「HP Dragonfly G4」レビュー - 企業向けセキュリティ機能満載、Uプロセッサで省電力
HPが”フラッグシップノートPC”として位置付けている「HP Dragonfly G4」。約1kgからの軽量ボディに、ハイブリッドワークに便利な機能や、ビジネスシーンで求められる優れたセキュリティ機能を満載した、ハイエンドビジネスモバイルPCに仕上がっている。
HP Dragonfly G4
軽さと堅牢性を両立するスタイリッシュなマグネシウムボディ
HP Dragonfly G4は、HPのビジネスモバイルノートPCの最上位モデル「HP Dragonfly」シリーズの第4世代モデルだ。従来のHP Dragonfly G3の特徴を受け継ぎつつ、進化を遂げている。今回の試用機の主なスペックは以下の通りだ。
本体サイズや重量は、従来モデルと同等。ボディ素材にマグネシウム合金を採用し、重量は約1kgからとモバイルノートPCとして申し分ない軽さを実現。試用機ではワイヤレスWANを搭載していることもあって実測で1,145gと1kgを上回っていたが、それでも手にすると十分に軽く感じる。
より軽量なモバイルノートPCも存在してはいるが、HP Dragonfly G4もまずまず納得できる軽さで、毎日PCを持ち歩く必要のあるビジネスマンにとっても心強いはずだ。
同時に、米国国防総省調達基準「MIL-STD-810H」準拠の落下や衝撃、振動など19項目に及ぶ過酷な耐久性試験をクリアする申し分ない堅牢性を確保。しかも圧縮荷重試験は実に500kgfという非常に過酷な試験をクリアしている。
実際に本体をやや強めの力でひねったり天板を押さえてみても、全く不安を感じないほどの強度を実感できる。モバイルノートPCは落下などの不意のトラブルに見舞われやすいが、これだけしっかりとした堅牢性があれば、安心して持ち出せるだろう。
HP Dragonfly G4は、ビジネスモバイルPCではあるが、非常にスタイリッシュな外観が魅力
ボディはリサイクル素材を90%使用したマグネシウム合金製。500kgfの圧縮荷重試験をはじめ、19種類のMIL-STD-810H準拠堅牢性試験をクリアする優れた堅牢性を実現している
本体正面。高さは16.4mmと非常に薄い点も特徴で、スリムなビジネスバッグにも余裕で収納できる
そして、ビジネスモバイルPCらしからぬスタイリッシュなボディも大きな特徴。全体的にシンプルなデザインではあるが、スレートブルーと呼ばれる濃いグレー系のボディカラーと合わせて、ビジネスPCとは思えない上質さが伝わってくる。ビジネスPCといえどもデザイン性に優れるPCを使いたいと思うのは当然で、その点でも大きな魅力になるはずだ。
左側面
背面
右側面
底面
この他、ボディ素材のマグネシウム合金はリサイクル素材を90%も使用するとともに、キーボードのキーキャップや内蔵スピーカーカバー、梱包材などにも豊富にリサイクル素材を採用している。サステナブルな仕様は、特に近年、導入企業にとっても重要な要素となっていることからも、導入を後押しする特徴と言える。
試用機の重量は実測で1,125g。1kgをやや上回っているが、それでもモバイルPCとして納得の軽さと感じる
アスペクト比3:2のWUXGA+液晶はプライバシー保護機能も搭載
ディスプレイにはアスペクト比が3:2、1,920×1,280ドット表示対応の13.5型液晶を搭載する。これは従来モデルと同じものだが、一般的なフルHDディスプレイと比べて縦の解像度が200ドットも多く、より多くの情報を表示できる。
当然、情報量が増えると作業効率が高まる。単一のアプリ利用時はもちろん、複数のアプリを同時利用する場合でもそれぞれに多くの領域を確保できるため、生産性を大きく高められる。
また、試用機のディスプレイは10点マルチタッチおよび、オプションの「HP Pro Pen」などのスタイラスペン入力にも対応していた。標準仕様のディスプレイはタッチ非対応だが、カスタマイズでタッチ対応ディスプレイを選択することで、タッチ操作やペン対応が不可欠な業務にも対応可能だ。
