F1フォトグラファー対談2023年前半戦 写真特集(全3編)

F1の現場に30年以上にわたって足を運び、撮影を続けるベテランフォトグラファーの熱田護氏と桜井淳雄氏。ふたりがカメラに収めた2023年シーズン前半戦のベストショット20枚をコメントとともにお届けする。


撮影/桜井淳雄

第12戦ハンガリーGP マックス・フェルスタッペンはハンガロリンクで今季9勝目を挙げ、レッドブルは昨年の最終戦からの連勝を12まで伸ばし、チームとしての連勝記録を更新しました。表彰台で笑うことがほとんどないフェルスタッペンですが、ここ数戦はタイトル争いで余裕が出てきたのか、少し笑顔が見えるようになってきました。(撮影/桜井淳雄)


撮影/熱田護

第4戦アゼルバイジャンGP 今シーズン、絶好調のフェルスタッペン。強さ、速さは圧倒的で、この人が運転すれば後半戦も全勝してしまうのではないかと感じます。チームメイトのセルジオ・ペレスは市街地コースが得意と言われており、アゼルバイジャンでも優勝しましたが、僕が見る限り、普通に走れば市街地でもフェルスタッペンのほうが速いと思います。(撮影/熱田護)


撮影/桜井淳雄

第2戦サウジアラビアGP 今シーズンは開幕戦のバーレーンGP、続くサウジアラビアGPと2戦連続でナイトレースとなりました。ピットに光がスッと入るところを見つけて、ピットレーンを走行するマシンのコクピットの周りだけが明るく強調されるように狙って撮影しました。マクラーレンのランド・ノリスです。(撮影/桜井淳雄)


撮影/熱田護

第2戦サウジアラビアGP ナイトレースで開催されるサウジアラビアGPは、紅海を臨む港湾都市ジェッタの市街地コースが舞台。レース期間中、紅海はライトアップされ、美しい写真が撮影できます。このカットはコース脇に立つビルの45階から、スローシャッターで撮影しました。(撮影/熱田護)


撮影/桜井淳雄

第4戦アゼルバイジャンGP 首都バクーに設置されるバクー市街地コースが舞台。平均速度が高くクラッシュが続出するのですが、とくにターン15は下りでブレーキングが難しく、「ルーキーはここでミスをする!」と予想していました。するとウイリアムズの新人、ローガン・サージェントがスプリントレースの予選で案の定、クラッシュ。その瞬間をとらえました。(撮影/桜井淳雄)


撮影/熱田護

第7戦モナコGP 今年のレッドブルの躍進を支えるのはホンダが開発するパワーユニット(PU)です。ホンダは2021年限りでF1から撤退し、レッドブルパワートレインズに対して技術的な支援するというのが現在の公式な立場。本格復帰は2026年からですが、ホンダのスタッフは今も作業を続けています。勝ちにこだわり、一致団結して戦う彼らの姿を誇りに思います。(撮影/熱田護)


撮影/桜井淳雄

第12戦ハンガリーGP セッション前にフランツ・トスト監督のもとに駆け寄る角田裕毅選手。監督がドライバーの肩を抱きながら、こんなふうに目を合わせて話し込む姿はあまり見たことがありません。それだけ角田はトスト監督を信頼して、トスト監督も角田のことを評価しているのかなと思います。(撮影/桜井淳雄)


撮影/熱田護

第8戦スペインGP ファンの声援に応える角田選手。スペインでは9位でゴールしましたが、レース中の接触でペナルティを科され12位に降格。入賞を逃しました。今年のアルファタウリは競争力が低いですが、ポイントがとれなくてもベストの走りをするという仕事はできており、周囲の評価は上がっています。(撮影/熱田護)


撮影/桜井淳雄

第10戦オーストリアGP 今年もサーキットにはフェルスタッペンを応戦するためにオランダのナショナルカラーであるオレンジ色のウェアを着たファンが押しかけています。フェルスタッペンが優勝したあとのレッドブルリンクはオランダ国旗を手にした"オレンジ軍団"がコースを占領し、盛り上がっていました。(撮影/桜井淳雄)


撮影/熱田護

第7戦モナコGP ポール・トゥ・ウィンでモナコを制したフェルスタッペン。レース後にスタッフと記念撮影をしていると、2位に入ったフェルナンド・アロンソが飛び入り参加してVサインを決めています。以前のアロンソはそんなことをするキャラじゃなかったのですが、今年は気分も乗りに乗っています。(撮影/熱田護)


撮影/桜井淳雄

第3戦オーストラリアGP ヘリコプターから撮影した、メルボルンの中心地にあるアルバート・パーク・サーキット。路面電車やバスでアクセスができ、コースの隣は幹線道路が走っています。今年は市街地コースでのイベントが多いですが、F1主催者は今後、郊外のロードサーキットよりも街中からのアクセスがいい市街地でのレースを多く行なおうとしているように感じます。(撮影/桜井淳雄)


