Anonymouz「好きな歌を自由に歌っていく」“素顔”で向き合う新たな想い
Anonymouz
Anonymouzが、新曲「レッスン」(7月18日)をリリース。2019年3月より、匿名性を掲げ活動してきたAnonymouzは、2023年7月に今までベールに包まれていた素顔を公開し、新たなフェーズに突入した。渋谷WWWで7月17日行ったワンマンライブ『Anonymouz Live 2023「Awake」〜11:11〜』初顔出しライブを行い、そのライブ直後に「レッスン」を配信リリース。同曲はAnonymouzが敬愛するwacciの橋口洋平が楽曲を提供。2人の化学反応が生み出す耳に残る楽曲に仕上がっている。インタビューでは素顔で活動していくことになった経緯から、新曲「レッスン」と先述のライブで披露された新曲「JAM」の制作背景、いま彼女が考えていることを語ってもらった。【取材=村上順一】
さらけだして伝えられるメッセージがあるんじゃないか
――顔出しを決めた経緯は?
元々は仮面で隠していることで一番自由になれた自分が、アーティスト活動をしていくうちに、どんどん昔の自分になっていって。もっとさらけだして伝えられるメッセージがあるんじゃないかと徐々に思うようになり、ライブでも伝わっているか不安になる部分もあったりしました。それで今の自分に合わせると「今かな」と思いました。
――素顔を出してからの心境はいかがでしょうか。
ライブが一番違いを感じます。今まで以上に照明が目に入ったり、みんなの表情の細部が見えたり、雰囲気が汲み取りやすくなりました。誰が拍手や挙手しているのかすごくわかりやすくなったんです。私が開放的になったからファンのみんなも開放的になってくれたのかなと。ライブの掛け合いがもっとできるようになったことがすごく嬉しいです。
――今回、ロゴも変わりましたがアイディアを出されたのでしょうか。
顔出しが決まってからロゴを依頼しました。Anonymouzという名前自体が”匿名=anonymous”からきていて、音楽を通していろいろな人物になれるという意味があります。私は洋楽のカバーから始めたので、言葉でたくさんの可能性を見せていきたく、「A」から「Z」で終わりにして”Anonymouz”にしたり、いろいろな想いが詰まっています。その時の心情や顔出しの理由も含めてアートディレクターのRakさんにお願いして、作っていただきました。私の心情を反映して作って頂いたのですごく気に入っています。
――新曲「レッスン」をリリースされましたが、「JAM」というライブでしか披露されていない新曲もありますね。
そうなんです。「JAM」はライブを想像して作った曲で、アカペラから作っていきました。歌を通してお客さんと繋がれるライブという場が大好きなので、そこで一緒に楽しめるようになったらいいなと思って作りました。「JAM」という言葉も、ライブが始まったらすごく楽しいけど、終わってしまう寂しさも含まれていて、甘酸っぱいということでサビの最後に<ストロベリージャム>と歌っています。曲調はジャージークラブというテイストで乗りやすくなっていて、ライブのために生まれた曲という感じです。
――鼻歌からできた曲だったんですね。
はい。いつも鼻歌や適当な英語でまずメロディを組んでいきます。楽器はほとんど使わないんですけど、詰まった時はギターで今まで試したことのないコードなどを弾いて、ときめいたところからできることもあって。
――好きなコードはありますか?
1つの音が半音ずつ移動するコード進行がクリスマスっぽくて好きです!
私はクリスマスが1年で一番好きなのでその響きを聴くと気分が良くなるんです。コードを鳴らして「好き」となったら曲を書くことが多いので。
――感覚重視な部分もあるんですね。さて、「レッスン」はwacciの橋口洋平さん作詞作曲ですね。橋口さんらしい印象も感じますが、この曲の第一印象は?
衝撃でした。最初に橋口さんにお会いした時、橋口さんの素晴らしさがいっぱい詰まったような曲になってほしいと思って、物語や主人公と相手の女の子の性格、“あるある”など細かく私からリクエストさせて頂きました。だから「窮屈にさせてしまってないかな…」とも思いましたが、とても深く解釈して作っていただきました。
歌詞の最初の4行で2人の関係が優しく説明されているので、すごくわかりやすく、入り込みやすいじゃないですか?