アスペクト比3:2、1,920×1,280ドット表示対応の13.5型液晶を搭載。フルHDに比べ縦の情報量が多くなり、作業効率が高まる。試用機では10点マルチタッチおよびペン入力に対応していた
ディスプレイ表面は光沢仕様で、外光の映り込みは少々気になるが、発色の鮮やかさはなかなか優れていると感じる
ディスプレイは180度開閉するため、水平まで開いた状態でも利用可能
そして、従来モデルから引き続き搭載しているのが、プライバシー保護機能「HP Sure View Reflect」だ。HP Sure View Reflectをオンにすると、ディスプレイの視野角が大幅に狭まり、横からの覗き込みを防止できる。もちろん正面からの視認性にはほとんど影響がないため、利用者の作業効率を大きく低下させることもない。
ハイブリッドワークが一般的となり、外出先や移動中にPCを利用して作業を行う場面も増えているが、それに伴って覗き込みによる情報流出の事例も増えている。HP Sure View Reflectを利用することで覗き込みを防止し、情報流出の危険性を低減できる点は、企業にとっても大きな魅力となる。
ただ、このHP Sure View Reflectによるものなのか、通常時でもディスプレイの視野角はやや狭い印象。大きく視点を移動させると、明るさが大きく変化する。ディスプレイはグレア仕様で、特に天井の正面などが映り込むと画面全体にギラつきが発生してしまう。
個人的にはもう少し視野角を広く、またギラつきも抑えられているとありがたいと感じるが、企業にとってはやはりセキュリティが優先されるはず。そのため、表示品質とセキュリティ機能のどちらを優先するかによってディスプレイの評価は大きく変わりそうだ。
HP Sure View Reflectがオフの状態では、斜めからでも表示内容をしっかり確認できる
HP Sure View Reflectをオンにすると視野角が大幅に狭まり、斜めからほとんど表示内容が見えなくなる
キラキラを映り込ませたところ。HP Sure View Reflect搭載の影響か、外光が映り込むとかなり反射して見える
バックライト内蔵アイソレーションキーボードを搭載
キーボードは、キーの間隔が開いたアイソレーション型キーボードを搭載。主要キーのキーピッチは約18.7mmで、ほぼフルサイズと考えていい。Enterキー付近の一部キーでピッチが狭くなっている部分もあるが、その部分も窮屈な印象はなく、配列も自然で、フルサイズキーボードと全く同等の印象でタイピングが可能だった。
キーストロークは1.3mmとやや浅い。ただ、強めのクリック感によってそこまで浅い印象は感じない。タッチはやや硬めで、しっかりキーを押してタイピングできる。標準でキーボードバックライトを搭載しており、暗い場所でもキーを認識しやすく、場所を問わず快適なタイピングが可能だ。
ただ、電源ボタンがキーボード最上段のDeleteキーの左に配置されている点は気になる。電源ボタンは他のボタンよりも堅く、より強い力で押さないと反応しないよう配慮されてはいるが、できればキーボードとは異なる位置に搭載してもらいたいところだ。
タッチパッドはクリックボタン一体型で、サイズもパームレスト部の縦幅をほぼ最大限活用した大型のものを搭載している。ジェスチャー操作も含めて快適に操作できる。ただ個人的には、タッチパッドを本体の中央ではなく、キーボードのホームポジションに合わせて搭載してもらいたかった。
アイソレーション型キーボードはタッチはやや硬めで、しっかりキーを押してタイピングできる。キーボードバックライトも搭載している
主要キーのキーピッチが約18.7mm。Enterキー付近の一部キーはわずかにピッチが狭いものの、ほぼ気にならずタッチタイプも全く違和感がない
deleteキー左に電源ボタンがある。他のキーより強く押さないと反応しないが、できれば他の場所に搭載してもらいたかった
タッチパッドはクリックボタン一体型で、サイズもかなり大きいため操作性は抜群だが、できればキーボードのホームポジション中心で搭載してもらいたい
包括的なセキュリティ機能「HP WOLF SECURITY FOR BUSINESS」を搭載
