終盤を迎えている今季のJリーグで、識者が「今、見逃せない」と注目している選手たちがいる。ピッチでひと際輝きを放ち、活躍している、現在のリーグの主役たち。5人のライターにそれぞれ3人ずつ紹介してもらった。


柏レイソルの細谷真大(左)とアルビレックス新潟の三戸舜介(右)

【早川隼平のドリブルがキレている】

杉山茂樹(スポーツライター)

<注目選手> 
早川隼平(浦和レッズ/MF) 
俵積田晃太(FC東京/MF) 
細谷真大(柏レイソル/FW)

 冨安健洋(アーセナル)、鎌田大地(ラツィオ)、守田英正(スポルティング)、遠藤航(リバプール)......もいいけれど、欧州サッカー界に衝撃を与えている日本人選手の2トップと言えば三笘薫(ブライトン)、久保建英(レアル・ソシエダ)だろう。

 ドリブラーでありウインガー。日本人選手のイメージを象徴する選手は、少し前まで中盤に偏っていた。だが国内にウイング付き3トップ系の布陣を採用するチームが増えると、雨後の筍のようにドリブラーが続々と出現。たちどころに日本のセールスポイントとなった。

 山根睦(横浜F・マリノス)、川崎颯太(京都サンガF.C.)らの中盤選手も悪くないが、ここではあえて早川隼平、俵積田晃太を推してみたい。

 早川は163cmだ。小さいことがハンディになる可能性はある。だが、それがむしろ売りになるという見方もできる。紙一重の問題だが、それでも推したくなる理由はボールの持ち方だ。右足をあまり使わない左利きにもかかわらず、悪い意味での左利き臭さがない。

 常にボールを身体の正面に置いているので進行方向がわかりにくい。久保建英以上に、だ。相手の逆を取るのが巧い理由、ドリブルがキレる理由である。不足していると思しき体力は17歳と若いので、これからいくらでもつくと楽観的になれる。

 俵積田は19歳で、監督がアルベルからピーター・クラモフスキーに代わり、出番はグッと増えた。いまが旬の売り出し中という感じだ。こちらの身長は175cm。右利きの左ウイングである。

 プレースタイルは三笘に似ている。スピード感があり、ボールを長い距離、運ぶこともできる。三笘を上回る点を挙げれば、それは多機能性だ。現状、左しかできそうもない三笘に対し、俵積田は右も行けそうだ。適性の幅が広いと見る。

 3人目を挙げるとすれば、誰もが実力者と認める細谷真大だ。先述の2人以上に選手としての完成度は高いが、逆に完成品であって欲しくない選手でもある。

 身長177cm。トップにしては小さい。国内的にはそれで問題ないかもしれないが、世界的には難しい。ウインガー兼ストライカーとしての道を探らないと、チャンピオンズリーグ級にはなれないとみる。

 浅野拓磨(ボーフム)、上田綺世(フェイエノールト)、古橋亨梧(セルティック)を見ているとなおさらそう思う。柏で得点源として期待されている限り、プレーの幅は広がらない。

【堀米勇輝はキック&コントロールで異彩を放つ】

小宮良之(スポーツライター)

<注目選手> 
堀米勇輝(サガン鳥栖/MF) 
俵積田晃太(FC東京/MF) 
山根陸(横浜F・マリノス/MF)

「Jリーグで今、見逃せない実力者たち」

 そのお題で選手の名前を挙げるなら、筆頭にサガン鳥栖の堀米勇輝を推したい。

 堀米は左利き特有のリズムで、キック&コントロールで異彩を放つ。もともと才能に恵まれていたが、川井健太監督との邂逅で一気に開花。スペインで言うパウサ(休止)がある選手で、緩急の変化で相手を外せる。

 その妙味はスペクタクルで、やや誇張した表現をすれば、「Jリーグのダビド・シルバ」と言える。今のJリーグでチケットを購入してスタジアムで見るに値する選手のひとりだ。

 FC東京の俵積田晃太も、必見の若手アタッカーである。

 俵積田は左サイドからドリブルで切り込み、ダメージを与えられる。鳥栖戦(9月23日)ではJ1初得点を記録。彼の場合、ポジションや役割がはっきりとしているため、海外でも起用されやすい。

 タイプは違うが、三笘薫や中村敬斗(スタッド・ランス)の活躍は一つの指標になるだろう。日本は機動力に特徴のあるサイドアタッカーを過去現在と多く輩出し、彼は次世代だ。

 また、横浜F・マリノスの山根陸も一皮むければ世界が見える。

 山根は味方の個性を生かす能力は傑出し、そのインテリジェンスはパリ五輪世代で屈指である。現段階ではインテンシティが足りないし、サイズを考えるとゴールに絡むプレーも求められる。

 しかし試合を読むプレーは抜群で、年齢に似合わない老獪さも見せる。サイドバックもできるユーティリティ性は、彼の賢さの証だろう。

 Jリーグを面白くする3人だ。

【細谷真大は今季スケールアップした】

原山裕平(サッカーライター)

