楽天モバイルがつながりやすくなる? 今さら聞けない「プラチナバンド」の基礎知識
2023年10月23日、「楽天モバイルがプラチナバンドを獲得した」というニュースが大きく報じられました。
「念願の獲得」「これで楽天モバイルがつながりやすくなる」と話題になっていますが、そもそもどうしてプラチナバンドを獲得すると、スマホがつながりやすくなるのでしょうか。
本記事では今さら聞きにくいプラチナバンドの基礎知識を、格安SIMやスマホのお得な情報、最新ニュースを発信するメディア・モバワン編集部が解説していきます。
なぜ、楽天モバイルはプラチナバンドを求めていたのか
そもそもプラチナバンドとはなんなのかを知るために、電波について解説します。
公共財である電波は、周波数ごとに放送用の電波、船舶・航空機用のビーコン、警察無線や宇宙研究など、さまざまな局面で活用されています。このうち私たちの生活にとって身近な携帯電話には、主に700MHz〜28GHzの周波数帯が使われます。
この周波数帯は、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンク、楽天モバイルの4社に配分され、各社がサービスを展開しています。その割り当てを示したものが下表です。
この表を見ると一目瞭然ですが、ほかの3社が4G(LTE)で幅広い周波数帯を確保しているのに対し、2020年4月に本格サービスを開始したばかりの楽天モバイルには、1.7GHz帯しか割り当てられていません。
1.7GHz帯のように比較的高い周波数の場合、「遠くまで届きやすく、通信速度が速い」というメリットがある一方、「コンクリートなどで電波が遮断されやすく、建物内に届きにくい」というデメリットがあります。
一方、700〜900MHz帯の比較的低い周波数の場合、「遠くまで届きにくく、通信速度が遅め」というデメリットはあるものの「電波が建物で減衰せず、屋内でつながりやすい」というメリットがあります。
電波が届きやすいという特性は、通信の品質を左右する重要な要素です。そのため、携帯電話にとって価値が高い希少な電波という意味で700〜900MHzの周波数帯が「プラチナバンド」と呼ばれています。
楽天モバイルに対しては「屋内や地下でつながりにくい」というネガティブなイメージがありますが、これは4G(LTE)では1.7GHz帯しか持っておらず、エリアカバーを広げるのに苦心していることが原因なのです。
現在はKDDI(au)から800MHz帯をパートナー回線として借り受け、自社が持つ1.7GHz帯と組み合わせてサービスを展開していますが、これを自社回線でまかなうため、プラチナバンドの割り当てを総務省に対して求め続けていました。
そして2023年10月23日、新たに700MHz帯が楽天モバイルに割り当てられることになったのです。
楽天モバイルはすぐにつながりやすくなる? 今後の計画を読み解く
サービスインから間もない頃のソフトバンクは、つながりにくい携帯電話の代名詞のように言われていた時期がありました。
しかし同社は2012年、900MHzのプラチナバンドを獲得。以降は通信品質が大きく改善し、シェア拡大につなげています。これと同じことが、楽天モバイルでも起こることが期待されています。
契約者増につなげるためには、獲得した700MHz帯によるエリアカバー拡大が急務と言えるでしょう。そこでここからは、楽天グループの決算資料を参考に、今後のプラチナバンド展開を読み解いてみます。
下図は、2023年8月時点のプラチナバンド割り当てスケジュールです。これによると、2023年12月から2024年の年初以降にかけて700MHzの電波発射が開始される予定となっています。
また、プラチナバンドは既存の設備を活用して展開すると説明しており、設置済みの基地局に新しいアンテナと無線機を取り付け、ソフトウェアアップデートを実行すれば低コストで展開できるとしています。
しかし、この計画に対してほかの大手通信キャリアトップが、「新しいアンテナを立てずに700MHz帯を展開することは難しいのではないか」と疑問を投げかける発言をしています。
楽天モバイルの計画どおりに事が進むのか、それとも他社トップが指摘するとおりにアンテナの新設が必要になり、プラチナバンドの展開が遅れるのか、2023年末からの動きに注目が集まっています。
また、楽天モバイルは700MHz帯だけでなく、800MHzおよび900MHz帯の獲得も目指して動いています。こちらはまだ計画段階ですが、今後さらなるプラチナバンドの獲得が叶えば、「Rakuten最強プラン」など格安の料金プランを打ち出している同社がシェアを一気に伸ばす可能性もあるでしょう。
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