HP Dragonfly G4は、ビジネス向けモバイルPCということで、非常に豊富なセキュリティ機能を搭載。先ほど紹介したディスプレイのプライバシー保護機能「HP Shre View Reflect」もそのひとつだが、そちらを含めた「HP WOLF SECURITY FOR BUSINESS」という包括的なセキュリティ機能を搭載する点が大きな特徴となっている。
HP WOLF SECURITY FOR BUSINESSでは、OSはもちろん、PCのファームウェアやストレージなどのパーツ、外部接続インターフェイスなど、ソフトウェアからハードウェアまでを網羅する包括的なセキュリティ機能だ。通常のマルウェア対策はもちろん、BIOS書き換えの抑制や、万が一BIOSが書き換えられた場合の自動復旧などの高度な攻撃にも対応でき、高いレベルでPCを保護できる。
また、ユーザーの利便性とセキュリティ性を高いレベルで両立できる機能も多く搭載。Windows Hello対応の顔認証カメラと指紋認証センサーを同時搭載することで、通常は顔認証を利用しつつ、マスク装着時などは指紋認証を利用と場合に応じて使い分けられる。
同時に、近接センサーを利用して利用者の離席や戻りを自動認識し、離席時の画面ロックと戻り時の自動復帰をサポートしている点も特徴だ。この他にも、内蔵ストレージの暗号化に加えて、データの感染消去機能などを搭載している。
近年のPCへの攻撃は高度化かつ巧妙化していることや、万が一攻撃を受けると企業にとって計り知れない損失が発生する可能性があることを考えても、こういった高度なセキュリティ機能を利用できる点は大きな魅力と言える。
OSやアプリ、BIOSなどソフトウェアからハードウェアまでPC全般的な攻撃に対応する包括的なセキュリティ機能「HP WOLF SECURITY FOR BUSINESS」を搭載
ディスプレイ上部にはWindows Hello対応の顔認証カメラを搭載
Webカメラはレンズにシャッターを搭載しており、物理的に撮影を抑制できる
カメラのシャッターはキーボードの専用ボタンで動作する
キーボードに指紋認証センサーも搭載し、顔認証と使い分けられる
近接センサーを利用し、利用者の離席や戻りを自動認識。離席すると画面を自動的にロックし、戻ると自動復帰し顔認証でのログオンも自動的に行われる
5G対応ワイヤレスWANを搭載
試用機の基本スペックは冒頭でまとめたとおりなので、ここからは基本スペック以外を紹介する。
無線機能は、Wi-Fi 6E(IEEE 802.11ax)準拠無線LANとBluetooth 5.3を標準搭載。そして、オプションとして4Gまたは5G対応のワイヤレスWANも搭載可能。試用機では5G対応ワイヤレスWANを搭載していた。ワイヤレスWANはSIMロックフリー仕様で、nanoSIMまたはeSIMが利用できる。今回、NTTドコモのnanoSIMを装着してみたところ、問題なく5Gで通信可能だった。なおnanoSIMトレイは左側面に用意している。
外部ポートは、左側面にHDMIとThunderbolt 4を、右側面にThunderbolt 4、USB 3.2 Gen1 Type-A、3.5mmオーディオジャックをそれぞれ用意。ビジネスモバイルPCとしては有線LANも用意してもらいたかったところだが、Thunderbolt 4が2ポート用意されているため拡張性に大きな不安はない。
この他、AIノイズキャンセリング機能や、カメラで捉えた映像で人物を中央に自動トリミングしたり、明るさ調整、背景ぼかしなどを行う機能も用意。これら機能はWeb会議で非常に役立ちそうだ。
ACアダプタはUSB Type-C接続のUSB PD準拠のものが付属する。出力は65Wで、Thunderbolt 4に接続して利用する。サイズは特別コンパクトではなく、付属電源ケーブルが太いこともあってややかさばる印象。重量も電源ケーブル込みで308gと少々重い。本体と同時に携帯する場合には、より小型軽量の汎用USB PD準拠ACアダプタを利用しても良さそうだ。