<注目選手> 
細谷真大(柏レイソル/FW) 
満田誠(サンフレッチェ広島/FW) 
三戸舜介(アルビレックス新潟/MF)

 インパクトを残す若手が少ないと感じる今季のJリーグのなかで、輝きを放つのは細谷真大だろう。昨季のベストヤングプレーヤー賞に選出されるなどすでにその実力を証明していたが、今季はさらにスケールアップした印象だ。

 求められるハイプレスの役割をこなしながら、鋭く背後を突く。相手の前に入る身体の強さが光り、ダイレクトで合わせるシュートセンスも際立つ。苦しむチームのなかで孤軍奮闘の働きを見せる22歳のストライカーは、すでに昨季を超える二桁得点を記録。柏を残留に導けば、その評価はさらに高まるはずだ。

 広島の満田誠も際立った存在感を放っている。シーズン序盤に大ケガを負いながらも早期復帰を果たし、広島を復調に導いた。シャドーが主戦と見られていたが、中盤の底でボールを受け、鋭いターンで前を向き、余裕を持ったボールキープと的確な配球で攻撃を操る司令塔としての能力も披露。

 シャドー、ボランチ、ウイングバックとあらゆるポジションで水準以上の働きを見せ、ミヒャエル・スキッベ監督の采配の幅を広げている。

 新潟の三戸舜介にもブレイクの予感が漂う。キレのあるドリブルと抜群のクイックネス、そして足を止めないプレーの連続性と、そのパフォーマンスからは高い攻撃センスと若さゆえの勢いが備わる。

 左サイドを主戦場としていたが、トップ下でのプレーも経験し、得点能力を開花させつつある。初のJ1の舞台でも堂々たるプレーを見せる21歳のアタッカーは、昨夏に欧州に旅立ったチームの先輩、本間至恩(クラブ・ブルージュ)に続く可能性も十分にあるだろう。

【伊藤敦樹の魅力は抜群の推進力】

中山 淳(サッカージャーナリスト)

<注目選手> 
伊藤敦樹(浦和レッズ/MF) 
脇坂泰斗(川崎フロンターレ/MF) 
川粼颯太(京都サンガF.C./MF)

 9月12日のトルコ戦で日本代表初ゴールをマークした浦和のMF伊藤敦樹は、伸びしろも含めて現在Jリーグで最も見逃せない選手になる。ピッチを広範囲にカバーし、自陣でボールを奪ったかと思えば、抜群の推進力で敵陣に進入。相手ゴール前では得意のミドルで相手に脅威を与える。

 パスセンス、戦術理解能力にも優れ、何よりスペースを見つけて前に出るタイミングが抜群だ。そのプレーを見ていると、往年のポール・スコールズ(元マンチェスターユナイテッド)を思い出す。

 なかなか調子が上がらない川崎のなかでも、際立つMF脇坂泰斗の充実ぶりも同じく見逃せない。すでにデビュー6年目になるが、最近のパフォーマンスは出色。とくに得点を生み出す源となっていて、アシストのみならず、自らゴールを決める力も上がった印象だ。

 もうひとりは、京都のキャプテンを務めるMF川粼颯太。中学生まで地元・山梨県のヴァンフォーレ甲府のアカデミーで育った川粼は、京都で成長。現在はパリ五輪世代の中心選手になった高い守備力とスタミナは明るい未来を感じさせ、攻撃面でも進化中だ。

 22歳という年齢を考えても、パリ五輪での活躍次第で、来夏以降にヨーロッパに活躍の場を移しても不思議ではないタレントだ。

【三戸舜介の緩急自在のドリブル】

浅田真樹(スポーツライター)

<注目選手> 
三戸舜介(アルビレックス新潟/MF) 
細谷真大(柏レイソル/FW) 
藤井陽也(名古屋グランパス/DF)

 なぜあれほどの急加速、急停止ができるのか。三戸舜介のプレーを見ていると、そんなことを思わされる。まるで機械仕掛けのおもちゃのようだ。

 U−22代表での働きを見ても、緩急自在のドリブルは外国人選手を相手にしても十分に通用する。本人も海外移籍への意欲を公言しており、Jリーグで彼のプレーを楽しめる時間は残りわずかかもしれない。

 背負ってよし、抜けてよし。細谷真大は久しぶりに現れた万能型の国産ストライカー。その希少価値は非常に高い。

 今季はすでに自身初のシーズン二桁ゴールを記録し、キャリアハイを更新中。頼もしいばかりの存在感は、もはや柏レイソルだけにとどまらず、Jリーグを代表するものになりつつある。

 藤井陽也はサイズと機動力を兼ね備えたDF。まだまだ粗削りな面があるのは確かだが、187cmと長身でありながら足回りも軽快。攻守両面で見せる機敏な動きは、誰にでもできるものではない。

 左右両足をそつなく使えるのも魅力であり、将来的には日本代表でもポジション争いができるだけのポテンシャルを感じさせる。