紛失したMacBookを取り戻したものの、勝手にアクティベーションロックをかけられてしまいどうすることもできなかったという人物が、Appleのティム・クックCEO宛にメールするだけで問題が解決したとして体験談をつづりました。

Unbricking my MacBook took an email to Tim Cook | TokyoDev

https://www.tokyodev.com/articles/unbricking-my-macbook-took-an-email-to-tim-cook



MacBookを紛失したのは、日本でソフトウェア開発者の仲介を行うサービス「TokyoDev」を展開するポール・マクマホン氏です。同氏は空港の保安検査でMacBookを他人のものと取り違えてしまい、1カ月後に取り戻しました。

ところが、取り戻したMacBookにはアクティベーションロックがかけられていたそうです。さらに誰かが新しいApple IDと端末を紐付けた上で「探す」機能をオンにしていたことから、サポートに連絡してもマクマホン氏本人の端末だとは認めてもらえなかったとのこと。

Appleの「探す」は強力な端末保護機能で、これをオンにしたままで端末初期化を行おうとするとエラーが発生し、強制的に初期化した場合はアクティベーションロックがかかります。マクマホン氏は端末の「探す」をこれまでオンにしたことがなかったため、見知らぬ誰かに「探す」をオンにする余地を与えてしまっていました。教訓として、マクマホン氏は必ず「探す」の設定をオンにするべきだと警告しました。



上記の問題がマクマホン氏によってブログに公開された後、ソーシャルニュースサイトのHacker Newsなどで一時話題になりました。マクマホン氏はAppleの誰かに気づいてもらえないかと思っていたそうですが、現実はそう甘くありませんでした。ところが、ある日マクマホン氏が自身のDiscordサーバーで問題を共有したところ、モデレーターの一人がティム・クックCEOのメールアドレスとされるものを紹介し、ここにメールしたことで問題が解決したことがあると伝えてきたといいます。

他に手段もなかったため、マクマホン氏はクックCEO宛にメールを作成。「紛失したMacBookがアクティベーションロックがかかった状態で戻ってきました。ストアの領収書を提出したにもかかわらず、ロック解除を拒否されました。私はこの経験について記事を書き、人気ソーシャルメディアサイトのHacker Newsのトップに掲載されました。この悔しい物語をハッピーエンドで終わらせたいと思います」と書いて、実際に送信したとのこと。



4営業日後、日本にいるクックCEOのエグゼクティブ・アシスタントの一人から返事がありました。マクマホン氏はそこから2週間にわたってメールや電話でやり取りをし、アシスタントに事態の真相を解明してもらったそうです。

アシスタントによると、MacBookはマクマホン氏が紛失した後に一度初期化され、その後「p」で始まるメールアドレスで新しく作成されたiCloudアカウントによって「紛失」と報告されたとのことでした。紛失が報告されたデバイスのロック解除は、たとえ購入時の証明書が提出されていたとしても行わないという同社のポリシーに従い、マクマホン氏のロック解除リクエストは却下されたということだったそうです。



マクマホン氏のMacBookがロックされてしまった背景には、悪徳ショップの存在があったようです。

マクマホン氏はMacBookを取り違えてしまった相手ともやりとりをしていたのですが、いわく、その人はMacBookを一度ショップに持ち込んでロックの解除を依頼していたとのこと。その際、ショップはこっそり端末を初期化し、勝手にApple IDを作成してMacBookと紐付け、「ロックを解除した」と偽って料金を請求してきたそうです。残念ながらその人は偽りの対応に気づいていませんでした。

ショップ側がMacBookのApple IDを管理することで、端末をロックしたり、紛失と報告したりすることがいくらでも可能になります。ここからはマクマホン氏の推測でしかありませんが、後からショップ側が端末をロックすることで、さらにロック解除料金をせしめる目的があったのではないかとのこと。

しかし、マクマホン氏が改めて書類を提出したため、アシスタントはMacBookがマクマホン氏本人のものであると確信し、無事ロックの解除に至りました。マクマホン氏は「最初に提出した以上の証拠は提供していないのですが、なぜか対応されました。通常のルートで解決できない問題がある場合は、ティム・クックにメールしてみる価値があるでしょう」と述べました。

マクマホン氏は「MacBookを初めてアクティベートする際、Appleは『探す』の設定を簡単にスキップできるようにしています。しかし、設定を行わないと深刻な結果を招くことを考えると、セットアップのワークフローを修正してデメリットを明確にするか、ロック解除ポリシーを全面的に見直す必要があると思います。今回私が遭遇したのは『他人にMacBookを悪徳ショップへ持っていかれる』というレアケースでしたが、同じような悪徳ショップは他の人にも同じことをする可能性があります」と総括しました。