HP Dragonfly G4ではオプションで4Gまたは5G対応のワイヤレスWANを搭載可能。試用機では5G対応のワイヤレスWANを搭載しており、NTTドコモのSIMで5G通信が問題なく可能だった
nanoSIMスロットは左側面に用意。物理SIM以外にeSIMも利用できる
左側面にはHDMIとThunderbolt 4を配置
右側面にはThunderbolt 4、USB 3.2 Gen1 Type-A、3.5mmオーディオジャックを配置
Iノイズキャンセリング機能や、カメラの自動人物トリミング、画質調整機能など、Web会議に便利な機能も用意
付属ACアダプタはUSB Type-C接続のUSB PD準拠で、出力は65W
ACアダプタの重量は付属電源ケーブル込みで実測308g。65W出力にしては重い
パフォーマンスは申し分なく、駆動時間も長い
ではベンチマークテストの結果を見ていこう。
まずはPCMark10の結果だが、スペック相応のスコアが得られている。ビジネス向けモバイルPCということで、これだけのスコアが得られていればビジネス系アプリやWeb会議アプリなどを同時利用する場合でも不満なく作業を行えるだろう。プレゼン資料作成時に写真や動画の編集が必要な場合でも、十分快適に作業できるはずだ。
PCMark 10の結果。まずまずのスコアが得られており、ビジネス系アプリは十分快適に利用できるだろう
続いてプロセッサの処理能力を計測するCINEBENCH R23の結果だ。こちらもまずまずのスコアで、十分納得できる性能が引き出せている。ただ、CPUクーラーの性能が良ければ、もっと良い性能が引き出せそうだとも感じた。
HP Dragonfly G4では、高負荷時でもファンの騒音がかなり静かだ。これは静かな場所で利用する場面では重宝するものの、高負荷時にCPUの放熱が追いつかなくなる可能性もある。また、本体の薄さも放熱性能に影響する。
それでも、本体の薄さとCPUクーラーの静かさを考えると、このスコアには十分満足できる。特に、ビジネスモバイルPCではベンチマークテストのように高負荷が長時間続くような作業はあまり行われない可能性が高く、通常は申し分ないパフォーマンスが発揮されると考えていいだろう。
CINEBENCH R23の結果。こちらもまずまずのスコアで、ビジネスモバイルPCとしては十分納得できる性能だ
次は3DMarkの結果だ。今回はWild LifeとTime Spyを利用したが、こちらもビジネスモバイルPCとしてはまずまずのスコアとなっている。ビジネスモバイルPCでゲームをプレイすることはほぼないと思うが、ビジネスPCで利用するアプリでも3D描画機能を活用する場面は少なくないため、このスコアにも納得だ。
CPU内蔵グラフィック機能のため特別優れた性能というわけではないが、ビジネスアプリでも3D描画機能を利用する場面は少なくないことを考えると納得のスコアだ。
Wild Lifeの結果
Time Spyの結果
最後にバッテリー駆動時間だ。PCMark 10に用意されているバッテリーテスト「PCMark 10 Battery Profile」の「Modern Office」を利用し、ディスプレイのバックライト輝度50%、キーボードバックライトをオフで計測してみたところ、10時間10分を記録した。
この結果から、通常利用時でも8時間以上はほぼ問題なく利用できるはず。よほど高負荷の作業を長時間行わない限り、1日外出して作業を行う必要がある場合でも電源の確保を考慮する必要はなさそうだ。モバイルPCとしてこの点は大きな魅力となりそうだ。
PCMark 10のバッテリーテスト「PCMark 10 Battery Profile」の「Modern Office」で10時間10分を記録。これなら1日の外出時でも不安なく利用できそうだ
企業が安心して導入できるビジネスモバイルPCだ
今回見てきたようにHP Dragonfly G4は、申し分ない軽さと、安心して持ち歩ける非常に優れた堅牢性を兼ね備えるだけでなく、現在のビジネスシーンで求められる優れたセキュリティ性も備わるビジネスモバイルPCに仕上がっている。また、アスペクト比3:2で生産性の上がるディスプレイや複数のアプリを同時利用する場合でも十分快適なパフォーマンス、セキュリティ性と利便性を両立できる機能など、PCとしての仕様も申し分ない。
