統合されるんじゃ。

琴司茂 あのTポイントがなくなるってことですか? 時代も変わるんですね。でも、そもそもVポイントって何なんですか?

師範  Vポイントとは、三井住友カードのポイントプログラムで獲得できるポイントのこと。元々は2001年からあったポイントじゃが、毎月のカード利用金額合計1000円ごとに1ポイントを付与していた「ワールドプレゼント」が、2020年に200円ごとに1ポイント獲得できる「Vポイント」にリニューアルしたのをきっかけに、急速にサービスを拡大させているんじゃ。特に、今回のTポイントとの統合は大事件じゃな。

琴司茂 統合ってことは、TポイントのユーザーがマルっとVポイントユーザーになるってことですか?

師範  そのとおり。単純計算で会員数は1.46億人にもなり、楽天ポイントやdポイントをも超える存在になるぞ。

↑新生「Vポイント」のロゴマーク。従来のTポイントのロゴデザインをベースにVのマークを印象的にあしらった青と黄色のVポイントが誕生する

 

また、ナンバーレスカードとして知られる「三井住友カードNL」の登場でVポイントが貯まりやすくなったり、三井住友の金融サービスをアプリでシームレスに利用できる「Olive」の登場も注目を集めている所以じゃ。Vポイントが貯まる三井住友系のサービスはどんどん拡大しておるから、いまVポイントを貯めないのはもったいない。

琴司茂 うーん、そこまでとは思いませんでした。いますぐ始めます!!

 

全国の公共交通機関で拡大中!「タッチ決済乗車」

師範  次のキーワードは「タッチ決済乗車」かな。

琴司茂 Suicaでタッチして乗車……ですよね? そんなの当たり前じゃないですか

師範  いやいや。Suicaだけじゃない。実は最近、クレジットカードをタッチして乗車できるサービスが関西圏を中心に拡大しつつあるんじゃ。

琴司茂 へえ! それはすごい。

師範  関西では南海電鉄に加え、阪神・阪急・近鉄の私鉄3社、さらに大阪メトロや大阪モノレール各社のほぼ全駅が2024年度中にタッチ決済乗車に対応を予定しとる。インバウンド対策が一番の目的じゃが、国内在住の利用者もクレジットカードのポイントが貯まったりチャージ不要で乗り降りできたりといった恩恵が受けられる。

↑リップルマークと呼ばれるタッチ決済対応マークが施されたクレジットカードや、設定済みのスマホを対応自動改札機にかざして利用

 

琴司茂 ちなみに関東はどうなんですか? 私はSuicaユーザーなので、関東の方が気になります。

師範  首都圏では2023年4月から江ノ島電鉄が全線でタッチ決済を導入したのを皮切りに、東急電鉄も田園都市線での実証実験を開始。2024年春には東急線全線への拡大を目指しとる。

京王電鉄も名乗りを上げとるし、地下鉄では東京メトロも2024年度中にクレカのタッチ決済とQRコードを使った乗車システムの実証実験を開始予定じゃ。ただ、Suicaの使用範囲であるJR東日本ではまだ積極的ではないようじゃがな。

琴司茂 うーん、面白いですけど、JR東日本でやってくれないのはちょっと残念です。

師範  実は、JR東日本も殴られっぱなしではないようじゃ。それについては次のキーワードで解説しよう。

 

楽天経済圏とのタッグで巻き返しなるか「Suica経済圏」

琴司茂 最近Suicaは他のサービスに押されて、あまり目立たない印象です。

師範  いやいや、Suicaもただ手をこまねいているわけではない。ワシは来年こそ、Suicaの逆襲が始まると思っているんじゃ。注目はSuica経済圏じゃ。

琴司茂 Suica経済圏ってなんですか? 楽天経済圏とかは聞いたことあるんですが……。

師範  これまでSuicaはコンビニや駅ナカでの利用が主で、チェーン店では使いにくい一面があった。ただ、最近Suicaは楽天ポイントとの連携を強化。2023年には、iPhoneでも楽天ペイからモバイルSuicaへのチャージが可能となり、楽天ポイントが使って貯まるようになった。

これはあくまでもワシの予想じゃが、来年以降はこれまで以上に楽天との連携を強固にして、楽天カードが利用できるチェーン店でもSuicaが利用できるようになるのでは、と期待しとる。これまで使いやすくとも利用範囲が狭かったSuicaの利用範囲がより広くなると見とるんじゃ。

↑従来、Android端末では「モバイルSuica」の発行・チャージが可能だったが、2023年6月よりiPhoneの利用者も「楽天ペイ」アプリと「モバイルSuica」を連携して直接チャージできるようになった