ここまで深く情景を言葉にできる橋口さんを改めて凄いと思いました。メロディは切ないけど確かに前向きに感じるもので、橋口さんの心が入った一曲を歌わせて頂いている、そんな感覚があります。
――出だしで全体像が見える、そこも橋口さんの凄さの一つなんですね。
本当にすごいと思います。自信が持てない男の子が、自信があって自分の世界が成り立っている女の子と別れた後の失恋ソングで、いかに男の子の方が女の子と自分を比べ過ぎてしまっていたかというのが歌詞の最初の4行で全てわかってしまうんです。その時にどのようなメンタルで女の子と向き合っていたかが汲み取れることがすごいなと思いました。
――タイトル「レッスン」という言葉からどのような思いを受け取りましたか。
すごくキャッチーでかわいいタイトルだと思ってすぐ好きになりました。人との付き合いはレッスンが織り交ぜられていて、そこを流しちゃうと自分も成長できないと思うんです。たぶんこの男の子は、この恋としっかり向き合って学んでいったんだなと思うとすごく愛おしいタイトルで大好きです。
橋口さんに何故このタイトルにしたのかと伺ったら、全て歌詞を書き終えた時に「これは『レッスン』だな」と直感的に思ったそうなんです。
――歌詞にある<憧れの君の隣で 見合う人になりたくって>というところが健気ですよね。
私がけっこうそういうタイプなんです。私の声が少年っぽいと言われることもあり、「僕」という一人称で橋口さんの曲を歌いたいとお伝えさせていただいたのですが、それ以外は、自分の感情や自分がしてきた恋愛や思ったことをまず物語にしたので、主人公が私と重なるんです。ですので、ライブで歌っていても自分の言葉と錯覚します。
それくらい相手の子が素敵過ぎたんだと思います。まだ恋愛経験が少ない男の子が背伸びをしている感じを出したかったので、“レッスン”を終えてこの次の恋愛はもう少し自信がもてるんじゃないでしょうか。
――今回、顔出ししたことと「レッスン」はどこかリンクしている部分も?
顔出しをしようというタイミングとほぼ同時期にこの曲の最初のデモが上がったんです。これだけ等身大、自然体の歌詞を素顔で届けられることが運命的に感じました。切ないけど自然体な曲をみんなの目を見て、この曲を歌えることは私にとってとても大きなことでした。
――今回のライブを経てファンの方々からどのような声が上がっていますか?
コロナ禍で活動を始めたので、そもそもライブで声出しすることが今までなかったんです。でも初めて顔を出して立ったステージで、歌い始める前からみんなが大きな声援を送ってくれましたし、ライブ中も色んな声をかけてくれました。『Anoラジ』というインスタライブで実施しているラジオでも、ポジティブなコメントばかりであたたかく応援してくれました。改めてすごく素敵なファンのみなさんに出会えたと思いました。
――その『Anoラジ』で橋口さんと一緒に「レッスン」を披露されたんですよね?
はい。夢みたいな時間でした。その前に一度、橋口さんのラジオに出演させて頂いて、初めてくだけた感じでお話しさせて頂いてからの『Anoラジ SP』だったのですごく楽しみにしていました。
橋口さんのアコースティックギター演奏が、最初に頂いたデモにかなり近く、生まれた時の状態のような、服を着る前の「レッスン」をファンの皆さまに届けられたことがすごく嬉しかったです。「私がこれから大事に歌わせて頂くんだ」という、初めてデモを聴いた日の想いや衝撃、この曲が私のものになるという嬉しさなどが全てフラッシュバックしました。
――この曲で、<バレバレだったサプライズ サイズの違うプレゼント>という部分がありますが、そういうのを貰ったことはある?
私は長野県出身で中学〜高校1年生くらいまでいたんですけど、その頃の友達と今でも仲良くしていて、その友達は、私が歌が好きなことをずっと知っているので、ライブの大切さをわかってくれていて。ライブが終わって会う時には必ずお店で花火のついたケーキを出してくれて、それを毎回忘れていていつもびっくりするんです!