HP Sure View Reflectによるディスプレイの視野角の狭さやギラつきは少々気になるものの、携帯性や性能面、優れたセキュリティ性など、企業が導入するビジネスモバイルPCとして魅力的な存在だ。
HP Dragonfly G4
軽さと堅牢性を両立するスタイリッシュなマグネシウムボディ
HP Dragonfly G4は、HPのビジネスモバイルノートPCの最上位モデル「HP Dragonfly」シリーズの第4世代モデルだ。従来のHP Dragonfly G3の特徴を受け継ぎつつ、進化を遂げている。今回の試用機の主なスペックは以下の通りだ。
より軽量なモバイルノートPCも存在してはいるが、HP Dragonfly G4もまずまず納得できる軽さで、毎日PCを持ち歩く必要のあるビジネスマンにとっても心強いはずだ。
同時に、米国国防総省調達基準「MIL-STD-810H」準拠の落下や衝撃、振動など19項目に及ぶ過酷な耐久性試験をクリアする申し分ない堅牢性を確保。しかも圧縮荷重試験は実に500kgfという非常に過酷な試験をクリアしている。
実際に本体をやや強めの力でひねったり天板を押さえてみても、全く不安を感じないほどの強度を実感できる。モバイルノートPCは落下などの不意のトラブルに見舞われやすいが、これだけしっかりとした堅牢性があれば、安心して持ち出せるだろう。
HP Dragonfly G4は、ビジネスモバイルPCではあるが、非常にスタイリッシュな外観が魅力
ボディはリサイクル素材を90%使用したマグネシウム合金製。500kgfの圧縮荷重試験をはじめ、19種類のMIL-STD-810H準拠堅牢性試験をクリアする優れた堅牢性を実現している
本体正面。高さは16.4mmと非常に薄い点も特徴で、スリムなビジネスバッグにも余裕で収納できる
そして、ビジネスモバイルPCらしからぬスタイリッシュなボディも大きな特徴。全体的にシンプルなデザインではあるが、スレートブルーと呼ばれる濃いグレー系のボディカラーと合わせて、ビジネスPCとは思えない上質さが伝わってくる。ビジネスPCといえどもデザイン性に優れるPCを使いたいと思うのは当然で、その点でも大きな魅力になるはずだ。
左側面
背面
右側面
底面
この他、ボディ素材のマグネシウム合金はリサイクル素材を90%も使用するとともに、キーボードのキーキャップや内蔵スピーカーカバー、梱包材などにも豊富にリサイクル素材を採用している。サステナブルな仕様は、特に近年、導入企業にとっても重要な要素となっていることからも、導入を後押しする特徴と言える。
試用機の重量は実測で1,125g。1kgをやや上回っているが、それでもモバイルPCとして納得の軽さと感じる
アスペクト比3:2のWUXGA+液晶はプライバシー保護機能も搭載
ディスプレイにはアスペクト比が3:2、1,920×1,280ドット表示対応の13.5型液晶を搭載する。これは従来モデルと同じものだが、一般的なフルHDディスプレイと比べて縦の解像度が200ドットも多く、より多くの情報を表示できる。
当然、情報量が増えると作業効率が高まる。単一のアプリ利用時はもちろん、複数のアプリを同時利用する場合でもそれぞれに多くの領域を確保できるため、生産性を大きく高められる。
また、試用機のディスプレイは10点マルチタッチおよび、オプションの「HP Pro Pen」などのスタイラスペン入力にも対応していた。標準仕様のディスプレイはタッチ非対応だが、カスタマイズでタッチ対応ディスプレイを選択することで、タッチ操作やペン対応が不可欠な業務にも対応可能だ。
アスペクト比3:2、1,920×1,280ドット表示対応の13.5型液晶を搭載。フルHDに比べ縦の情報量が多くなり、作業効率が高まる。試用機では10点マルチタッチおよびペン入力に対応していた
ディスプレイ表面は光沢仕様で、外光の映り込みは少々気になるが、発色の鮮やかさはなかなか優れていると感じる
ディスプレイは180度開閉するため、水平まで開いた状態でも利用可能
