厳選!2歳馬情報局(2023年版)
第15回:シュヴェルトリリエ

 現役時代に国内外でGI4勝を挙げ、2019年のJRA年度代表馬に輝いた名牝の子がまもなくデビューを迎える。

 栗東トレセンの矢作芳人厩舎に所属するシュヴェルトリリエ(牡2歳/父モーリス)である。


シュヴェルトリリエの母は2019年の年度代表馬となったリスグラシュー

 冒頭で名牝と触れた同馬の母は、リスグラシュー。2歳時から重賞戦線で活躍し、GIIIアルテミスS(東京・芝1600m)を制すと、GI阪神ジュベナイルフィリーズ(阪神・芝1600m)でも2着と奮闘した。

 3歳になってからも、牝馬三冠レースで常に上位争いを演じた。GI桜花賞(阪神・芝1600m)で2着、GIオークス(東京・芝2400m)で5着、GI秋華賞(京都・芝2000m)で2着と好走し、世代上位の力を見せつけた。

 ただ、GIタイトルにはあと一歩届かなかった。4歳になっても、GIII東京新聞杯(東京・芝1600m)で牡馬相手に勝利を飾るも、GIヴィクトリアマイル(東京・芝1600m)では再び2着と涙を飲んだ。

 そんな状況を打破し、念願のGI奪取をついに果たしたのは4歳秋。GIエリザベス女王杯(京都・芝2200m)で、「マジックマン」の異名を持つジョアン・モレイラ騎手に導かれて戴冠を遂げた。

 そこから完全にひと皮むけたリスグラシューは、5歳になって快進撃を見せる。GII金鯱賞(中京・芝2000m)で2着、海外GIのクイーンエリザベス2世カップ(香港・芝2000m)では3着に終わるも、GI宝塚記念(阪神・芝2200m)で3馬身差の完勝劇を披露。牡馬一線級を一蹴して、GI2勝目を挙げた。

 そしてその後、海外GIのコックスプレート(オーストラリア・芝2040m)を制覇。さらに引退レースとなるGI有馬記念(中山・芝2500m)では、またも後続に5馬身差をつける圧勝劇を演じた。アーモンドアイをはじめ、サートゥルナーリア、フィエールマンらを相手にしないレースぶりには、多くのファンが度肝を抜かれた。

 まさしく怒涛のGI3連勝で花道を飾ったリスグラシュー。引退後、繁殖牝馬となった彼女が最初に送り出す子が、シュヴェルトリリエである。

 母リスグラシューも管理していた矢作厩舎のスタッフは、同馬についてどう見ているのか。関西競馬専門紙のトラックマンがその様子を伝える。

「厩舎スタッフは、シュヴェルトリリエについて『手先の軽い走りで、いいフットワークを見せている』とコメント。『速いタイムの追い切りも難なくこなすし、他馬と併せるとしっかりと反応。根性もありそう』と上々の手応えを得ているようでした。

 入厩直後はこの馬の評価を聞いても、言葉を選びつつ......という雰囲気でしたが、調整を重ねるごとに動きがよくなり、明らかに陣営のトーンも上がってきましたね」

 同馬の動き自体はよさそうだが、母と比べてどうなのか? 陣営の評価について、トラックマンが続ける。

「現時点では、『(シュヴェルトリリエは)母よりも、父モーリスに似ているのでは』とのこと。また、『母は晩年こそ肉づきがよくなってパワフルな体型になったが、若い頃は細くてスラッとしていた。一方、こちらはすでに胴が詰まってがっちりしている』と話していました。気性的にも、父の要素が強く出ているようです」

 同馬のデビュー戦は、9月24日の2歳新馬(阪神・芝2000m)の予定。鞍上は坂井瑠星騎手が務める。

 2歳時からコンスタントに活躍し、最後に大輪を咲かせた名馬リスグラシュー。その初子となるシュヴェルトリリエはどんな走りを見せるのか。間近に迫った初陣に注目である。