撮影/熱田護

第1戦バーレーンGP 開幕戦で3位入賞し、ガッツポーズするアロンソ。今年のアロンソは表情がキラキラして、すごくいい顔をしています。中盤戦に入り、パフォーマンスが相対的に落ちてきましたが、中団グループは接戦で少しの差で順位が大きく変わる状況です。後半戦にもコースによっては上位入賞のチャンスはあると思います。(撮影/熱田護)


撮影/桜井淳雄

第8戦スペインGP ピットを走行するマクラーレンを、カタロニア・サーキットのピットレーンに向かう通路の奥から撮影しました。マシンの向こうには観客席、両脇の黒い部分はチームのガレージです。上の蛍光灯がサングラスのように見える、おもしろいカットが撮れました。(撮影/桜井淳雄)


撮影/熱田護

第13戦ベルギーGP もともと速さには定評のあったノリスですが、開幕直後はマクラーレンのマシンに競争力がなく低迷していました。でも中盤戦から徐々に力を発揮し、本来のスピードを取り戻しました。デビューの頃は少年のような表情でしたが、最近は引き締まった顔をしており、すごくカッコよくなってきました。(撮影/熱田護)


撮影/桜井淳雄

第13戦ベルギーGP 山間にあるスパ・フランコルシャンで開催されるベルギーGPは毎年、雨がレースを左右します。今年も雨で難しいレースになりましたが、フェラーリのシャルル・ルクレールが3位表彰台を獲得。現代のF1マシンは空力性能が非常に重要ですが、雨でボディやタイヤ周辺の空気の流れがよくわかります。(撮影/桜井淳雄)


撮影/熱田護

第1戦バーレーンGP 相変わらずのイケメンで絵になるフェラーリのルクレールですが、今年のフェラーリはマシン開発も戦略もうまくいっていません。輝きを失っているよう見えるかもしれませんが、サーキットで見ている限り、ルクレールの速さは相変わらず。能力が落ちているようには思いません。(撮影/熱田護)


撮影/桜井淳雄

第3戦オーストラリアGP フェルスタッペンを先頭に全車が1コーナーに向けて飛び込んでいく。この直後、メルセデスのジョージ・ラッセルとルイス・ハミルトンが立て続けにフェルスタッペンを抜いて一時トップに立ちます。しかし今年のレッドブルのマシンはレースで強く、フェルスタッペンが完勝。力を見せつけました。(撮影/桜井淳雄)


撮影/熱田護

第2戦サウジアラビアGP 前半戦の予選で光る走りを見せていたのがハースのベテランのニコ・ヒュルケンベルグ。ハースの小松礼雄エンジニアは「テストで一発目に乗った時からフィードバックが的確で、クルマの評価能力も高い」と絶賛していました。以前は写真を撮ると嫌がることもあったのですが、今年は表情も明るく、カメラから顔をそむけることもないですね。(撮影/熱田護)


撮影/桜井淳雄

第11戦イギリスGP 母国ファンの大声援を受けながら聖地シルバーストンを走るメルセデスのハミルトン。優勝はレッドブルのフェルスタッペンでしたが、マクラーレンのランド・ノリスが一時トップを快走して2位、ハミルトンも3位とイギリス人のふたりが表彰台に上がり、満席のスタンドは大いに盛り上がっていました。(撮影/桜井淳雄)


撮影/熱田護

第13戦ベルギーGP F1屈指の高速コーナー、スパ・フランコルシャンのオー・ルージュを駆け上がるアルボン。今年のウイリアムズはダウンフォースが少ないクルマですが、高速サーキットで強さを発揮し、時折、驚くほどの速さを披露します。前半戦もっとも輝いたドライバーのひとりです。(撮影/熱田護)

対談前編<F1フォトグラファーが明かすフェルスタッペン、アロンソらの素顔「撮影できて幸せ」」>を読む

対談後編<F1フォトグラファー対談 角田裕毅の成長とF1映画を語る「ブラッド・ピットはいい人」>を読む


【プロフィール】
熱田 護 あつた・まもる 
1963年、三重県鈴鹿市生まれ。2輪の世界GPを転戦したのち、1991年よりフリーカメラマンとしてF1の撮影を開始。F1取材は約570戦、日本を代表するF1カメラマン。2019年にF1写真集『500GP』、2022年にホンダF1のタイトル獲得を記録した写真集『Champion』(ともにインプレス刊)を刊行。

桜井淳雄 さくらい・あつお 
1968年、三重県津市生まれ。1991年の日本GPよりF1の撮影を開始。これまでに400戦以上を取材し、F1やフェラーリの公式フォトグラファーも務める。YouTubeでは『ヒゲおじ』としてチャンネルを開設し、GPウィークは『ヒゲおじ F1日記』を配信中。鈴鹿サーキット公式HP内の特設ページ『写真で振り返る2023年シーズン』で作品を掲載。