そして、従来モデルから引き続き搭載しているのが、プライバシー保護機能「HP Sure View Reflect」だ。HP Sure View Reflectをオンにすると、ディスプレイの視野角が大幅に狭まり、横からの覗き込みを防止できる。もちろん正面からの視認性にはほとんど影響がないため、利用者の作業効率を大きく低下させることもない。
ハイブリッドワークが一般的となり、外出先や移動中にPCを利用して作業を行う場面も増えているが、それに伴って覗き込みによる情報流出の事例も増えている。HP Sure View Reflectを利用することで覗き込みを防止し、情報流出の危険性を低減できる点は、企業にとっても大きな魅力となる。
ただ、このHP Sure View Reflectによるものなのか、通常時でもディスプレイの視野角はやや狭い印象。大きく視点を移動させると、明るさが大きく変化する。ディスプレイはグレア仕様で、特に天井の正面などが映り込むと画面全体にギラつきが発生してしまう。
個人的にはもう少し視野角を広く、またギラつきも抑えられているとありがたいと感じるが、企業にとってはやはりセキュリティが優先されるはず。そのため、表示品質とセキュリティ機能のどちらを優先するかによってディスプレイの評価は大きく変わりそうだ。
HP Sure View Reflectがオフの状態では、斜めからでも表示内容をしっかり確認できる
HP Sure View Reflectをオンにすると視野角が大幅に狭まり、斜めからほとんど表示内容が見えなくなる
キラキラを映り込ませたところ。HP Sure View Reflect搭載の影響か、外光が映り込むとかなり反射して見える
バックライト内蔵アイソレーションキーボードを搭載
キーボードは、キーの間隔が開いたアイソレーション型キーボードを搭載。主要キーのキーピッチは約18.7mmで、ほぼフルサイズと考えていい。Enterキー付近の一部キーでピッチが狭くなっている部分もあるが、その部分も窮屈な印象はなく、配列も自然で、フルサイズキーボードと全く同等の印象でタイピングが可能だった。
キーストロークは1.3mmとやや浅い。ただ、強めのクリック感によってそこまで浅い印象は感じない。タッチはやや硬めで、しっかりキーを押してタイピングできる。標準でキーボードバックライトを搭載しており、暗い場所でもキーを認識しやすく、場所を問わず快適なタイピングが可能だ。
ただ、電源ボタンがキーボード最上段のDeleteキーの左に配置されている点は気になる。電源ボタンは他のボタンよりも堅く、より強い力で押さないと反応しないよう配慮されてはいるが、できればキーボードとは異なる位置に搭載してもらいたいところだ。
タッチパッドはクリックボタン一体型で、サイズもパームレスト部の縦幅をほぼ最大限活用した大型のものを搭載している。ジェスチャー操作も含めて快適に操作できる。ただ個人的には、タッチパッドを本体の中央ではなく、キーボードのホームポジションに合わせて搭載してもらいたかった。
アイソレーション型キーボードはタッチはやや硬めで、しっかりキーを押してタイピングできる。キーボードバックライトも搭載している
主要キーのキーピッチが約18.7mm。Enterキー付近の一部キーはわずかにピッチが狭いものの、ほぼ気にならずタッチタイプも全く違和感がない
deleteキー左に電源ボタンがある。他のキーより強く押さないと反応しないが、できれば他の場所に搭載してもらいたかった
タッチパッドはクリックボタン一体型で、サイズもかなり大きいため操作性は抜群だが、できればキーボードのホームポジション中心で搭載してもらいたい
包括的なセキュリティ機能「HP WOLF SECURITY FOR BUSINESS」を搭載
HP Dragonfly G4は、ビジネス向けモバイルPCということで、非常に豊富なセキュリティ機能を搭載。先ほど紹介したディスプレイのプライバシー保護機能「HP Shre View Reflect」もそのひとつだが、そちらを含めた「HP WOLF SECURITY FOR BUSINESS」という包括的なセキュリティ機能を搭載する点が大きな特徴となっている。
