厳選!2歳馬情報局(2023年版)
第16回:グラヴィス

 数々の名馬を育て上げ、昨年度も全国リーディングを獲得した栗東トレセンの矢作芳人厩舎。今年も期待の2歳馬を多数管理しているが、そのなかでもトップクラスの評価を受けている馬がいる。

 グラヴィス(牡2歳/父ハーツクライ)である。

 同馬の母は、ラヴズオンリーミー。これまでに何頭もの活躍馬を送り出してきた優秀な繁殖牝馬だ。とりわけ、矢作厩舎で管理してきた馬たちの多くが重賞戦線で結果を残しており、まさに厩舎ゆかりの血統と言える。

 その代表格と言えるのは、2012年生まれのリアルスティール(牡/父ディープインパクト)。同馬は新馬勝ちを果たすと、直後のGIII共同通信杯(東京・芝1800m)も制して、一躍クラシックの有力候補に挙がった。

 そのクラシックでは惜しくも戴冠を遂げられなかったが、GI皐月賞(中山・芝2000m)2着、GI日本ダービー(東京・芝2400m)4着、GI菊花賞(京都・芝3000m)2着と、常に上位争いに加わって、世代上位の力を示した。

 その後、4歳になって海外GIのドバイターフ(UAE・芝1800m)を快勝。悲願のGIタイトルを獲得し、以降も重賞戦線で奮闘した。


日本調教馬初のBCカップ(フィリー&メアターフ)制覇を遂げたグラヴィスの姉、ラヴズオンリーユー

 また、2016年生まれのラヴズオンリーユー(牝/父ディープインパクト)も、矢作厩舎に在籍し活躍した1頭。デビュー戦を快勝すると、怒涛の4連勝を飾ってGIオークス(東京・芝2400m)を制した。

 さらに5歳になると、国内外のGI戦線で躍動。GIクイーンエリザベス2世C(香港・芝2000m)で優勝すると、日本調教馬として初めてアメリカ競馬の祭典、ブリーダーズカップ(フィリー&メアターフ/アメリカ・芝2200m)の勝ち馬となった。

 そして、引退レースとなるGI香港カップ(香港・芝2000m)も勝利。その年(2021年)のエクリプス賞(アメリカ競馬の年度代表表彰)では、日本調教馬初の受賞(最優秀芝牝馬)も果たした。

 そうした偉大な兄姉を持つゆえ、当歳時のセレクトセールで2億8000万円(税別)という高値で落札されたグラヴィス。すでに入厩して調整も進んでおり、関西競馬専門紙のトラックマンによると、陣営のトーンは弾んでいるという。

「有力な2歳馬が続々と入厩している矢作厩舎ですが、グラヴィスはそのなかでも陣営の期待値が一番高いのではないでしょうか。

 なにしろ、厩舎スタッフが『まだ教えることはたくさんあるけれど、操縦性や乗り味がよく、良血馬らしさを感じる』と絶賛。なおかつ、『雰囲気もいいし、速い調教をすると、さらに動きが一段上がる』と言って、目を細めていましたから」

 素質の高さは間違いなさそうだが、馬体や距離適性についてはどうか。トラックマンが続ける。

「馬体重は現時点で500kgほどと、申し分のない大きさ。距離については、『血統からくるイメージどおり、1800m以上が合いそう』とスタッフ。『気性はまだ幼いが、特段苦労するところもない』と話していました。

 入厩当初から陣営が褒めていた1頭。そのうえ、ここまで順調に調整されてきていますから、デビュー戦が楽しみです」

 その初陣だが、来週末(9月30日or10月1日)を目指して調整を進めていくとのこと。鞍上は坂井瑠星騎手が務める予定だ。

 名門・矢作厩舎が自信を持って送り出す良血グラヴィス。どんな走りを見せるのか、必見である。