【プレッシャーをものともせず優勝】

 島田麻央(14歳)はジュニア1年目の昨シーズン、ファイナルを含めたジュニアグランプリ(GP)で全勝、世界ジュニアも優勝、推薦選手として初めて出場した全日本選手権でも坂本花織、三原舞依についで3位表彰台を獲得した。


ジュニアグランプリシリーズ日本大会を制した島田麻央

 9月15、16日、7年ぶりの日本開催となったジュニアGPシリーズ大阪大会でも、次世代の日本女子エースと期待される彼女の出場は注目を集めた。

 ショートプログラム(SP)ではレディー・ガガの『Americano』を使用し、パンツスタイルの衣装でシャープな一面を見せる。ダブルアクセル(※ジュニア規定でSPではトリプルアクセルは不可)、3回転フリップ+3回転トーループ、3回転ルッツを完璧に跳び、スピン、ステップともに最高評価のレベル4をそろえた。

 日本での大会開催について島田は「たくさんの応援があったのでいい演技がしたいと思ったら少し緊張してしまいました。でも、すごくいい演技ができたのでよかったなと思います」と振り返った。

 ジュニアの世界女王として注目されることは、時にプレッシャーにもなることだろう。しかし、島田は「昨シーズンの成績のことはあまり考えないようにして、また新しい舞台で今シーズンも頑張ろうと思ってやっています」と話す。

【調子が悪くても大技に挑戦し続ける理由】

 今年10月に15歳になる島田の最大の目標は五輪。現段階では2026年2月のミラノ五輪には年齢制限で出場できないが(※五輪シーズンが始まる2025年7月1日より前に17歳に達していることが出場条件)、「世界ジュニア優勝が最終的な目標ではないので、一番高い目標を達成するためにそれは通り道だと思って、切り替えてやろうと思っています」と島田。先を見据えて努力を重ねている。

 フリーでトリプルアクセルと4回転ジャンプに挑み続けるのにも同じような理由がある。以前、トリプルアクセルや4回転は島田にとってどういうジャンプかと問うと、「世界で戦っていくためには絶対必要だと思っているので、今は試合で勝つためというよりも、ゆくゆく五輪や世界選手権で勝つために今から入れているという考えです。なので、調子が悪くても絶対に挑戦しようと決めています」と話してくれた。

 また、自身の名前の由来でもある浅田真央がトリプルアクセルに挑戦し続けていた姿も、島田の挑戦し続ける姿勢につながっているという。

 その大技を組み込んだフリーでは、トリプルアクセルをみごと成功。4回転トーループは回転不足で転倒してしまったが、「思いきり攻めていこう」と挑んでいった。転倒のあとのジャンプはすべて完璧に成功させ、練習を重ねてきた回転の速いスピンでは会場を大いに沸かせた。

 試合前にコーチから「プレッシャーに勝つ」「絶対できる」という言葉をかけてもらったという島田。プレッシャーをはねのけるためにしていることは「試合で緊張しても、これだけやってきたから絶対できると思えるくらい練習することです」と話すように、高い目標に向けて努力を惜しまないところも彼女の強さだ。

「去年よりどこか成長したなと思ってもらえるようにしたい」とインタビューに答える姿も、昨シーズンよりしっかりと大きな声で頼もしくなったように感じる。これからも強い志を持って努力し続ける彼女の活躍が楽しみだ。

【「実感がわかない」郄木謠が2位表彰台】

 島田とともに表彰台を飾ったのは日本の郄木謠(15歳)。表彰式後の会見では、2位という成績に「まだ実感がわかなくてびっくりしています」と笑顔を浮かべた。

 SPではスピードを出しすぎたことでコンビネーションジャンプの1本目が詰まってしまい、3回転+3回転のセカンドジャンプが2回転に。だが、ジュニアGP初出場の前大会(タイ)より楽しんで滑ることができたようだ。

 フリーでは中盤の3回転ルッツで手をつく場面もあったが、それ以外はしっかりとまとめてホッとしたような表情に。?木は「会場に来てフリーの練習をした時にジャンプが合わなかったりすることが多かったので不安があったんですけど、やるしかないと思って。うまくまとめられたのでホッとしました」と話した。

 SPで3位につけていた櫛田育良は、フリーの前半で細かいミスがありフリーは5位、総合4位。「観客の皆さんに楽しい演技を見てもらえるよう、後半の曲調が変わるところで気持ちを切り替えようと思いました」と、後半のジャンプをしっかりと決め、笑顔で試合を終えることができた。

 自身のジュニアGP2戦目(アルメニア大会)に向けて櫛田は「フリーでは最初のジャンプをミスしたあとに焦ってしまったりしたので、気持ちの面での立て直しを練習していきたいです」と課題を掲げた。次戦では『星の王子様』の薔薇をモチーフにした美しくユニークなプログラムを、のびのびと滑っているところが見たい。

【アイスダンスにも楽しみな新星】

 アイスダンスには岸本彩良(16歳)・田村篤彦(19歳)組が出場。初めてのジュニアGP大会を日本で迎えたことについて「みんな応援してくれたので楽しく演技できました」と岸本。

 リズムダンスでミスはあったものの「印象に残っているのは最後のリフトです。一番うまく決まったと思います」と田村。

「振り付けがいろいろ入っているミッドラインステップが楽しかったです。アイスダンスでトラッキングといってお互いをフォローする(動きを合わせる)のもうまくいったなと思っています」と岸本は振り返った。

 フリーダンスではスピード感あふれるプログラムで会場を大いに盛り上げたふたり。お互いについて「踊るのが上手なんですよね。毎日見て学んでいます。身体も柔らかいですし。私はガチガチなので、追いつけるように毎日ストレッチしています」と田村が岸本を紹介する。

 岸本は田村について「試合が始まる前に『緊張してる?』と聞いたら、『大丈夫、大丈夫!』と自信があるように見えたので緊張がほぐれました」とパートナーの頼もしさを明かす。

 カナダ・モントリオールの名門クラブ「アイスアカデミー・オブ・モントリオール」を練習拠点に置く岸本・田村組。明るく、身体表現に優れたカップルの今後が非常に楽しみだ。