HP WOLF SECURITY FOR BUSINESSでは、OSはもちろん、PCのファームウェアやストレージなどのパーツ、外部接続インターフェイスなど、ソフトウェアからハードウェアまでを網羅する包括的なセキュリティ機能だ。通常のマルウェア対策はもちろん、BIOS書き換えの抑制や、万が一BIOSが書き換えられた場合の自動復旧などの高度な攻撃にも対応でき、高いレベルでPCを保護できる。
また、ユーザーの利便性とセキュリティ性を高いレベルで両立できる機能も多く搭載。Windows Hello対応の顔認証カメラと指紋認証センサーを同時搭載することで、通常は顔認証を利用しつつ、マスク装着時などは指紋認証を利用と場合に応じて使い分けられる。
同時に、近接センサーを利用して利用者の離席や戻りを自動認識し、離席時の画面ロックと戻り時の自動復帰をサポートしている点も特徴だ。この他にも、内蔵ストレージの暗号化に加えて、データの感染消去機能などを搭載している。
近年のPCへの攻撃は高度化かつ巧妙化していることや、万が一攻撃を受けると企業にとって計り知れない損失が発生する可能性があることを考えても、こういった高度なセキュリティ機能を利用できる点は大きな魅力と言える。
OSやアプリ、BIOSなどソフトウェアからハードウェアまでPC全般的な攻撃に対応する包括的なセキュリティ機能「HP WOLF SECURITY FOR BUSINESS」を搭載
ディスプレイ上部にはWindows Hello対応の顔認証カメラを搭載
Webカメラはレンズにシャッターを搭載しており、物理的に撮影を抑制できる
カメラのシャッターはキーボードの専用ボタンで動作する
キーボードに指紋認証センサーも搭載し、顔認証と使い分けられる
近接センサーを利用し、利用者の離席や戻りを自動認識。離席すると画面を自動的にロックし、戻ると自動復帰し顔認証でのログオンも自動的に行われる
5G対応ワイヤレスWANを搭載
試用機の基本スペックは冒頭でまとめたとおりなので、ここからは基本スペック以外を紹介する。
無線機能は、Wi-Fi 6E(IEEE 802.11ax)準拠無線LANとBluetooth 5.3を標準搭載。そして、オプションとして4Gまたは5G対応のワイヤレスWANも搭載可能。試用機では5G対応ワイヤレスWANを搭載していた。ワイヤレスWANはSIMロックフリー仕様で、nanoSIMまたはeSIMが利用できる。今回、NTTドコモのnanoSIMを装着してみたところ、問題なく5Gで通信可能だった。なおnanoSIMトレイは左側面に用意している。
外部ポートは、左側面にHDMIとThunderbolt 4を、右側面にThunderbolt 4、USB 3.2 Gen1 Type-A、3.5mmオーディオジャックをそれぞれ用意。ビジネスモバイルPCとしては有線LANも用意してもらいたかったところだが、Thunderbolt 4が2ポート用意されているため拡張性に大きな不安はない。
この他、AIノイズキャンセリング機能や、カメラで捉えた映像で人物を中央に自動トリミングしたり、明るさ調整、背景ぼかしなどを行う機能も用意。これら機能はWeb会議で非常に役立ちそうだ。
ACアダプタはUSB Type-C接続のUSB PD準拠のものが付属する。出力は65Wで、Thunderbolt 4に接続して利用する。サイズは特別コンパクトではなく、付属電源ケーブルが太いこともあってややかさばる印象。重量も電源ケーブル込みで308gと少々重い。本体と同時に携帯する場合には、より小型軽量の汎用USB PD準拠ACアダプタを利用しても良さそうだ。
HP Dragonfly G4ではオプションで4Gまたは5G対応のワイヤレスWANを搭載可能。試用機では5G対応のワイヤレスWANを搭載しており、NTTドコモのSIMで5G通信が問題なく可能だった
nanoSIMスロットは左側面に用意。物理SIM以外にeSIMも利用できる
左側面にはHDMIとThunderbolt 4を配置
右側面にはThunderbolt 4、USB 3.2 Gen1 Type-A、3.5mmオーディオジャックを配置
