激戦のJ1昇格争い 猛烈な追い上げを見せるジェフユナイテッド千葉が奇跡を起こすか
今季J2も残すところ6節となった現在、6連勝中のジェフユナイテッド千葉が強烈な追い上げを見せ、J1昇格争いに食い込んできた。
競馬風に表現するなら、一頭だけ違う脚色で追い込んでいる、といったところだろうか。
今季の千葉は、開幕戦こそ勝利で飾ったものの、続く8試合は勝利なし(5敗3分け)。その時点での順位はブービーの21位と、大きく出遅れてのシーズンスタートとなっていた。
その後、第10節で2勝目を挙げ、そこからの8試合は5勝1敗2分けと盛り返しの兆しをうかがわせたものの、第18節からは3連敗。第20節終了時点での順位を見ても、どうにか16位まで上げたに過ぎず、J1昇格が遥か彼方に霞んでいることに変わりはなかった。
ところが、である。
この3連敗を最後に、千葉の成績は一変する。
直後第21節の引き分けで、まずは連敗をストップさせると、徐々に白星が先行。第21節からの16試合では、現在継続中の6連勝を含めて10勝2敗4分けという猛チャージを見せている。
その間(第21〜36節)の成績だけを比較すれば、千葉が手にした勝ち点34はJ2最多。同じくシーズン後半の追い上げが目立つ清水エスパルスの同33をも上回る数字である。
順位表のうえでも、第35節の勝利で6位に浮上。ついにJ1昇格プレーオフ進出圏内に食い込むと、第36節の勝利で5位まで上げてきた。
怒涛の追い上げを見せるジェフ千葉が15年ぶりのJ1復帰を果たせるか!?
もちろん、こうした追い上げを実現できたのは、試合内容がともなってこそ。勢いを感じさせるのは、決して数字だけの話ではない。
千葉の試合を見ていると、ピッチ上の選手一人ひとりがハードワークをいとわず、攻から守、守から攻と素早い切り替えで強度の高いプレーを繰り返す。とりわけ、中盤での力強いボール奪取から繰り出す高速カウンターには、確実に相手ゴール前まで迫れるだけの威力がある。
「正直、プロに入って今が一番強度高くプレーできている実感がある」
今季新加入のFW呉屋大翔は、J1でのプレー経験がありながらもそう語り、「なかなかスタメンで出られなかったが、練習から強度高くやれたのが今につながっている。これを続けていきたい」と、手応えを口にする。
結果として、次のプレーを急ぎすぎるあまり、試合が落ちつかなくなってしまう時間帯がないわけではないのだが、今はそうした積極的なプレーの連続が相手を封じ込め、自分たちのリズムで試合を進めることにつながっているのだろう。
今季から千葉の指揮を執る小林慶行監督も、「まだまだ(目指すサッカーの)最終形態ではなく、やりたいことはある」と言いつつも、「今のチーム状態、進んできた道を考えると、これ以上何を(やらなければいけない)、というのはない」と、選手への称賛を惜しまない。
また、連勝を6に伸ばした直近第36節のベガルタ仙台戦を振り返っても、チームのキャプテンにして、今季全試合出場のDF鈴木大輔を累積警告による出場停止で欠いたにもかかわらず、今季初先発のDFメンデス、同14試合出場のDF佐々木翔悟の初コンビが穴を埋め、3−1の快勝。しかも、その佐々木がプロ入り初ゴールで先制点を決めるという、うれしいオマケまでついた。
殊勲の佐々木は、「たまたま(ロングスローからのこぼれ球が)オレのところに転がってきた。めちゃくちゃ運がよかった」と照れていたが、主力の欠場すらもプラスの要素に転換してしまえるのが、今の千葉の強さだろう。
「こういうゲームを勝てたことは、今のチームとってすごくポジティブなこと。(試合出場の)チャンスをつかめていない選手にとっても励みになったのではないか。(選手が入れ替わっても)すごくいいゲームができて、自分たちのサッカーをやれていた」
そんな指揮官の言葉どおり、波に乗るチームが持つ勢いを見せつける結果となった。
こうなると今後の注目ポイントは、千葉はJ1に昇格できるのか、ということになるのだが、自動昇格となる2位(清水)との勝ち点差は7まで縮まってきたとはいえ、残された試合数は6。現実的に考えて、逆転自動昇格の可能性はかなり低いと言わざるを得ない。
勝ち点5差の3位ジュビロ磐田、同4差の4位東京ヴェルディをターゲットに、残り6試合でひとつでも順位を上げて、プレーオフを有利に戦いたいところだ。
幸いにして今季のプレーオフにはJ1の下位クラブが参加せず、J2の3〜6位クラブのみでトーナメントが実施される。千葉は過去4度プレーオフに挑み、一度もJ1昇格を成し遂げられておらず、プレーオフとの相性がいいとは言えないが、小林監督が「強度と質にこだわって戦っていきたい」と語るように、このままの勢いでリーグ戦から短期決戦へと突入できれば、一気に勝ち抜いてしまう可能性は十分にある。
4コーナーを回って最後の直線、千葉が繰り出す驚異の末脚はどこまで伸びるのか――。大きな出遅れから一転、15年ぶりのJ1復帰がにわかに現実味を帯びてきた。