――忘れてるからサプライズになってしまって(笑)。
友達はそれをいつもうまく隠してくれるんです(笑)。「もうわかってるんでしょ?」と思われてるんですけど。
――長野にはたまに帰る?
はい。諏訪湖の周りを歩くのは好きですし、お寺や、春宮や秋宮の神社に行くのが好きです。長野に行くと懐かしくて気持ちがリフレッシュできるんです。
メンタルコントロールが上手くなりたい
――さて、音楽をしているなかで、今どこにやりがいを感じていますか。
ライブができた瞬間や新曲が届けられた瞬間、自分が作ったメロディーにアレンジがついた時に、やりがいを感じられます。モチベーションをキープできるし、どんどん音楽が好きになっていきます。ずっと歌が好きで、大変なことが大きければ大きいほど、届いた時の喜びも大きいです。
――プロ意識が芽生えた、切り替わったきっかけは?
初めてのライブの時から、たくさんの方がチケットを買って来てくださったということで、責任感や意識の違いが大きく変わりました。みんなから沢山のものをいつも返してもらっているので「ちゃんと私からも渡せただろうか?」と考えてしまいます。
――いろいろ考えながらの活動ですが、自分のここを改善したいとかありますか。
立ち直りが遅いところがあります。上手くできないことがあったらけっこう自分を責めてしまうんです。悩みすぎちゃうことはあると思うので…それでも立ち直った後に「悩んでよかったのかな」って前向きに思えるからいいんですけど。LowがLow過ぎるのがちょっとつらいですね(笑)。
――立ち直りかたは?
フルーツをたくさん食べたりして自分の機嫌をとったり、人とたくさん会って話を聞いているとどんどんエネルギーがチャージされていきます。実はLowになった時の解消方法をメモしてるんですけど、一回やると免疫がついてしまい次は効かなかったり(笑)。メンタルコントロールが上手くなりたいなって思っています。
――とはいえ、アーティストにとって繊細さは重要かと思います。
つらい最中は書けないんですけど、立ち直った瞬間にそのつらかったことをたくさん書けます。
――悩むことも悪いことではないですよね。人の意見を聞けるタイミングでもありますし。
ちょっと意見が入ってくるだけで本当の自分の気持ちに気付けたり。だから悩むのも良い気がします。話を聞いてもらうだけでも気持ちが楽になることもありますし。
好きな歌を自由に歌っていきたい
――さて、今後の展望は?
今までは伝えたいことというよりは歌いたいこと、聴いてもらいたい歌、わかってもらいたい歌が自分の中で大きかったと思います。今後は好きな歌を自由に歌っていきたいです。ここからは一人の人間としてみんなに向き合っていく視点に変えたいと思っています。その意識の違いだけでも自分の気持ちが変わってきたりするので、作詞作曲やライブも含めて、どんどん自然体の私を全て込めて作っていきたいと思っています。
――「人として」という部分が大きくなったんですね。その成長のためにやっていることなどがあるのでしょうか。
音楽活動自体がすごく自分を成長させてくれています。どうしても守りたい大事なものがあるというのは、人を成長させるんだろうなと思います。
――生きる上での要素として大切ですよね。
生きることへの執着も一つでもあると、人をすごく強くさせると思います。
――フィジカル面でも成長のために何かしていますか。
筋トレやストレッチは、声を出すことには絶対必要なんです。通っているボイストレーニングの先生はスクワットを推奨してくれていて。背中の筋肉など、体の後ろのほうに重心が行くといい声が出るようになるというメソッドで、スクワットには全てが詰まっています。
――何回くらいやるんですか。
1セット15回を3〜4セットくらいです。それを音楽に合わせてやっています。
――11月19日にSHIBUYA PLEASURE PLEASUREで、ワンマンライブ『Kagerou〜Anonymouz Live 2023〜』が決まっています。どのような姿を皆さんに届けたいと思っていますか。
前回、初めての顔出しでみなさんと会えたのが一番の喜びでしたが、今回はさらに新しいAnonymouzとしてどう見せていくか、どうライブを盛り上げていくかを提示していけるようなライブにしたいです。最大限に楽しむ準備をして、会場に遊びに来て頂けたら嬉しいです。(おわり)