Iノイズキャンセリング機能や、カメラの自動人物トリミング、画質調整機能など、Web会議に便利な機能も用意
付属ACアダプタはUSB Type-C接続のUSB PD準拠で、出力は65W
ACアダプタの重量は付属電源ケーブル込みで実測308g。65W出力にしては重い
パフォーマンスは申し分なく、駆動時間も長い
ではベンチマークテストの結果を見ていこう。
まずはPCMark10の結果だが、スペック相応のスコアが得られている。ビジネス向けモバイルPCということで、これだけのスコアが得られていればビジネス系アプリやWeb会議アプリなどを同時利用する場合でも不満なく作業を行えるだろう。プレゼン資料作成時に写真や動画の編集が必要な場合でも、十分快適に作業できるはずだ。
PCMark 10の結果。まずまずのスコアが得られており、ビジネス系アプリは十分快適に利用できるだろう
続いてプロセッサの処理能力を計測するCINEBENCH R23の結果だ。こちらもまずまずのスコアで、十分納得できる性能が引き出せている。ただ、CPUクーラーの性能が良ければ、もっと良い性能が引き出せそうだとも感じた。
HP Dragonfly G4では、高負荷時でもファンの騒音がかなり静かだ。これは静かな場所で利用する場面では重宝するものの、高負荷時にCPUの放熱が追いつかなくなる可能性もある。また、本体の薄さも放熱性能に影響する。
それでも、本体の薄さとCPUクーラーの静かさを考えると、このスコアには十分満足できる。特に、ビジネスモバイルPCではベンチマークテストのように高負荷が長時間続くような作業はあまり行われない可能性が高く、通常は申し分ないパフォーマンスが発揮されると考えていいだろう。
CINEBENCH R23の結果。こちらもまずまずのスコアで、ビジネスモバイルPCとしては十分納得できる性能だ
次は3DMarkの結果だ。今回はWild LifeとTime Spyを利用したが、こちらもビジネスモバイルPCとしてはまずまずのスコアとなっている。ビジネスモバイルPCでゲームをプレイすることはほぼないと思うが、ビジネスPCで利用するアプリでも3D描画機能を活用する場面は少なくないため、このスコアにも納得だ。
CPU内蔵グラフィック機能のため特別優れた性能というわけではないが、ビジネスアプリでも3D描画機能を利用する場面は少なくないことを考えると納得のスコアだ。
Wild Lifeの結果
Time Spyの結果
最後にバッテリー駆動時間だ。PCMark 10に用意されているバッテリーテスト「PCMark 10 Battery Profile」の「Modern Office」を利用し、ディスプレイのバックライト輝度50%、キーボードバックライトをオフで計測してみたところ、10時間10分を記録した。
この結果から、通常利用時でも8時間以上はほぼ問題なく利用できるはず。よほど高負荷の作業を長時間行わない限り、1日外出して作業を行う必要がある場合でも電源の確保を考慮する必要はなさそうだ。モバイルPCとしてこの点は大きな魅力となりそうだ。
PCMark 10のバッテリーテスト「PCMark 10 Battery Profile」の「Modern Office」で10時間10分を記録。これなら1日の外出時でも不安なく利用できそうだ
企業が安心して導入できるビジネスモバイルPCだ
今回見てきたようにHP Dragonfly G4は、申し分ない軽さと、安心して持ち歩ける非常に優れた堅牢性を兼ね備えるだけでなく、現在のビジネスシーンで求められる優れたセキュリティ性も備わるビジネスモバイルPCに仕上がっている。また、アスペクト比3:2で生産性の上がるディスプレイや複数のアプリを同時利用する場合でも十分快適なパフォーマンス、セキュリティ性と利便性を両立できる機能など、PCとしての仕様も申し分ない。
HP Sure View Reflectによるディスプレイの視野角の狭さやギラつきは少々気になるものの、携帯性や性能面、優れたセキュリティ性など、企業が導入するビジネスモバイルPCとして魅力的な存在だ。