 

琴司茂 Suica1枚で生活ができるように……なったらうれしいですね。

 

新しいポイ活ツールとして大注目「誰でもゴールドカード」

琴司茂 そういえば、クレジットカードって最近どうなんですか?「〇〇ペイ」みたいなQRコード決済勢に押されて、ちょっと存在感がなくなっているのかなと思ったんですが……。

師範  いや、そういうわけではないようだぞ。クレジットカード業界もちゃんと盛り上がっておる。特にゴールドカードはハードルがここ数年で下がったことで、新たなポイ活のツールとして、ゴールドカードが注目を集めてきとるんじゃ。

現に、2023年11月にNTTドコモが発表した調査によると、ゴールドカード保有者の約6割が個人年収400万円未満。初めてゴールドカードを持ったきっかけの1位が「ポイントやマイルが貯まりやすいから」という結果が出た。つまり、いまやゴールドカードはステータスのためのものではなく、使い方次第でお得を享受できる新しいツールになってきたんじゃな。

琴司茂 そうなんですね。でも、ゴールドカードってサービスは充実しているけど、還元率とかは一般カードと比べて大差ないことが多いと聞いたことがあるような。私はゴールドカードを持ってもサービスを使いこなせる自信がないし……。

師範  実は、ゴールドカードの還元率も最近上がってきているんじゃ。例えば、最近注目を集めているのが、三井住友カードの「Oliveフレキシブルペイ(ゴールド)」。Google PayやApple Payに登録して特定の店舗で使えば7%還元でポイントを獲得できるというすぐれもの。

しかも「三井住友銀行」アプリに月一回ログインで+1%、同アプリ内で「Vポイントアッププログラム」を選べばさらに+1%、合計で9%還元が達成できるんじゃ。

琴司茂 そんな簡単に9%はすごい! だけど、どうせ特定の店舗っていうのがかなり少なかったりするんじゃないですか?

師範  いや、セブン-イレブンやローソン、サイゼリヤなど全国チェーンばかりじゃよ。

琴司茂 でも年会費も、お高いんですよね?

師範  初年度は5500円じゃが、年間100万円以上の利用で、次年度以降年会費が永年無料になるんじゃから、これは見逃せん。

琴司茂 毎月の光熱費などの支払いを集約すれば確かに、手の届かない話ではないですね。

師範  ゴールドカードのハードル低下はこのカードだけにとどまらん。例えばNTTドコモの「dカード GOLD」のようなキャリア系のゴールドカードなんかは、通信費の支払いに利用することで年会費をペイできる場合もある。これまで「ゴールドカードは年会費が高いし私には不向き」と思っていた人も、ぜひ改めて情報をチェックしてほしいものじゃ。

 

クレカ積立額が最大10万円に拡大「ほったらかし新NISA」

琴司茂 そういえば、NISAが今年から変わったと聞きましたが……。

師範  そうなんじゃ。2024年1月から新NISAが始まるんじゃな。

琴司茂 いったい何が変わるんですか? 色々と記事が出ていて、結局何が違うのかよくわからなくて。

師範  まず、変わるのが年間の投資上限額。これまではつみたてNISAが年間40万円、一般NISAが年間120万円までじゃったが、新NISAではつみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円、合計360万円までが投資できるんじゃ。月の積立も、月額10万円まで拡大したぞ。

琴司茂 あれ、つみたてNISAと一般NISAの区分けはどうなったんですか?

師範  実はこれまでつみたてNISAと一般NISAは併用ができなかったが、新NISAでは併用できるようになった。

琴司茂 それは便利ですね!

師範  一番のポイントは非課税保有限度額も上がったこと。つみたてNISAが最大800万円、一般NISAが最大600万円だったのが、新NISAでは1800万円(内、成長投資枠が1200万円まで)に上がったのが大きい。

琴司茂 かなり上がりましたね。

師範  それと、非課税保有期間も変わったようじゃぞ。

琴司茂 たしか、これまではつみたてNISAが最大20年、一般NISAが最大5年でしたよね。そこそこ長いイメージでしたが……。

師範  それが、新NISAでは保有期間が無期限になった。

琴司茂 うわ、そこまで変わったんですね! それならやらないと損ですね……。

師範  マネー系の情報を逐一チェックするのは大変じゃが、半年に一回だけでもざっくりと情報を確認しておくといいじゃろう。せっかくラクに得できる話題があるのに、それをスルーしてしまうのはとてももったいない。

琴司茂 積極的に情報をキャッチして、来年こそはお得をゲットします!

 

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構成/佐伯尚子 文/鹿野 薫 監修/岩田昭男